2022年8月27日、チュニジアで開催中のTICAD8(第8回アフリカ開発会議)の開会式において、岸田文雄内閣総理大臣より、日本はグローバルファンドの第7次増資に対し、次の3年間で最大10.8億ドルを拠出することが発表されました。前回の第6次増資における日本の8.4億ドルの拠出誓約から約30%の大幅増加です。これは、新型コロナウイルス感染症の影響からの復旧と保健システムをさらに強化する必要性から、第7次増資の調達目標額(180億ドル)が第6次増資の目標額より約30%増えたことに伴うもので、全体額の増加率に合わせて日本の拠出も増えたことになります。
グローバルファンドは、その設立背景にアフリカと深い関わりがあります。1980年~90年代に先進国で広がったエイズは、その後アフリカをはじめとする低・中所得国に拡大し、2000年代初頭には、治療にアクセスすることが難しい国々―特にアフリカで―で圧倒的な猛威を振るっていました。グローバルファンド設立構想は、ガーナ出身のコフィ・アナン国連事務総長(当時)が温めていた夢であり、また、ナイジェリアのオバサンジョ大統領はじめアフリカの指導者や、ツツ司教などの宗教家、研究者、NGO、感染症の当事者たちが立ち上がり世界的な運動となり、治療や予防へのアクセスの格差を埋めるために2002年に生まれたのがグローバルファンドです。現在も、支援の7割以上がアフリカ向けの支援であり、アフリカ各国が自ら行う感染症対策と保健システム強化に重要な役割を果たしています。
岸田総理は開会式のスピーチで「新型コロナの拡大は、感染症対策の重要性を改めて浮き彫りにしました。日本は、人間の安全保障の理念に立脚し、アフリカを中心に、エイズ、結核、マラリアといった三大感染症対策支援及び保健システム強化に貢献するべく、本日、グローバルファンドの第7次増資に関し、次の3年間で最大10.8億米ドルを新たに拠出することを表明します」と述べました。
第7次増資の誓約会合は9月の国連総会の時期にあわせニューヨークで開催されます。これまで、主要ドナー国の中で、全体の増加率にあわせ約30%増加で誓約額を発表したのは、増資開催国の米国に次ぎ日本が初めてであり、9月の増資会合に向け国際社会の気運を高め、増資全体を成功に導く上で、重要な一石を投じたといえます。
この日本の貢献は、次の3年間で、低・中所得国における三大感染症を終息に向けた軌道に戻し、また、全般的な保健医療システムを強化し将来の感染症の予防と備えを強化するためのものです。また、日本のテクノロジーや専門的知識を感染症対策の現場で活かし向上させる機会ともなります。さらに、低・中所得国で新たな感染症の拡大を抑えることは、ひいては国境を超える感染症の脅威から日本を守ることにもつながります。
グローバルファンド日本委員会は、この度の日本政府の決定を歓迎し、関係者のご理解とご尽力に敬意を表します。
TICAD8 開会式における岸田総理大臣スピーチ 和文 | 英文 (首相官邸ウェブサイト)
グローバルファンド ニュースリリース
- Global Fund Applauds Japan’s Major Commitment to Help End AIDS, Tuberculosis and Malaria and Strengthen Systems for Health
- グローバルファンド: エイズ、結核、マラリアの終息と保健システム強化に向けた日本の多大な支援を称賛
TICAD 8関連
- 外務省 第8回アフリカ開発会議(TICAD8)の開催(1日目:開会式及び全体会合)
- 開会式等の映像 (TICADウェブサイト)
- TICAD公式写真
グローバルファンド増資について
グローバルファンドは、3年に一度、感染症対策に必要な資金額を算定し国際社会に呼びかけて資金を調達しており、これを増資と呼んでいます。ドナー国政府の持ち回りで増資会合が開かれることがグローバルファンドの特徴です。各国が資金拠出を表明する「増資会合」とその数か月~1年前に開かれる「増資準備会合」の2会合から成ります。
第7次増資は、2024~26年の3年間の三大感染症対策と保健システム強化のための資金を、2023~25年にかけて調達するもので、2022年9月に米国主催で、総額180億ドルの調達を目標に、ドナーが正式に拠出誓約する増資会合が開かれます。第7次増資の投資計画書(investment case) は以下の記事をご覧ください。
第7次増資の「投資計画」発表 180億ドルで2000万人の命を救う
これまでの増資会合