グローバルファンドのサンズ事務局長 テレグラフ紙への寄稿で、ワクチンとともに「検査」の重要性を説く

この記事の掲載日 : 2020年11月05日(木) この記事のカテゴリー : , ,



グローバルファンドのピーター・サンズ事務局長と、FINDのボーメCEOの共著による寄稿 Behind the Covid-19 vaccine is a hidden arsenal of diagnostic tests が、テレグラフ紙に掲載されました。世界の注目が集まるワクチンの影に隠れて目立たない「検査・診断」の重要性を説いています。

ワクチンも治療薬もまだ開発中の段階で、今ある新しいツールは、診断・検査法であること、また、ワクチン開発中に、さらにワクチンが導入された後にも、なぜ検査がセットで必要となるのかを解説し、国際社会に診断・検査への投資を呼びかけています。以下リンクよりご覧ください。仮訳を以下に記載しています。


Behind the Covid-19 vaccine is a hidden arsenal of diagnostic tests
Vaccines are only one part of the solution, and diagnostic testing is a near-invisible but essential enabler of their development
by Catharina Boehme,  Peter Sands

The Telegraph   November 3, 2020


[仮訳]

新型コロナワクチンの背後にある、診断検査という武器
ワクチンは問題解決の一部に過ぎず、診断検査は実はワクチン開発にも欠かせない

カタリーナ・ボーメ、ピーター・サンズ
2020年11月3日  テレグラフ紙

 

多くの人が当たり前と思っているワクチンは、世界の健康に革命をもたらしました。現在では、20種類以上の「定期」ワクチンが、はしか、破傷風、インフルエンザなどの病気で毎年200万人から300万人の死亡を防いでいます。

当然のことながら、世界中の多くの人々が、将来ワクチンが開発されることを希望の光とし、新型コロナの流行そのものや世界中が陥っている前例のない混乱を終焉させる道筋をつけるものとして注目しています。

しかし、ワクチン自体はワクチンによる問題解決の一部に過ぎません。あまり目立たない検査・診断が、実はワクチン開発に欠かせない働きをしています
なぜワクチンは検査に依存しているのでしょうか?第一に、研究開発の段階では、ワクチン試験に参加するボランティアは、現在新型コロナウイルスに感染しているか、あるいは過去に感染したことがあるかを確認するための検査を定期的に受けています。

研究結果を正確に解釈するためには、この比較的少数の集団がワクチンにどのように反応するのか、また将来のウイルス再感染に対してどのように反応するのかを理解することが重要です。

さらに、ワクチンの有効性の確立は、ワクチン接種群の感染数とプラセボ群の感染数を比較する検査に完全に依存しています。

ワクチンの正確な有効性を知ることは、集団免疫を達成するために、また一定の集団として感染を予防するために、どのくらいの割合の人にワクチンを接種する必要があるのかを理解するのに役立ちます。

第二に、ワクチンが導入されたらその影響を監視する際に、継続的な公衆衛生サーベイランスのための検査が必要になります。

ワクチンの実際の性能が臨床試験の結果と本当に一致しているかどうかを知ることができるので、新しいワクチンの継続的な有効性データを収集するためには、使用許可が出た後の集団レベルでの検査が非常に重要です。

診断テストがなければ、ワクチンが実際にどの程度効果を発揮しているのか、ワクチン開発を続けなければいけないのかを判断するための材料が揃いません。もちろん、臨床開発中の多くのワクチンのうち少なくとも1つが有効であることは誰もが願っています。

しかし、もしこれらのワクチンが効果目標を達成できなかった場合(最悪の場合!)、私たちの社会を機能させるためには、最終的に十分に効果的なワクチンが開発されるまで、数ヶ月、あるいは数年にわたり検査に完全に頼ることになります。

現在、世界で数万人規模のワクチン臨床試験が行われており、そのために必要な分の実験室ベースのPCR検査や血清(抗体)検査を実施・処理するための能力確保には、膨大な労力が費やされています。しかし、ワクチンの集団摂取が始まった後、あるいはワクチン臨床試験がうまくいかなかった場合に、全ての人びとを検査するだけのキャパシティはあるのでしょうか?

検査・診断を効果的に実施できなかったことが、新型コロナによって数え切れないほどの人命を失った原因となっており、手頃な価格でアクセス可能な質の高い検査が、検査―追跡―隔離戦略を実施するために必要とされています。

パンデミックの初期から、ほとんどの国では、ウイルスの拡散を抑えるのに必要な検査を実施するために十分な検査用品、検査設備、それに必要な専門知識を有していませんでした。ワクチン開発やサーベイランスなど、さらに検査・診断の必要性が追加になれば、各国の負担を増大させるだけです。

幸いなことに、私たちはこの問題を解決するための地図を持っています。「Access to Covid-19 Tools (ACT) Accelerator」(ACTアクセラレーター)は、新型コロナの検査、治療、ワクチンに関して、開発、生産および公平な入手を促進するための画期的な国際協働の仕組みです。

これは、世界保健機関(WHO)を中心に、学術界、産業界、規制当局、市民社会、ドナー、国際機関、国の代表者など、30を超える専門的なパートナーらが協力し、パンデミックと闘うこれらすべてのツールを横断して、その活動を調整する唯一の世界レベルでの取り組みです。

COVAXは、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)とGAVIワクチンアライアンスが主導するACTアクセラレーターのワクチン部門で、世界の人口の70%が新型コロナワクチンを利用できるように、ドナー各国と約束を取り付けました。

ACTアクセラレーターの診断検査部門は、(感染症の診断技術開発を支援する)FIND(Foundation for Innovative New Diagnostics)とグローバルファンドが主導しています。しかし、この野心的な計画を実現し、パンデミックに取り組むための世界の検査ニーズを満たすために、まだ60億米ドルを必要としています。そのうち20億ドルは、今年末までに必要な額ですが、現在までに3億6000万ドルしか集まっていません。これでは、たとえワクチンが完成したとしても、私たちは脆弱なままです。

私たちは皆、可能な限り早くワクチンの準備ができ、利用可能になることを望んでいますし、研究開発の大幅な進歩は確かに希望をもたらしています。しかし、ワクチン開発の後期段階を支援するために必要な検査の拡大への資金提供の機会は、閉ざされています。

パンデミックを食い止め、人命を救い、経済を安全に再開させるために現在私たちが手にしている唯一のツールは、検査・診断です。そして今後も、世界的なワクチン接種キャンペーンを成功させるために、診断・検査が必要となるでしょう。世界的なパンデミック対応において、検査・診断が見過ごされることがあってはなりません。

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カタリーナ・ボーメ氏はFIND (Foundation for Innovative New Diagnostics)のCEO、ピーター・サンズ氏は世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の事務局長。FINDとグローバルファンドは、ACTアクセラレーターの診断検査部門を共同でリードしている。


(参考のための仮訳であり、オリジナル英語を正文とする)

ACTアクセラレーターについては、こちらをご覧ください。