世界基金は3年に一度、三大感染症対策のために世界から資金を調達する「増資」(追加の拠出・寄付の調達)を行っています。
2013年は、2014年~2016年の3年間に必要とされる資金を調達する第4次増資を決める年にあたります。世界基金の増資会合は、毎回、ドナー国政府主催で開催されています。今回は9月の国連総会の際に米国のケリー国務長官から、米国政府主催で12月3日にワシントン DC にて開催されることが発表されました。この会合で、各国政府や民間組織が向こう3年間に世界基金に拠出する金額を正式に約束します。
資金調達目標
世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、世界基金による推計では、今後3年間に三大感染症対策の国際目標を達成するために必要な資金は世界全体で870億ドル (約8.7兆円)<とされています。各国自身の国内財源(およそ370億ドル)、二国間援助などの国際支援(約 240 億ドル)をあててもまだ不足しており、世界基金には150億ドルの調達が期待されています。
150億ドルの効果
エイズ・結核・マラリア対策は、国際支援の拡大、途上国の国内対策の強化、医学の進歩により確実に進捗を見せています。しかし、対策の手を緩めて良い状態にはまだ達していません。支援を拡大し新規感染をさらに抑えることができなければ、感染症の勢いはぶり返しこれまでの努力が水の泡に帰すことになります。感染症との闘いは、今が正念場と言われています。
- 150億ドルあれば、今後3年間の支援により、推計で580万の人命を救うことができます。
- 10億ドルごとに、以下のことが可能になります。
- 49万人の成人HIV陽性者の抗レトロウィルス治療
- 2100万張の殺虫剤処理をした蚊帳を配布
- 70万人の結核治療
詳しくは “The Impact of $15 Billion” 参照。
(世界基金ウェブサイトの以下第4次増資ページよりダウンロード)
http://www.theglobalfund.org/en/replenishment/fourth/
各国の第 4 次増資にむけての状況
日本をはじめ各国とも厳しい財政状況ですが、12 月の増資会合に向けて各国から拠出額の表明が続いています。(2013年10月現在)
国 | 2014-2016年の拠出額 | 備考 | 前回の第3次増資の誓約額 | これまで(2002-2013年9月)の累計拠出実績 |
---|---|---|---|---|
米国 | 2014年度予算に16.5億ドル計上、2014-16年で50億ドルの予定 | 全体の3/1以内(下記参照) | 40億ドル | 85.3億ドル |
フランス | 10.8億ユーロ(約14億ドル)の拠出を表明(7月15日) | 414.8億ドル | 36.2億ドル | |
英国 | 10億ポンド(約16億ドル)の誓約を表明(9月23日) | 全体の10%以内(下記参照) | 20.8億ドル | |
ドイツ | 6億ユーロ(約7.8億ドル)の拠出を表明(1月24日)+アルファ? | 2012~2016年までの5年間で10億ユーロの拠出を誓約 | 8.2億ドル | 19.8億ドル |
日本 | 未発表 | 8億ドル | 17.4億ドル | |
カナダ | 未発表 | 5.2億ドル | 13.7億ドル | |
欧州委員会 | 未発表 | 4.5億ドル | 15.5億ドル | |
イタリア | 未発表 | 誓約なし | 10.0億ドル | |
北欧5ヵ国 | 5カ国で7.5億ドルの拠出を表明(9月5日) | スウェーデン ノルウェー フィンランド デンマーク アイスランド |
– | |
ルクセンブルグ | 750万ユーロ(1010万ドル)(10 月 2 日) | 国民1人あたりの金額としては最も高い額 | 1030万ドル |
2013年10月4日現在
米国は、米国の拠出が世界基金の調達資金全体の3/1を超えてはならないという議会の制約があり、また英国の拠出誓約も同様に全体の10%を上限とするという条件が付されています。従って、他の国が拠出額を増やせば、自動的に米国・英国の拠出額も増えるという仕組みになっています。先進国だけではなく途上国も含めて世界70の国・地域・民間組織が資金を出す予定です。
主要国が拠出額を固める中、日本は、安倍総理大臣が9月末の国連総会の演説で世界基金への貢献に言及されました。日本に世界の期待が高まっています。
関連情報
安倍総理大臣による国連総会一般討論演説 (2013年9月26日)
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/26generaldebate.html
“皆様も知るとおり、HIV/AIDS、マラリア、結核との戦いを世界的規模で図る「世界基金」を始めるに際し、私の国日本は、リード役を務めました。基金の増資を図る、来るべき第4次会合でも、ふさわしい貢献をするつもりです。”
国連総会サイドイベント「ポスト2015年:保健と開発」における安倍総理大臣ステートメント(2013年9月25日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page3_000423.html
“人間の安全保障の理念を具現化する上で不可欠の分野が保健です。保健に関する MDGs達成に遅れがあり,例えば,HIV/AIDS,マラリア,結核対策に取り組む「世界基金」への継続的支援が重要です。日本としても,来るべき第四次増資会合において,相応しい貢献をするつもりです。”
ピーター・ピオット ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院学長 寄稿
「病撲滅へ日本の資金を」(読売新聞「論点」2013年10月9日)
渋澤 健(日本国際交流センター理事長、コモンズ投信会長)寄稿
「世界が期待 日本の新たな「第3の矢」」(日経電子版「マネー・ブログカリスマの直言」2013年10月6日)
http://www.nikkei.com/money/column/moneyblog.aspx?g=DGXNMSFK0101T_01102013000000&df=1
U2 ボノ氏による安倍総理大臣表敬(2013年9月25日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page3_000443.html
「ビル・ゲイツ夫妻 世界の貧困・難病対策 訴える」
(NHK BS1 ワールドWaveトゥナイト 2013年9月20日)
「ビル・ゲイツ氏 世界の課題と日本を語る」
(NHK ウェブ特集 2013年9月16日)
前回の世界基金第3次増資について(2010年10月)
http://www.jcie.or.jp/fgfj/06/2010/20101005.html
2013/10/16 更新
本解説のPDF版はこちらから
http://www.jcie.org/japan/j/pdf/fgfj/06/2013/GF4thReplenishment.pdf