2014世界マラリアデーイベント

  • 2014年4月25日
  • 東京|The Garden Ginza

この記事の掲載日 : 2014年05月14日(水) この記事のカテゴリー : ,


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4月25日の世界マラリアデーに合わせ、マラリア制圧に取り組む他団体との共催で特別イベント「ひとりのチカラ 世界の命 POWER OF ONE」を開催しました。マラリア制圧に取り組んできた専門家やNGOのスタッフ、メディア、BOPビジネスへ関心がある方々など100名以上が、セクターを超えて集まりました。

前半では、研究開発や事業の第一線でマラリア制圧に取り組むスピーカーから、マラリア感染の仕組みや制圧に向けた取り組が紹介されました。休憩を挟んだ後半のステージでは世界初の女性ニャティティ奏者アニャンゴさんが登場。ニャティティを修業中のケニアでマラリアに罹ったご自身の大変な経験をユーモアを交えて話しながら、美しい歌声と共にニャティティを演奏していただきました。


[トーク&ライブ]

anyangoアニャンゴ

ケニアの伝統弦楽器ニャティティにすっかり惚れ込んだ私は、ケニア西部のヴィクトリア湖畔にある電気も水道もない村に単身住み込んでニャティティの修業をすることにした。

ある日、突然、発熱。師匠からは「薬草を飲めば治る」と言われたが、何日も高熱が続く。もしかしたらと思い、灼熱の太陽が照りつける中、一人でふらふらしながら2時間かけて隣町の病院まで歩いていった。

マラリアだった。マラリアには合計4回なった。ケニアで修業していたとき、免疫のない子どもや体力のないお年寄りが何人もマラリアで亡くなっているのを見た。私は幸運にも命をとりとめることができたけれど、今でもアフリカには病院に行かなくても薬草で治せるという考え方が残っているのも事実。万が一マラリアにかかったとしても、ちゃんとした医療にアクセスできる人が少しでも増えるよう音楽を通して訴えていきたい。

 [トーク]

堀井 俊宏

大阪大学微生物病研究所教授堀井 俊宏

ハマダラカによって媒介される熱帯熱マラリアは熱帯・亜熱帯において流行し、サブサハラのアフリカ諸国を中心に年間で4億人の感染者と120万人の犠牲者を出している。多くは5歳以下の児童であり、また、同地域の多くの妊産婦が妊娠マラリアの危険にさらされている現状だ。

マラリアへの感染は、マラリア原虫がヒト体内とハマダラカ体内に寄生するという2段階で成立する。マラリア原虫を保有する蚊にヒトが吸血されると、蚊の唾液腺に存在する感染性のスポロゾイトがヒトの血中に侵入しすぐに肝臓に移行し、スポロゾイトは肝細胞内で急速に分裂しメロゾイとして放出される。その後メロゾイトは人の赤血球に侵入し、赤血球を破壊して血中に放出され、新たな赤血球に侵入する、というサイクルを繰り返していく。

感染者は、赤血球破壊およびメロゾイト放出が刺激となって発熱や悪寒などのマラリアの症状が発現する。また、放出されたメロゾイトの一部は雌雄異株の生殖母体に分化し血中で長期にわたり生存するが、この感染者が再び蚊に吸血されると、生殖母体が蚊の体内に侵入し、その中腸内で雌雄の生殖体に変化し、雌雄で接合体となり、オーキネートからオーシストに分化する。

その中でマラリア原虫細胞は分裂をくり返し、多くのスポロゾイトを形成する。スポロゾイトは唾液腺に移行して成熟し次の感染の機会を待つ。このようなマラリア原虫の生活環を通してマラリアの感染が広がっていく。

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日本にもかつてマラリアは存在しており(三日熱マラリア)、北海道から沖縄まで幅広く見られた。また第二次世界大戦には戦地から引き上げてくる人々がマラリアに感染者が多く、一時は40万人程度の感染者がいたと報告されている。

日本でのマラリア対策の代表として沖縄の八重山・宮古群島の事例があるが、地元民協力のもと中心にDDT散布による蚊の駆除や抗マラリア薬による治療が実施され、日本では1961年にマラリアを撲滅している。しかし、韓国や北朝鮮などではマラリア発生例が確認されており、現在もマラリアの脅威は続いている。

マラリアを予防するためには様々な方法があるが、大阪大学微生物研究所ではマラリアワクチンの開発を目指し数十年に渡って研究を実施してきた。有効なマラリアワクチンは未だにほとんど存在せず、マラリアに対する防御免疫のメカニズムも明らかにされていない。

