![](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_7685-1024x683.jpg)
![古屋範子議員](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_0026-1024x682.jpg)
![](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_0141-1024x682.jpg)
![大串正樹議員](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_0086-1024x682.jpg)
![濱村進議員](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_0005-1024x683.jpg)
![福山哲郎議員](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_0035-1024x682.jpg)
![代表幹事の逢沢一郎議員](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_0127-1024x683.jpg)
![代表幹事の古川元久議員](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_0103-1024x682.jpg)
![会合の様子](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_7661-1024x684.jpg)
![長崎大学熱帯医学研究所 病害動物分野教授 皆川 昇氏](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_9977-1024x682.jpg)
![国立国際医療研究センター研究所熱帯医学・マラリア研究部長 狩野繁之氏](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/2020/03/29th_Malaria_0089-1024x684.jpg)
グローバルファンド⽇本委員会(FGFJ)は3⽉10⽇(⽕)に第29回議員タスクフォース会合を開催し、10名の議員タスクフォースメンバーが出席しました。
今回の会合は「気候変動がマラリアに及ぼす影響について」というテーマで、⻑崎⼤学熱帯医学研究所 病害動物分野の皆川昇教授、国⽴国際医療研究センター研究所熱帯医学・マラリア研究部の狩野繁之部長(グローバルファンド⽇本委員会アドバイザリー・ボードメンバー)の2名の専⾨家をゲスト・スピーカーとして迎え、気候変動がどのようにマラリアの発⽣、感染、流⾏に影響を与えているかについてブリーフィングをしていただきました。
要旨は以下の通りです。
皆川昇長崎⼤学熱帯医学研究所 病害動物分野教授 ブリーフィング要旨
気候変動と気候変化
「気候変動」と「気候変化」は異なる。英語で表すとそれぞれ、“Climate Variation” 、“Climate Change”といい、端的に定義すると、気候変化(Climate Change)は⻑期の気候の変化を指す⾔葉で、短くても数⼗年、数百年またはそれ以上の変化のことを指し、その代表的なものが「温暖化」である。⼀⽅、気候変動(Climate Variation)とは、短期の気候の変化を指し、短くて数か⽉から数年の規模で起きるものである。通常過去30年間の平均をみて、そこから外れている気候のずれ(変動)を気候変動という。
温暖化はマラリア流行に関係するのか
温暖化によって⾼地、標⾼の⾼い地域の気温が上昇し、寒冷地に マラリア媒介蚊がやってきてマラリアの流⾏を引き起こすと頻繁に言われるが、そう単純に⾔い切れない。マラリア媒介蚊は世界中50種類以上いて、⽇本にも⽣息している。マラリア発⽣地には北朝鮮や韓国が含まれており、過去にはカナダやヨーロッパ、北海道でもマラリア発生の報告がされていることから、マラリアは熱帯病ではなく、温帯地⽅にもあることがわかる。また、アフリカ⼤陸の中でも標⾼が⾼い(標⾼約1700メートル)ケニアの⾸都ナイロビにおけるマラリアの患者数(対⼈⼝)を⾒ても、温暖化が騒がれる以前から既にマラリアの流⾏があったことが確認できる。これらのデータから、温暖化によって寒冷地でマラリアが流⾏したとは⾔い切れない。
気候を予測してマラリア流行を予測する
通常、地球は太陽から受けたエネルギーを1年のうちに宇宙に放ち、受け取ったエネルギー量と地球 から放出するエネルギー量が同じであれば地球の気候は安定する。しかし最近は、太陽から受け取ったエネルギーを1年のうちに解消することができず、解消できなかったエネルギーは海に蓄えられて、翌年、2年後、3年後、エルニーニョやラニーニャなどとして現れ、世界中で気候変動を引き起こす。昨年、インド洋でエルニーニョが発⽣し、インド洋⻄側の海⽔⾯温度が上昇した影響で、ソマリアからケニアにかけて約6か⽉間、普段⾬が降らない地域にも⼤⾬が降り、洪⽔が起きた。その結果、農業被害やマラリアを含む感染症流行が多数発⽣した。
このような事象は何年かおきに発⽣することから、気候予測からマラリアの⼤規模発⽣を事前に予測し、必要な準備や対策を講じることが可能ではないかと考え、⽇本開発研究機構(JAMSTEC)の地球シミュレーターを⽤いて南部アフリカに特化した気候予測モデルを構築した。この気候変動予測モデルはAI(⼈⼯知能)を⽤いて、地球規模の気候予測、地域的な気候予測からマラリアの流⾏を3〜4か⽉間に予測する。実際にこのモデルは南アフリカのマラリア対策に⽤いられ、モザンビークなどの周辺国からもその有⽤性について評価を受けている。また、未だ実⽤化には⾄っていないが、気候予測モデルが出したマラリア流⾏のデータを⼀般市⺠にも共有することで、個⼈やコミュニティーベースでマラリア予防対策⾏動が取れるようなシステムづくりのアイデアも出ている。
既存の有効なツールの効率化
マラリアには蚊帳や殺⾍剤などの予防対策はあるが、ワクチンはなく、予防対策の効果が頭打ちになってきている。気候予測モデルを含め、既存の⼀つひとつの予防対策はマラリアの流⾏予防に有効だが、⼀つの⽅法だけで対策を⾏うのではなく、複数の⽅法をケース・バイ・ケースで組み合わせて使いこなすことが重要である。具体的には、気候予測モデルを国や地域の特性や予防戦略に合わせて既存の有効なツールと組み合わせることで、各国、地域に適した感染症の予防対策をより効率的に⾏うことに繋がる。また、農業や災害対策(台⾵やサイクロンなどの予測の観点から)等、気候予測モデルの他分野やアフリカ以外の地域での応⽤の可能性がある。