9月10日、グローバルファンドは2025年版の成果報告書を公表しました。グローバルファンド発足の2002年以降、7000万人の命を救い、三大感染症(エイズ、結核、マラリア)による合計死亡率は63%減少しました。グローバルファンドへの拠出は、人命を救い、多くの人の健康を改善し、世界の保健安全保障を強化する最も効果的な方法の一つといえます。
しかし、20年以上かけて積み上げてきた成果が今、危機に瀕しています。国際的な援助資金の削減が三大感染症との闘いに多大な影響を及ぼしており、さらに数百万の命が危険に晒される可能性があると報告書は警鐘を鳴らします。
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要点は以下の通りです。
救われた命の数7000万人、死亡率は63% 減
グローバルファンドのパートナーシップの支援により、2002年の設立から2024年末までに7000万の命が救われました(※1)。グローバルファンドの支援対象国(約100カ国)では、エイズ、結核、マラリアによる合計死亡率が、グローバルファンド発足の2002年以降、63%減少しました(※2)。これは、低・中所得国の政府、コミュニティ、民間セクター、そしてグローバルファンドの技術パートナーである国際機関などと協働すれば、三大感染症を公衆衛生上の脅威として終わらせるという目標に向けて着実に前進していることの証左です。
1年間の成果
―エイズ
・抗レトロウイルス治療を受けているHIV陽性者数:2560万人
・HIV検査実施数:4660万件(うち1170万人は優先度が高い人、キーポピュレーション)
・感染予防サービスを受けた人数:1230万人
・下図に例示されている通り、2024年にはグローバルファンドが支援する国々において、感染者の88%が診断を受け感染を自覚し、診断を受けた感染者の79%が抗レトロウイルス治療を受け、治療中の感染者の74%が血中ウイルス量を抑制できました。また母子感染予防のカバー率が85%でした。これら数値は、いずれも過去最高です。
―結核
・結核治療を受けた人数:740万人
・薬剤耐性結核の治療を受けた人数:12万人
・グローバルファンド支援対象国における結核治療のカバー率は過去最高の75%(下図参照、※3)
―マラリア
・マラリア検査数:3億6000万件
・マラリア予防のため配布された蚊帳の数:1億6200万張
・マラリア予防治療を受けた妊婦の数:1780万人
・特にサハラ以南アフリカ諸国では、殺虫剤処理済みの蚊帳にアクセスできる人数は大きく進展(下図参照、※4)。
保健システム強化に27億米ドルを投資(*5)
2024年、グローバルファンドは強靭で持続可能な保健システムとコミュニティシステムの構築に向けた取り組みを加速させました。HIV、結核、マラリア対策の成果に大きく貢献するとともに、持続可能な開発目標(SDGs)の目標3の推進や、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた進展を支えています。2024年は特にインパクトが高い以下の活動に重点を置きました。
- 保健医療従事者の強化
- コミュニティ保健システムの強化(クリニックの診療時間、立地、必須医療製品の在庫切れ、感染症に対する差別や偏見など、医療へのアクセスを阻害する障壁を特定し対処するのに役立つ、コミュニティ主導のモニタリングも含む)
- サーベイランスシステムの強化(感染症のアウトブレイクの検知、検証、対応方法の改善に向けた取り組みなど)
- 検査システムの構築(検査室のインフラ整備、バイオセイフティやバイオセキュリティ、検体の輸送システムなど)
- 効果的な廃棄物処理
- デジタルヘルスの強化とAIの活用
- 医療用酸素と呼吸器ケアへのアクセス拡大
マーケット・シェイピング(市場形成)とサプライチェーン
グローバルファンドは、必須医療製品の供給能力向上とコスト削減に向け、保健医療製品のバリューチェーン強化と市場形成に投資しています。毎年約25億米ドルの資金が、治療薬、予防ツールや診断機器を含む保健医療製品の調達に活用されています。その事業規模を活用し、メーカーに国際品質基準の遵守を促すことで市場形成を図り、低・中所得国向けの供給能力の向上と、保健医療製品の価格引き下げを実現しています。また、支援対象国の政府と連携し、エンドツーエンドのサプライチェーン運営における効果的な規制と調整を強化するガバナンス体制の構築に取り組んでいます。
低・中所得国の国内保健資金
グローバルファンドは、いずれは各国が疾病対策プログラムの資金調達と管理を完全に自国主導で行うようになるべきという考えのもと、資金提供の条件として、各国に対し3疾病対策に国内の保健資金を拡充するよう求め、外部援助資金からの自立に向けた段階的な移行を支援しています。具体的には、公共財政管理(PFM)戦略を保健セクターに統合し、支援国の財務省および保健省と緊密に連携してPFMの成熟度向上と国の主導力強化を推進しています。
