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4月25日は世界マラリアデー:気候変動がもたらす洪水とマラリア

2023年4月25日
4月25日は世界マラリアデー:気候変動がもたらす洪水とマラリア

気候変動とマラリア

気候変動は、世界中の人々の安全を脅かす問題の一つです。気候変動は、暴風雨、干ばつ、山火事、洪水などの異常気象をより激しく、より頻繁に引き起こします。また、食糧、水、経済的不安の増大や、難民や国内避難民の増加につながり、健康や福祉に深刻な影響を及ぼします。例えば強制的な移住や移動は、診断や治療サービスを中断させる可能性があります。こうした状況は、疾病の蔓延を招きます。

マラリアは気候変動の影響を受けやすい感染症のひとつで、気候変動により、世界の多くの地域でマラリアの感染者数、死亡者数が増加しています。気温、降雨量、湿度の上昇により、マラリアを媒介する蚊の高地での増殖を引き起こし、以前は報告されていなかった地域でマラリアの感染を増加させる恐れがあります。実際、熱帯・赤道直下の丘陵地や山岳地帯は、これまで原虫を媒介する蚊の生息域外にありましたが、これら地域にも蚊が出現するようになりました。これはまた、マラリアの予防、発見、治療のためのリソースや体制が十分に整備されていない地域にマラリアが伝播する可能性があることを意味します。

パキスタンの洪水

昨年パキスタンで発生した未曾有の大洪水は、猛暑に加え、モンスーンの豪雨とヒマラヤの氷河の融解が原因でした。そして、マラリアの患者が急増したのです。世界保健機関(WHO)によると、2022年にはパキスタンの60の地区で160万人以上のマラリア感染者が確認され、前年の40万人から4倍に増加しました¹。より致命的なマラリア原虫を媒介する蚊によるマラリア症例の割合が高く、この原虫は通常アジアではなくアフリカの一部で発見されるものでした。

パキスタンの南部シンド州のセフワンにある病院で助産師として働くファジーラ(写真)も洪水で自分の村から避難した一人で、仮設キャンプのテントでの生活を余儀なくされました。破壊された自宅に戻った後、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の支援を受けて、インダス病院と医療ネットワークが設置した移動式診療所で働き始めました。この移動式診療所は、最も深刻な被害を受けた地域にマラリア検査や治療などの保健サービスを提供するために開始されたものです。現在も、昨夏の未曾有の緊急事態からまだ立ち直れていないコミュニティに、必要不可欠な保健サービスを提供し続けています。

ファジーラは、移動式診療所を訪れた患者の半数がマラリアの陽性反応を示したと言います。また、インダス病院と保健ネットワークのエグゼクティブ・ディレクターであるマー・タラット博士は、「洪水によって影響を受けたすべての人がマラリアに罹っているか、家族の誰かがマラリアに罹っている状況でした。洪水とそれに伴う健康危機は壊滅的です。緊急事態はまだ終わっていません。」と語ります。そして今年、「雨は再び降り始め、4月は感染リスクが高い時期にあたるため、マラリア患者が増加しています。また、モンスーンの季節(例年7~8月)が昨年以上の悲劇にならないよう、私たちは今すぐ行動する必要があります。」と警鐘を鳴らします。

グローバルファンドは、パキスタンで発生した洪水とそれに伴う保健衛生上の緊急事態に迅速に対応しました。通常の支援に加え、緊急支援ファンド(各国が災害や紛争などに直面した際に迅速に危機対応ができるための緊急支援の枠組み)から1000万ドル(2022年9月)²、その後追加で2000万ドル(2022年11月)³を支援しました。具体的には、緊急保健キャンプと上記の通り移動式診療所を支援し、マラリアの検査や治療など、緊要な保健サービスを提供しました。グローバルファンドの支援は、清潔な水、緊急食糧パック、発電機の提供などにも活用されました。

現在、グローバルファンドはパキスタン全土で、コミュニティ・ベースのマラリア検査・治療、殺虫剤処理された蚊帳(ITN)の配布や屋内残留噴霧(IRS)、マラリアへの負担が最も大きいコミュニティへの教育キャンペーンなど、継続的なマラリア対策活動を支援しています。また、洪水で被害を受けた診療所の修理・改修も支援しています。

世界のマラリアの状況

マラリアとの闘いは、公衆衛生上の成功の一つでした。過去20年間、マラリア対策は大きな進展をみせ、世界の患者数と死亡者数が減少していました。しかし、その進歩は2018年頃から停滞し、新型コロナのパンデミックによってさらに軌道から外れてしまいました。新型コロナによるマラリアサービスの中断は、マラリアの死亡者数と罹患数の増加につながりました。2019年から2021年にかけて、1340万人が新型コロナのパンデミック時の混乱に起因してマラリアを罹患したと推定されています⁴。2021年には、世界中で推定2億4700万人がマラリアを罹患し、約62万人がマラリアで亡くなりました。命を落とした人の8割近くが5歳未満の子どもです⁴。

グローバルファンドは、これまで以上に、マラリアとの闘いを活性化し持続させるために、各国の取り組みを支援しています。より質の高い保健サービスの提供、より公平なアクセスの実現、マラリア対策プログラムへの大幅な資金増、新しいアプローチやイノベーションへの投資や既存ツールの改善などに努めています。


<1> 「パキスタン:ファジーラや数百万人に、気候変動は異常な洪水とマラリアをもたらす」(For Fazila and Millions of Others in Pakistan, Climate Change Brings Extreme Floods and Malaria(グローバルファンドレポート、2023年4月13日)

<2> Global Fund Approves Emergency Funding to Help Maintain Essential Health Services in Pakistan – News Releases – The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria(グローバルファンド、2022年9月20日)

<3> The Global Fund Commits to Over US$21.9 Million in Emergency Funding for Families Living Through Climate Crises in Pakistan and Somalia(グローバルファンド、2022年11月30日)|FGFJの記事はこちら

<4> World Malaria Report 2022(WHO、2022年12月8日)

その他参考資料:

1) 気候変動と環境の持続可能性に関する声明(グローバルファンド、2021年12月3日)Statement on Climate Change and Environmental Sustainability 3 December 2021

2) グローバルファンド2022年成果報告書 Results Report 2022 – The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria|FGFJによる要約はこちら

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