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グローバルファンド第8次増資サミット G20の前日に南アフリカで開催

2025年11月22日
グローバルファンド第8次増資サミット G20の前日に南アフリカで開催

2025年11月21日、南アフリカ共和国ヨハネスブルグにおいて、「グローバルファンド第8次増資サミット」が開催されました。当地で開かれるG20サミットの前日に、増資議長国である南アフリカと英国の共同主催で開かれたものです。各国政府、財団、企業、市民社会、当事者グループ、国際機関の代表が一堂に会したこの会議で、第8次増資に対し、各国政府や民間ドナーから総額113億4100万ドル(約1兆7800億円)の拠出誓約が表明され、国際援助の在り方が大きく変動する中でも感染症との闘いへの支持と国際連帯を示す結果となりました。

日本政府を代表しスピーチする外務省の大場雄一国際保健外交担当大使(スクリーン上) ©The Global Fund/Quintin Mills

増資の目的
グローバルファンドは、3年に一度、感染症対策に必要な資金額を算定し国際社会に呼びかけて資金を調達する増資を行っています。今回は、2027年~2029年の3年間に必要とされる資金の調達で、持続可能な開発目標(SDGs)達成年である2030年に向け、約100カ国が感染症対策の結果を出すための財源となります。

現在、世界は開発援助資金の削減や気候変動などの複合的な危機を背景に、三大感染症終息に向けた歩みが逆行するリスクに直面しています。また、三疾患に限らず、新たな感染症のアウトブレイクを検知し、追跡、封じ込める「健康安全保障」の強化も喫緊の課題となっています。第8次増資では、革新的な技術を用いた治療・予防・診断製品の大規模な展開、コミュニティ・ヘルスワーカーなどの保健人材の育成、検査ラボの拡充、疾病サーベイランス、医療用品の調達や供給網の強化、低・中所得国における国内資金動員の促進などを推進し、感染率・死亡率のさらなる減少と、より公平で健康かつ安全な世界の実現を目指しています。

結果
本会合では、議長国から南アフリカのラマポーザ大統領、英国のスターマー首相をはじめ、各国の閣僚、政府代表、財団、企業等が登壇し、40を超える国・組織(注1)から合計113億4100万ドル(約1兆7800億円)の拠出誓約が表明されました。日本を含むいくつかの主要ドナーは、まだ正式な拠出誓約額を発表しておらず、最終的な金額の確定にはしばらく時間がかかります。

前回の7次増資期間の資金調達実績約159億ドル(2025年11月現在)に比較すると現状では下回っていますが、開発援助資金が極端に削減される世界的な傾向の中にあって、今回発表した上位ドナー(米国46億ドル、ドイツ11.5億ドル、英国11.1億ドル、カナダ7.2億ドル、ゲイツ財団9.1億ドル)は米ドルベースでは前回比で一定程度の削減または維持にとどまり、また、スペイン、ルクセンブルグ、インド、アイルランド等は前回より増額で誓約、民間財団や企業(日本企業を含む:注2) など民間セクターからの拠出誓約は13.3億ドルに達するなど、国際社会からグローバルファンドへの信頼と期待を示す結果となりました。

また、アジアのドナーとしては韓国が前回同様に1億ドルを誓約し、これにより議決権をもつ理事の立場を得ました。地元のアフリカ諸国からは、合計5159万ドル(約80億円)の「連帯プレッジ」が発表されました。アフリカ各国は、支援を受け入れる国であるとともにグローバルファンドに資金を拠出する国ともなることで連帯を示し、さらにより多くの自国の国内資金を保健分野や感染症対策にあて持続可能性を高めていく決意も表明しました。

世界全体で開発援助の資金が減少する傾向は不可避ですが、グローバルファンドには、革新的な技術の薬や検査・予防方法を用いてより少ない資金でより多くのインパクトを出すこと、各国が感染症対策を持続可能な形で進められるよう丁寧に支援しながら援助からの自立を促進することなどを通じて、引き続きSDGsの達成と新たな感染症危機を防ぐ健康安全保障への貢献が期待されています。

詳細はグローバルファンドの発表および各国・組織誓約一覧 を参照下さい。(追記:誓約一覧和文版

8次増資のアンバサダーとなった感染症当事者コミュニティの代表4名とともに、ラマポーザ大統領(中央)、ロスリン・モラウタグローバルファンド理事会議長、ピーター・サンズ グローバルファンド事務局長 ©The Global Fund/Quintin Mills

主な登壇者のコメント(抜粋・抄訳)

