グローバルファンド日本委員会15周年記念イベント 開催報告

  • 2019年3月20日

この記事の掲載日 : 2019年04月24日(水) この記事のカテゴリー : ,



(公財)日本国際交流センター(JCIE)/グローバルファンド日本委員会(FGFJ)は、2019年3月20日、グローバルファンド日本委員会の発足から15周年を記念したイベント「日本人とグローバルファンドー増資は他人のためならずー」を開催しました。

グローバルファンドのピーター・サンズ事務局長をはじめ、日本の国会議員、外務省・厚生労働省の関係者、保健医療分野の専門家、感染症の当事者を含む市民社会、民間企業、国際機関の代表など国内外から約150名のご参加を得て、15周年を祝うことができました。日本委員会の15周年は偶然にもグローバルファンドの第6次増資の年と重なったことから、このイベントは増資をテーマにとりあげ、なぜ日本がグローバルファンドに資金を出すのか、納税者として一人ひとりに考えていただく機会となりました。

2004年、新たな外交課題“感染症”へのオールジャパンの対応として誕生

開会にあたりJCIEの大河原昭夫理事長は、2004年にグローバルファンド日本委員会を立ち上げた最初のきっかけは、日米関係の一端からもたらされたエピソードを紹介し、感染症という新たな外交課題に日本がオールジャパンで貢献できるよう基盤を作りたいという思いから日本委員会が設立され、現在世界に4つあるフレンズ・オブ・ザ・グローバルファンドの第1号となったと述べました。JCIE理事長として各界の関係者のこれまでのご協力に感謝するとともに、15周年の節目は、2030年の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた新たなスタートでもあると述べ、三大感染症の流行の終息のために日本がより大きな役割を果たせるよう努力していきたいと決意を新たにしました。

三大感染症への取り組みは将来への投資である

鈴木憲和外務大臣政務官は、ご挨拶の中で、世界で今なお多くの尊い命を奪っている三大感染症は、貧困と深く関係し、各国の活力や経済成長の源も損なうものであると述べ、SDGsの理念である「誰一人取り残さない社会」の実現を図る上で、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)は不可欠な要素であり、日本にとって三大感染症対策とグローバルファンドへの貢献はその一環であると強調しました。そもそも日本は、2000年のG8九州・沖縄サミットで感染症対策を主要課題として取り上げ、追加的資金調達の必要性を各国とともに確認した。このことがグローバルファンド設立の発端となったと述べ、日本が果たした重要な役割に言及しました。

さらに鈴木政務官は、民間での外交対話を担ってきた日本国際交流センターの尽力によってグローバルファンド日本委員会が発足して以来、15年の間に各界の有識者の参加を得て行われた様々な活動に敬意を表すとともに、その活動が感染症対策における日本の官民協力の促進と日本の国際貢献に繋がってきていることを誇りに思うと述べ、「三大感染症への取組みは、世界の将来への投資である。国会議員の一人として国民の皆様の理解が得られるよう努力していきたい」と結びました。

 

第6次増資計画:140億ドル以上の調達を目標

グローバルファンドのピーター・サンズ事務局長は基調講演を行い、G8九州・沖縄サミット以来の日本のグローバルファンドへの貢献や国際保健分野でのリーダーシップを称え、また官民パートナーシップでそれを支えてきたグローバルファンド日本委員会の活動に謝意を表しました。またサンズ事務局長は、グローバルファンドと世界中のパートナーの努力の結果、2002年設立以来三大感染症による死者数はほぼ半減したことを挙げ、これは大きな成果である一方、それでも毎年約250万人が、予防・治療できる病気で命を落としていることに、我々はもっと緊迫感を持たなくてはならないと警鐘を鳴らしました。現状レベルの対策を維持しているままでは、死者数は再び増大し、世界保健機関(WHO)や国連合同エイズ計画(UNAIDS)などの技術パートナーが制定した、2030年にエイズ・結核・マラリアの流行を終息させるという目標に向けた軌道に乗ることができないとし、そのために2020~23年の3年間にグローバルファンドが調達すべき額は140億㌦であり、感染症との闘いを強化(step up) しなければいけないと結びました。
プレゼンテーションの詳細は後日公開いたします。

