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グローバルファンド 2024年の成果報告書をリリース

2024年9月19日
グローバルファンド 2024年の成果報告書をリリース

9月19日、グローバルファンドは2024年版の成果報告書を公表しました。新型コロナウイルス感染症の影響で停滞していた治療や予防、検査のサービス提供が完全に回復し、エイズ、結核、マラリア対策において大きく前進しました。2023年は特に、必須医薬品の価格の大幅な引き下げとより広範囲なアクセスを実現しました。

しかし、三大感染症を2030年までに終息させるというSDGsの目標達成の軌道とは、依然として大きな乖離があります。エイズ、結核、マラリアへの投資が不十分であれば、これら感染症による脅威が永続化し、他の疾病や保健上の課題にも深刻な影響を及ぼすことが危惧されています。

成果報告 ウェブサイト
成果報告書(全文) 英文
成果報告書(ANNEX) 英文
概要(At a Glance)  英文 |  和文

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要点は以下の通りです。

救われた命の数は6500万、死亡率は61%減

グローバルファンドのパートナーシップの支援により、2023年末までに6500万の命が救われました(※1)。グローバルファンドの支援対象国(約100カ国)では、エイズ、結核、マラリアによる合計死亡率が、グローバルファンド発足の2002年以降、61%減少しました(※2)。これらは、低・中所得国の政府、コミュニティ、民間セクター、そしてグローバルファンドの技術パートナーである国際機関などとの協働により達成できたものです。

コロナの影響から完全に回復

下図の通り、新型コロナウイルス感染症による影響を受けていたエイズ、結核、マラリア対策は完全に回復し、これら三疾患との闘いにおいて大きな前進を遂げました。

2023年の1年間で、グローバルファンドの支援によるプログラムの主な成果は以下の通りです。

エイズ

・抗レトロウイルス治療を受けているHIV陽性者数:2500万人

・HIV検査実施数:5380万件、HIV感染予防サービスを受けた人数:1790万人

また、曝露前予防内服(PrEP)やダピビリン膣リングなど、感染の高いリスクに曝されている女性や思春期の少女が利用可能で、且つ、効果的な予防の選択肢へのアクセス拡大にも寄与しました。

結核

・結核治療を受けた人数:710万人

・薬剤耐性結核の治療を受けた人数:12万1000人

また、モバイル診断装置、デジタルX線検査やAI搭載の画像解析ソフトウェアなど、スクリーニングにおけるAIの活用を含む新しいツールやアプローチを用いることで、これまで以上に結核感染者の発見と治療が可能になりました。

マラリア

・マラリア検査数:3億3500万件

・マラリア予防のため配布された蚊帳の数:2億2700万張

・マラリア予防治療を受けた妊婦の数:1550万人

保健システム強化に過去最高額を投資

2023年、グローバルファンドは保健システムとコミュニティシステムの強化に、単年では過去最高となる18億米ドル(※3)を投資しました。具体的には以下のような活動に使われています。

  • 保健医療人材の育成・強化
  • 最前線で働くコミュニティ・ヘルスワーカーの待遇改善
  • 検査ラボおよび診断能力の拡大・強化
  • デジタル・ヘルスと保健情報システムの強化
  • 医療用酸素へのアクセス改善
  • サプライチェーンの強化と、マーケット・シェーピング能力を活用した医薬品・医療製品のより良い調達と供給の実現

こうした保健システムの構成要素への継続的な投資により、各国はコレラ、エボラ、エムポックスといった他の疾病対策や将来のパンデミックの予防・備え・対応を加速させることができます。

マーケット・シェーピング(市場形成)

グローバルファンドは、その事業規模を活かし、メーカーに世界水準の厳格な品質基準を満たした製品の生産を後押しし、低・中所得国向けの供給能力の向上と、医療製品の価格引き下げなど、市場の形成にも注力しています。2023年には三大感染症に関連する主要製品の大幅な価格引き下げを実現し、より多くの人々に医療製品を供給することが可能になりました。HIVの第一選択薬は25%、結核の診断検査用カートリッジは20%、短期予防治療薬は30%、薬剤耐性結核の主な治療薬(ベダキリン)は55%の値下げを実現しました。

またグローバルファンドは、「リボルビング・ファシリティ」という、新製品の導入を加速させる新しいアプローチを導入しました。この取り組みを活用して、既存の殺虫剤処理蚊帳と比較し45%以上の高い効果を発揮する、二重有効成分を持つ新型蚊帳の導入を加速させました。

2030年SDGs目標達成までの軌道との乖離

上記の成果や取り組みにもかかわらず、2030年のSDGs目標達成に向けて、国際社会が定めた目標に向けた軌道(下記図の緑の線)には乗っておらず、依然として大きな乖離があります。結核とマラリアは、軌道との乖離が特に顕著です。

複合的な危機の影響

2023年、世界は気候変動、紛争や政治的混乱、債務問題、反ジェンダー・反人権運動、市民社会への攻撃といった数々の危機に直面し、国内や国家間の不平等が深刻化しました。このような危機の影響やダイナミズムは国と地域によって異なるものの、常に、最も貧しく社会から疎外された人々を致命的な感染リスクにさらします。またこれら危機は、エイズ、結核、マラリアとの闘いに直接的な影響を及ぼし、取り組みを軌道に乗せることはさらに困難になります。

スーダンでは、紛争によって数千人が死亡し、1千万人以上が避難を余儀なくされ 、性暴力やジェンダーに基づく暴力が急増しました。ウガンダにおける「反同性愛法」は、LGBTQI+の人々に対する差別と偏見を拡大させ、こうした人々の保健医療サービスへのアクセスを妨げ、HIVの流行を制御しようとする努力を台無しにする恐れがあります。2023年、異常気象によりアフリカ全土で1万5千人以上の命が奪われました。マラリアは気候変動の影響を受けやすく、気候変動に加え、紛争、殺虫剤に対する耐性の増加等の複合的要因により、過去20年間のマラリア対策の成果が脅かされています。


*1  保健への投資の成果は様々な方法で測定可能ですが、最も重要な尺度は「救われた命」の数です。グローバルファンドの成果報告に含まれる「命が救われた」数値は、グローバルファンドの技術パートナーであるWHOやUNAIDSなどの国際機関や研究機関が推奨する方法を採用して推計しています。特定の年に特定の国で救われた命の数は、主要な疾病介入が行われなかった場合に発生したであろう死亡数から実際の死亡数をひいて算出されています。例えば、結核患者の70%が死亡すると示す研究がある国において、ある年に1000人の結核患者が治療を受け、登録死亡数が100人だった場合、この例では治療により600人の命が救われたとみなすことができます。反対に治療がなければ、700人の命が奪われていたことになります。(詳細は成果報告書p.47参照)。

*2 現時点で得られる最新統計に基づきます。エイズについては国連合同エイズ計画(UNAIDS)の「2024年Global AIDS UPDATE」による2023年の死亡数ですが、結核とマラリアについては世界保健機関(WHO)の2023年データが本報告書発行時点ではまだ入手できないため、2022年のデータを使用しています。WHOが2023年データを公表次第、グローバルファンドのウェブサイト内、本報告書のオンライン・インタラクティブ版に掲載される予定です。

*3 これには、健康のための強靭で持続可能なシステム(RSSH)および新型コロナ対応メカニズム(C19RM)への直接投資、エイズ・結核・マラリア対策への投資を通じたRSSHへの貢献が含まれます。


以上は、グローバルファンドのResults Report 2024に基づき、グローバルファンド日本委員会の責任で日本語でとりまとめました。

[参考]ピーター・サンズ グローバルファンド事務局長によるForbes寄稿

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