2002年以降、38カ国における52のHIV、結核、
世界の健康安全保障の強化
今後10年間でCOVID-19規模のパンデミックが発生する確率は約23%と推定されています(※6)。グローバルファンドのパートナーシップは、HIV、結核、マラリアといった世界で最も恐ろしい感染症に立ち向かうことで、世界をより健康で安全な場所へと変えています。100カ国以上における保健システムと疾病サーベイランスへの投資は、世界中の新たなアウトブレイクの検知、追跡、封じ込めに貢献しています。
例えば、2024年8月にWHOがエムポックスの流行を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言した時には、グローバルファンドはコンゴ民主共和国の緊急対応支援に950万米ドル、ルワンダの対応にさらに500万米ドルを拠出しました。またウガンダでは、エムポックス対策のための検査室の資機材と廃水サーベイランスを支援するため110万米ドルを投資しました。
こうした投資は、感染症の発生に備え、効果的に対応できるように支援し、世界の健康安全保障の基盤強化にも繋がっています。
2030年SDGs目標達成までの軌道との乖離
上記の成果や取り組みにもかかわらず、2030年のSDGs目標達成に向けて、国際社会が定めた目標に向けた軌道(下記図の緑の線)には乗っておらず、依然として大きな乖離があります。
国際援助資金の急激な減少
最近の報告書によると、世界的な保健資金の削減により、さらに数百万人の命が危険に晒される可能性があると警告しており、その多くは子どもたちです。さらに資金削減は、第一選択の抗マラリア薬への耐性増加といった疫学的課題や、債務危機、紛争、人権侵害の拡大、気候変動の影響といった複合的な危機が発生している最中に起こっており、これまでの数十年に及ぶ進歩が危機に直面しています。
今後の道筋
グローバルファンドは、年間最大50億米ドルを調達・投資し、最も恐ろしい感染症との闘い、100カ国以上における保健システムの強化、パンデミック対策の強化に取り組んでいます。2002年以降、グローバルファンドのパートナーシップは7000万人の命を救ってきました。
2025年はグローバルファンドの第8次増資の年であり、グローバルヘルスの未来を左右する重要な節目になります。この増資は、エイズ、結核、マラリアとの闘いの勢いを維持し、これまでの20年にわたる進展を覆しかねない三大感染症の再燃を防ぐ上でも不可欠です。迅速かつ重点的に投資が行わなければ、人々や社会、経済に甚大な被害をもたらす恐れがあります。
今こそ力を結集して、これまでに築き上げた成果を守り、さらに数百万の命を救い、エイズ、結核、マラリアのない未来を目指して行動する時です。
*1 保健への投資の成果は様々な方法で測定可能ですが、最も重要な尺度は「救われた命」の数です。グローバルファンドの成果報告に含まれる「命が救われた」数値は、グローバルファンドの技術パートナーであるWHOやUNAIDSなどの国際機関や研究機関が推奨する方法を採用して推計しています。特定の年に特定の国で救われた命の数は、主要な疾病介入が行われなかった場合に発生したであろう死亡数から実際の死亡数をひいて算出されています。例えば、結核患者の70%が死亡すると示す研究がある国において、ある年に1000人の結核患者が治療を受け、登録死亡数が100人だった場合、この例では治療により600人の命が救われたとみなすことができます。反対に治療がなければ、700人の命が奪われていたことになります。(詳細は成果報告書p.119参照)
*2 現時点で得られる最新統計に基づきます。エイズについては国連合同エイズ計画(UNAIDS)の「2025年Global AIDS UPDATE」による2024年の死亡数ですが、結核とマラリアについては世界保健機関(WHO)の2024年データが本報告書発行時点ではまだ入手できないため、2023年のデータを使用しています。WHOが最新データを公表次第、グローバルファンドのウェブサイト内、本報告書のオンライン・インタラクティブ版に掲載される予定です。(詳細は成果報告書p.119参照)
*3 ピクトグラム内の結核治療を受けた人数、カバー率は、WHO「
*4 出典:WHO/マラリアアトラスプロジェクト推計 2024年(データ入手可能なアフリカ38カ国対象)
*5 これには、健康のための強靭で持続可能なシステム(RSSH)および新型コロナ対応メカニズム(C19RM)への直接投資、エイズ・結核・マラリア対策への投資を通じたRSSHへの貢献が含まれます。
*6 Global health 2050: the path to halving premature death by mid-century – The Lancet
以上は、グローバルファンドのResults Report 2025に基づき、グローバルファンド日本委員会の責任で日本語でとりまとめました。
[参考]