「誰も取り残さない」感染症対策に不可欠なのは当事者の参画 

「感染症と闘うコミュニティ(当事者)の証言」のパネル・ディスカッションでは、結核に罹患し副作用で障害を負いつつアドボケートとして活躍するフィリピンの女性、HIV陽性者の世界的組織で活躍するインドネシアの男性に、ご自分のストーリーを語っていただくともとに、感染症との闘いの中で当事者が果たしてきた役割や、今後グローバルファンドとともに何ができるのか、米国法人日本国際交流センターの吉田智子のモデレートで議論しました。

フィリピンのエロイザ(ルイ)・ゼペダ・テン氏は、多剤耐性結核にかかった体験をもとに、患者自身が病気と治療・副作用を理解し、障害者への差別をなくすために自ら立ち上がることの重要性を強調しました。

若き建築家として活動していた私は2006年末、繰り返しの高熱の末に倒れて病院に運ばれた。最初に運ばれた病院では全く原因が突き止められず、その次に行った病院でも誤診。その後、グローバルファンドの支援を受けた病院に運ばれて、ようやく結核性髄膜炎だと診断を受けた。しかし、やがて多剤耐性結核であることが発覚。闘病生活が長期化する中で、様々な副作用に苦しみ、視力も失っていった。
自暴自棄になっていたあるとき、自分より重い障害をもった人たちに出会い、自分の人生を受け入れる決断がついた。2013年にアクティビストとしての活動を開始。結核治療薬の誤った服用によって聴覚を失う患者は多く、そうした人たちのための結核障害委員会を立ち上げ、CKAT(結核アドボケーツ協議会) も設立し、結核に罹患した人々が受けている治療や副作用について正しく知ることを推進する活動を主導している。結核対策ではまだ医療の面が優先されていて、人権について語る機会が少ない。フィリピンでは、かつての大統領さえ結核で命を落としているにもかかわらず、未だに守秘義務が重要視され、結核に罹ったことを隠さなければならない。また、国民の2割は障害者であり、結核患者もその一部である。今後の取組みを前進させるためには、コミュニティのキャパシティ構築をし、人権に基づいた社会保障を整備していくことが極めて重要である。

インドネシアのオマール・シャリフ氏(世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+) プログラム・オフィサー)は、当事者を感染症対策の担い手とすることの重要性に理解を求めました。

私は、薬物依存から一度回復し、海外に新しい職を得て心機一転新しい暮らしを始めた直後、在留資格を得るための検査でHIV感染が判明、即刻解雇、国外追放となった。HIVについて何の知識もなかった私は、ヘロイン使用を再開、2年間ホームレス生活を送った。そんな時、救いは、仲間のドラッグユーザーからやってきた。地元の大学とグローバルファンドの支援を受けたハームリダクション・プログラムがドラッグユーザー自身によって運営されていたのだ。清潔な針の必要性や代替薬物に関する指導を受けたのは初めてだった。私はコミュニティ・ミーティングに参加するようになり、やがて定期健診やHIV治療を開始することができた。そして、同じように苦しむ仲間への支援を拡げるために、インドネシアHIV陽性者ネットワークの設立にも加わり、次第にアジア地域やグローバルな活動にも関わるようになっていった。

エイズ対策には、当事者コミュニティが重要である。薬物使用者は、差別やスティグマを恐れるので、自ら公共サービスに出向くことはない。しかも、薬物使用者は早起きではないので、保健センターの9時~5時のサービスには誰も行かない。当事者の声を聞き、彼らの暮らしにあった対策を打つ必要がある。結核もエイズも、病気の社会的背景に対処しなければ、流行を終息させることはできない。一方で、国際支援から卒業する頃になると政府がまず予算から外そうとするのは、性産業従事者や薬物使用者、男性同性愛者などへのエイズ対策である。「誰一人とり残さない」というSDGsの取組みを前進させるためには、グローバルファンドがしっかりと卒業までの移行期を支えて、こうした人々を国が支援するルートを確保することが極めて重要だ。