シリル・ラマポーザ南アフリカ共和国大統領 ©The Global Fund/Quintin Mills

シリル・ラマポーザ南アフリカ共和国大統領(8次増資共同議長)ーー多国間主義が緊張と圧力にさらされる中、保健分野における国際協力は厳しい試練に直面している。しかしこの増資サミットは、国際保健における画期的な出来事だ。国民の健康なくして国家の繁栄はない。医薬品・診断・治療へのアクセス格差、そしてファイナンス格差を解消し、あらゆる国が国民を守り健康の公平性を達成できるよう取り組むことが不可欠だ。我々のこの誓約は、グローバルファンドのパートナーシップと、その約束を果たす能力に対する信頼の証だ。エイズと結核に最も深刻な影響を受けた国の一つとして、過去数十年にわたり支援してくれた世界の保健コミュニティに感謝している。(中略)今日の増資サミットにおける113億4100万ドルというこの成果は、世界の健康安全保障のために結束した連合体の決意の結果だ。しかし、まだ終わってはいない。より多くの国々、地域組織、企業が立ち上がり、この機会に我々と共に歩むだろう。

 

キア・スターマー英国首相©The Global Fund/Quintin Mills

キア・スターマー英国首相(8次増資共同議長)ーーグローバルファンドが成し遂げたことは、人類の進歩の中で最も有益で感動的な物語の一つだ。(中略)英国のように、どの国も開発援助について苦渋の決断を迫られている。しかし、たとえそのような決断を下す場合でも、グローバルヘルスを優先し、提供された資金で最大の効果を上げるグローバルファンドのような組織を優先する選択はできるはずだ。それが英国が行ってきた選択であり、今後も続ける。なぜならそれが「正しい行為」であり、我々の国益にもかなうからだ。我々は、開発援助の新しいアプローチの先駆者だ。グローバルサウスとの関係はもはや家父長主義的であってはならない、援助者(donor)から投資家(investor)へと転換が必要だ。

セシリア・ロドヌ=セヌー©The Global Fund/Quintin Mills

セシリア・ロドヌ=セヌー(グローバルファンド理事会開発途上国NGO代表団理事)ーー20年以上にわたり、グローバルファンドは私たちの命綱となり、7000万人以上の人生を変え、世界の安定に貢献してきた。勇気と思いやりを持って共に立ち上がれば、三大感染症との戦いの流れを変えられることを世界に示した。我々は、今日のこの場での誓約が実行に移されるよう説明責任を求める。当事者コミュニティは感染症との闘いの傍観者ではない。担い手であり、革新を生み出すイノベーターであり、アドボケートでもある。どこに住んでいるかで、生きるか死ぬかが決まる世界は、断固として拒絶しよう。

ピーター・サンズグローバルファンド事務局長 ©Global Fund

 

ピーター・サンズ グローバルファンド事務局長ーー 世界は変わった、もう後戻りはしないだろう。古いモデルは終わり、新しいものが今日まさに生まれつつある。グローバルファンドというこの非凡なパートナーシップを誕生させた世界共通の精神と決意を再発見し、それを、今の現実に合わせて再構築する必要がある。(中略)開発援助の有効性に対する懐疑的な見方は承知している。しかしこのパートナーシップが達成した成果は、あらゆる疑念を吹き飛ばすはずだ。(中略)低・中所得国の自立への道を加速させ、国際支援に依存しない保健システムを構築することが不可欠だ。各国も支援する国々もそれを望んでいる。持続可能性への唯一の答えだ。だが自立とは、スイッチを押すような単純なものではなく、一定の時間がかかる「道のり」(pathway)である。急激な移行は進捗を阻害し、人々を取り残し、何百万もの命を奪うだろう。

 

日本からの支援の意義

大場雄一外務省国際保健外交担当大使・国際協力局審議官 ©The Global Fund/Thabang Radebe

日本からは、外務省国際協力局の大場雄一審議官(国際保健外交担当大使)がスピーチを行い、日本のグローバルファンドへの貢献は、すべての人々の命と尊厳を守り、誰一人取り残さないというビジョンを実現し、人間の安全保障の実現とUHCの達成に不可欠であると述べ、グローバルヘルスにおける最も信頼できるパートナーの一つとして、今後も日本はグローバルファンドを支援し続けると揺るぎない決意を表明しました。拠出額は追って発表されます。

大場審議官のスピーチ全文は外務省ウェブサイト参照

 

【追記:11月25日、日本外務省より第8次増資に対し最大810億円の拠出を行うことが正式に発表されました。米ドル換算5.1億ドルとなり、前回比52%減となります。

注:11月25日に、増資会合の誓約一覧記載の換算レートに基づき5.18億ドルと本ウェブサイトにて公表しましたが、12月3日付グローバルファンド事務局確認の正確な為替レートによる計算に基づき、5.15億ドルと訂正します。

【追記:11月27日 主要ドナー国の8次増資プレッジ比較表を掲載】(12月3日更新)

