毎年3月24日は「世界結核デー」。
1882年3月24日に結核菌の発見が発表された日にちなみ、1997年に世界保健機関(WHO)が制定しました。
結核は予防も治療も可能であるにもかかわらず、感染症による死因の第一位、世界におけるすべての死亡原因のトップ10に数えられます。
2023年には、世界中で推定1080万人が結核に罹患し、125万人が死亡しています。
日本の結核との闘いの歴史
結核は、戦後の日本における最大の死因であり、「国民病 」と呼ばれるほど蔓延していました。1950年代、日本は全国的な結核対策を開始しました。国を挙げての取組みは、結核の感染死亡数を大幅に減少させただけではなく、この取組みを基盤としてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成にもつながりました。すべての人が利用できる包括的な保健医療制度が構築されたのです。

しかし今でも、年間約1万人以上が新たに結核を発症し、年間1500人以上が亡くなっています。新規の結核患者は高齢者に多く、65歳以上が全体の7割を占めています。
また、近年では若年の外国生まれの患者の占める割合が増加しており、20-29歳の新規患者の8割以上を占めています。結核は日本における主要な感染症で、今なお身近な病気のひとつなのです。
結核に国境はありません。どこにでも結核が蔓延する可能性があるということは、世界中のすべての人に大きなリスクをもたらします。
結核はあまりにも長い間、人類を脅かしてきました。今こそ、私たちはこの致命的な感染症を克服しなければなりません。
「結核対策は、単なる道徳的義務ではなく、すべての人々の健康益につながるものです。結核は国境を知らない、空気感染する病気だ。結核は治療可能だが、治療が中断されたり不完全であったりすると、結核菌の薬剤耐性の発生につながり、結核の制圧はより困難になりコストがかかってしまう。これは人命を奪うだけでなく、保健医療システムにも負担をかける。このような脅威を放置することがいかに深刻な結果をもたらすか、COVID-19パンデミックでの教訓が私たちにはある」
ピーター・サンズ グローバルファンド事務局長
気候変動による健康危機に直面する人々の悲痛
バングラデシュ ーーー
・・・サイクロンが直撃したとき、コミュニティへルス・ワーカーのチャンパの頭に浮かんだことは「薬を救うこと」だった。彼女は、洪水がもたらす被害の大きさを理解していたのだ。・・・
グローバルファンドのパートナーBRACでコミュニティへルス・ワーカーのチャンパ
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「困っているときに、誰かがそばにいてくれる、安心するし心が温まります」
チャンパの友人のレカ。2024年のサイクロン「レマル」に続き大雨による洪水の影響が拡大した。その後、レカは結核に罹患した。チャンパが結核治療をサポートする。

20年以上にわたり、グローバルファンドはバングラデシュの結核対策を支援する。
2002年以降、バングラデシュの結核患者発見率はほぼ3倍になった。過去5年間、毎年約30万人が結核治療を受け、過去10年間では、結核治療を受けた人の95%が回復している。しかし、自然災害を始めとした気候危機が深刻化、20年以上かけて積み上げた成果のすべてが危険に晒されている。

原文「Champa and Rekha: Fighting Tuberculosis Through Fear and Floods in Bangladesh」より一部抜粋し、グローバルファンド日本委員会にて仮訳、編集(英文を正文とする)
モンゴル ーーー
モンゴルは気候変動がもたらした深刻な公衆衛生上の懸念に直面し続けている。モンゴルは西太平洋地域で結核の罹患率が高い国のひとつでもある。小児結核は、新規患者の11%を占め、世界平均の7%、地域平均の3%をはるかに上回っている。
「大気汚染と呼吸器疾患、特に結核には強い相関関係があります。ウランバートルでは、モンゴルの結核罹患者の約60%が首都のウランバートルに集中しており、大気汚染の増加がこの要因であることがわかっています」
「より強力な政策、より迅速な行動、そして世界的な連携が必要です。私たちの健康と暮らしは、それにかかっているのです」
モンゴル反結核連合のバザラグチャア・ツォグト医師

グローバルファンド設立20周年記念ドキュメンタリー「何事も夢から始まる」
結核との闘いに携わる人々のストーリーを描いた「ベトナム・結核編」もぜひご覧ください。