稲場雅紀氏(アフリカ日本協議会国際保健部門ディレクター)は、1994年、横浜で開催されたエイズ国際会議の場にゲイ当事者として参加した当時を振り返り、高価な治療費を途上国の人々が支払うのは不可能、アフリカでは定時の薬の服用は不可能といった通説がまかり通っていた、そのブレイクスルーとして設立されたのがグローバルファンドだった、と述べました。2004年から09年までグローバルファンド理事会の先進国NGO代表団メンバーに加わった経験から、グローバルファンドでは、当事者が、理事会で各国政府代表と同じ議決権を持ち、国レベルでも計画策定や実施にかかわっていることを強調しました。また、資金の調達や使い道の意思決定に当事者が参画することの意義として、現場の感染症対策がより実効性の高いものになったこと、また、当事者側も強い覚悟を持つようになったことを上げ、「コミュニティは単に救われるだけの存在ではなく、自らを救ってきた。それが、グローバルファンドの17年間の歴史である」と結びました。

 

様々な日本の組織がグローバルファンドと接点をもつ

続く「グローバルファンドのパートナーシップとSDGs」のパネルでは、グローバルファンドの國井戦略投資効果局長と、企業、メディア、財団など様々な立場からグローバルファンドと接点のある方をパネリストに迎え、日本国際交流センター執行理事の伊藤聡子(グローバルファンド日本委員会事務局長)のモデレートのもとでディスカッションを進めました。グローバルファンドは21世紀型官民連携基金といわれていますが、残念ながら、日本からそのパートナーシップの輪に入っている組織はあまり多くありません。今後、グローバルファンドが日本のアクターとどのようにかかわりをもっていくべきか、多くの示唆が得られた議論でした。

冒頭、グローバルファンドの國井修局長は、パートナーシップの意義について、多くの組織は単独で仕事をしてその成果を独自にドナーに報告する方が楽であり、実は組織を超えたパートナーシップは口でいうほどたやすくはないとした上で、しかしこれを変えたのがエイズの流行だったと指摘しました。エイズの流行が一国の存在すら脅かすほど深刻であった2000年当時、各組織が個別に対応していてはとうていこの巨大な敵に太刀打ちできないと考えた当時のコフィ・アナン国連事務総長により、パートナーシップを促進するためのメカニズムの創設が提唱されたことがグローバルファンドの発端です。國井局長は、現在、グローバルファンドが支援する国では、「1つの予算、1つの計画、1つの報告」というルールのもと、その国の政府と様々な援助機関やNGO・市民社会が連携して対策を実施しており、グローバルファンドはそのための黒衣として促進・調整役に徹していることを強調しました。

 

企業からは、グローバルファンドの民間企業ドナーとしては最長の10年にわたる寄付を行ってきた武田薬品の平手晴彦氏(武田薬品工業株式会社コーポレートオフィサー)が登壇しました。平手氏は、企業の立場から見て、官民連携による途上国への支援が成功する要件として、3点を挙げました。すなわち、(1)長期にわたるコミットメントがあること、(2)持続可能なビジネスモデルであること、(3)その国の主体性を引き出す仕組みを持っていることであり、グローバルファンドはいずれの要件も備えており、かつ投資に対する結果分析のデータが明確に出てくることが素晴らしく、それが企業として共鳴する理由であると説明しました。また、寄付という手法をとることについて、CSRは単発のチャリティ的な寄付であると誤解されることが多いが、中長期のコミットがある寄付であれば、継続性をもった事業の仕組みを作ることができるとし、事実、武田の場合は、複数年の寄付は初年度に全額計上し財政状況に左右されない継続性を確保している、と寄付の有用性を訴えました。平手氏はさらに、今後もグローバルファンドへの支援を検討していると述べ、第6増資におけるパートナーシップ継続の可能性に言及しました。

 

続いて、マラリア対策の切り札である蚊帳や室内残留スプレーの開発で、世界的な認知を受けている住友化学の石渡多賀男(住友化学株式会社生活環境事業部開発部部長)は、グローバルファンドは現在、世界中の蚊帳の購買の約6割に関与し大きな存在感を示しているが、加えて最近では、新製品の市場導入や普及促進プログラムにもグローバルファンドが協力・参画しており、企業の新製品開発のモチベーションを上げる効果があり、大変勇気付けられていると指摘しました。