【追記:11月28日 日本国際交流センターのウェブサイトに開設記事「国際援助削減傾向下における感染症対策の国際基金グローバルファンドの増資について」を掲載しました】

 


グローバルファンド日本委員会は、国際社会の責任ある一員として日本に相応しい額のコミットメントがなされることを期待します。当委員会は、日本のグローバルファンドへの拠出は以下の点で国際益・国益上の意義があると考えています。

  • 感染症の克服は低・中所得国の経済発展と国際社会の安定の基礎
    感染症を克服することは、防げたはずの罹患や死亡を減らし、労働力の確保と寿命の延伸による、低・中所得国の経済成長の基礎です。さらに、誰もが必要とする保健医療サービスにアクセスできる公平な社会作りは、人々の不満・不平等感を解消し社会を安定化させテロや紛争の温床となることを未然に防ぐことにも貢献します。
  • 健康医療安全保障:日本を感染症から守る
    感染症に国境はありません。グローバルファンドへの拠出は、感染症を日本に入れないこと、新たなパンデミックを防ぐことにつながります。感染症専門の国際基金として最も成果をあげているグローバルファンドへの投資は日本の健康安全保障に直結し、国益に貢献します。
  • 日本経済を強くする
    グローバルファンドは年約3000億円の調達市場を持ち、多額の日本製品が調達されています(医薬品・医療機器、予防用品等、累積12億ドル、国際機関では最大規模の日本製品調達)。グローバルファンドの支援の7割はアフリカ向けであり、これらの日本企業にとって、今後成長するアフリカの医療製品市場への入口となります。また、日本企業が、日本の平時には感染症がまん延している低・中所得国の公共調達市場に参入し生産規模を拡大・維持しておけば、いざ、日本が感染症危機に見舞われた時に、国内供給量の確保が容易になることも、上記の健康安全保障の重要な要素です。
  • 日本外交を強くする
    グローバルファンドの特徴は、グローバルサウス諸国自らも関わる運営体制です。主要ドナーであり続けることは、グローバルサウスとの信頼を醸成し、日本外交を強化することにつながります。また、開発援助資金が減少し国際保健の制度改革議論が急速に進む中、グローバルファンドはその改革議論の矢面に立つ重要な存在であり、主要ドナーとして理事議席保持は 日本の国際保健外交のリーダーシップに不可欠です。

 


(注1)増資会合終了時点で、国・組織名と金額が公表されているのは41カ国、その他に、個別名はまだ公表せず合計額のみに含まれている国・組織も多数あり。

(注2)   企業の拠出には、武田薬品工業株式会社による3.5億円の拠出誓約が含まれます。武田とグローバルファンドのパートナーシップは2010年以来であり、企業ドナーとしては最長のものです。また、GSKとともに790万ドルの拠出誓約をしたヴィーブヘルスケア社は、塩野義製薬株式会社が資本参加するHIV専門の製薬会社です。

 


世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)とは
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)は、低・中所得国の三大感染症対策を支える官民連携基金です。G7を初めとする各国の政府や民間財団、企業など、国際社会から大規模な資金を調達し、低・中所得国が自ら行う三疾病の予防、治療、感染者支援、保健システム強化に資金を提供しています。グローバルファンドのパートナーシップによる支援により、2002年の設立から2024年末までに7000万の命が救われました。2000年のG8九州・沖縄サミットで、議長国日本が感染症対策を主要課題として取り上げ、追加的資金調達と国際的なパートナーシップの必要性についてG8諸国が確認したことが、グローバルファンド設立の発端となりました。このことから、日本はグローバルファンドの「生みの親」のひとつと言われています。


グローバルファンドの増資
グローバルファンドは、3年に一度、感染症対策に必要な資金額を算定し国際社会に呼びかけて資金を調達しており、これを増資と呼んでいます。伝統的には、G7ドナー国政府の持ち回りで増資会合が開かれてきましたが、近年はグローバルサウスも増資会合・準備会合を主催するなど世界全体で増資の機運が高まっています。

第8次増資会合 南アフリカ・英国共催(2025年11月)
第7次増資会合 米国主催(2022年9月)、 準備会合 アフリカ5国共催(2022年2月)
第6次増資会合 フランス主催(2019年10月)、準備会合 インド主催(2019年2月)
第5次増資会合 カナダ主催(2016年9月)、 準備会合 日本主催(2015年12月)
第4次増資会合 米国主催(2013年12月)
第3次増資会合 米国主催(2010年10月)
第2次増資会合 ドイツ主催(2007年)


最近のグローバルファンド関連報道

「健康」へ多国間支援継続を |日本経済新聞|2025年10月22日

いのちを守る日本の外交力|日本経済新聞|2025年11月11日

重層的な多国間外交を 国際課題、「非国家」との連携がカギに|日本経済新聞|2025年11月19日

 

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