住友化学は製品開発の分野で多くの国際組織とパートナーシップを組んでいますが、その背景として石渡氏は、感染症対策の商品は市場規模が小さく、また、困っている人に対して低価格で提供するという社会的使命から、製品価格を抑えなければならず個別事業の採算性が低い。その一方で殺虫剤への抵抗性が急速に拡大しているため、絶え間ない新製品開発が要求される。この経済性と技術面での問題のギャップを埋めるためには一企業の努力だけでは限界があり、国際機関等の協力や連携が重要であると訴え、グローバルファンドにはより積極的に新製品の普及に関わってほしいと期待を述べました。

 

ジェンダー問題に詳しいジャーナリストの治部れんげ氏は、サハラ以南アフリカでは思春期の女子と若い女性の新規HIV感染が、同世代の男性に比べて圧倒的に高いことに対し、医学の進展にもかかわらず特定の属性において感染が増えている背景には、何らかの脆弱性があり、ジェンダー規範、すなわち女子あるいは男子はこうあるべきという社会の問題があると指摘しました。性交渉や出産における選択権が女性にない、あるいは、半ば強制されたような形で高齢のパートナーとの結婚を強いられ、女性に対する性暴力が社会に受け入れられている現実がある。こういった問題に対して、息の長い取り組みをしてほしいとグローバルファンドへの期待を述べました。

治部氏は、ケニアでグローバルファンド支援の事業を取材した経験から、グローバルファンドについて、もっと一般国民の理解を促進していく必要があると指摘し、特にグローバルファンドは資金規模が大きいので、一般読者にはピンとこない。価値を伝えるためにメディアは想像力を掻き立てる記事を書いていかなければならない、と会場にいたメディア関係者を鼓舞しました。

 

メディアとともに重要なのが著名人を起用した意識啓発です。蓑輪光浩氏(ビル&メリンダ・ゲイツ財団東京オリンピック・プロジェクト・マネジャー)は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、スポーツ庁、ゲイツ財団が立ち上げたOUR GLOBAL GOALSについて解説しました。これはアスリートを起用してSDGsの認知と理解拡大を目指していくプロジェクトで、グローバルファンドの主目的であるエイズ、マラリア、結核についての優先順位は非常に高いとの説明がなされました。ゲイツ財団が昨年末に行ったSDGsの認知度調査によると、25~34歳の都心部に住む男性、そして55歳以上の一般女性がSDGsや社会貢献に対する意欲が高いという結果が出たそうです。前職まではスポーツ・マーケティング業界に身をおいていた蓑輪氏は、近年は、スポーツ選手の背景も多様化しているので、エイズやマラリア、結核の問題について理解してもらい、発信してもらうことを狙っている。「グローバルファンドは、日本の誇りだ。分かりやすい形でストーリーを発信し共感を広げたい」と抱負を述べました。

 

閉会挨拶で、逢沢一郎衆議院議員(グローバルファンド日本委員会共同議長)は、AU議連の会長としてアフリカの国々を訪問する際には、グローバルファンドの資金が各国でどのように生かされているか自分の目で確認しているが、グローバルファンドはその国の人材を育て、キャパシティ構築に貢献していることを実感する、と述べました。日本の総合力が結集したグローバルファンド日本委員会として、15周年という機会に油断することなく、感染症にしっかりと向き合い、終息させる決意で努力するとともに、日本がグローバルファンドを通じて知見や技術、資源を展開していくことを期待したいと総括しました。

 

続くレセプションで挨拶した古川元久衆議院議員(グローバルファンド日本委員会共同議長)は、感染症の越境性に触れ、インバウンドの増加や外国人材の受け入れ拡大は、感染症が流行している国からも多くの人が日本を訪れ感染症が国内に持ち込まれる可能性が高くなることを意味し、グローバルファンドに拠出し感染症対策を進めることは途上国の人々の命を救うだけでなく、結局は日本人自身の健康を守ることにつながると、改めてグローバルファンドに拠出する意義を強調しました。

多くの皆様にご参加いただき、本当にありがとうございました。


 

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