そこで我々は、赤血球期のマラリア原虫が生産するSERA抗原遺伝子に操作を施し、大腸菌によって発現された組換えSE36蛋白質をワクチン抗原とするBK-SE36マラリアワクチンの臨床試験を日本・ウガンダで実施してきた。具体的には、日本人の健常成人に対する第1相臨床試験(Ia)、ウガンダにおける健常成人および児童を対象にした第1相臨床試験(Ib)を実施済である。

ウガンダでの臨床試験実施の際のインフォームドコンセント風景

ウガンダでの臨床試験実施の際のインフォームドコンセント風景

結果的には、BK-SE36マラリアワクチンはウガンダの6-20歳児において極めて有望なマラリア発症防御効果72%を示した。WHO指定の接種対象者である0-5歳の乳幼児では、より高い防御効果(80%)が予測される。さらに、日本人等流行地への渡航者にも高い防御効果(90%)が予測されている。

今後はより大きな規模で、第2相臨床試験を行う予定である。米国・英国等によるマラリアワクチン開発が難航する中、BK-SE36は日本発の新たなワクチン候補として期待されている。

 

水野 達男

Malaria No More Japan専務理事水野 達男

予防も治療も可能な病気であるマラリアは、その予防と治療のため、今、世界各地で取り組みが進んでいる。国際社会の取り組みの成果は著しいものがあり、世界全体でマラリア死亡率は、ここ12年間で42%低下したと報告されている。しかし、まだまだ現地での実施が足りていないことを、前職住友化学での長期残効型防虫蚊帳「オリセット」配布の現場経験から実感した。現在は、その現状を広く市民に伝え協力を仰ぐため、NPO法人の立場で、マラリア制圧のための国内外での支援事業や普及啓発事業を実施している。

マラリア制圧のために「私たちにできること」を紹介したい。まず、「POWER OF ONE (R)」キャンペーン。本キャンペーンは、弊米国本部がマラリア治療薬メーカーNovartisなどのパートナー協力のもと2013年秋より始めた企画である。ワンコイン(1ル/約100円)を寄付すると、マラリア初期治療のための簡易診断テスト・抗マラリア薬キットを一人の子どもに届けることができる。日本でも、Malaria No More Japan独自のキャンペーンサイトを通じて、アフリカの子どもたちへキットを届ける。

 

水野氏は自身のプレゼンテーションのあと、Malaria No More Japanが4月25日の世界マラリアデーを記念して創設したマラリア制圧のために取り組む個人、団体を表彰する「ゼロマラリア賞」の第1回受賞団体として、公益社団法人日本青年会議所に賞を贈りました。

これは国際青年会議所による蚊帳をアフリカの子どもに送るキャンペーン「Nothing But Nets」への長年の募金協力を、Malaria No More Japanが高く評価したものです。

 

閉会挨拶として国内外の連携の重要性を述べる黒川清(日本医療政策機構代表理事)

閉会挨拶として国内外の連携の重要性を述べる黒川清(日本医療政策機構代表理事)

進行を務める伊藤聡子(日本国際交流センター執行理事・世界基金支援日本委員会事務局長)

司会進行:日本国際交流センター執行理事(世界基金支援日本委員会事務局長)伊藤聡子

登壇者プロフィール

堀井 俊宏

大阪大学微生物病研究所教授

1953年生。1976年大阪大学理学部卒業、1980年同助手。1984より1986年米国ダートマス大医学部准教授。1991年大阪大学微生物病研究所助教授、1999年より同教授。2005年より同附属難治感染症対策研究センター長及び感染症国際研究センター長併任。GHIT Fundからの助成を受け、マラリアワクチンの研究開発を行う。

 

水野 達男

マラリア・ノーモア・ジャパン専務理事 (元住友化学ベクターコントロール事業部長)

北海道大学卒業後、22年間の米国外資勤務、1999年に住友化学入社。2007年からはアフリカにおける、マラリア予防蚊帳の製造・販売・研究拠点をタンザニアに設立、現地JVの役員を務める。2012年11月から現職。マラリア撲滅に向けた啓発・政策提言活動、アフリカ進出企業支援も進めている。

 

アニャンゴ

東京生まれ。アフリカの音楽に魅了され、単身ケニア奥地の村で修業し、現地でも限られた男性だけに演奏が許されているニャティティの世界初の女性奏者となる。日本国内だけでなく、アフリカ、ヨーロッパなどでも広く演奏活動を行っている。2010年8月、FUJIROCKに出演。2011年11月、テレビ朝日「徹子の部屋」出演。2013年10月、4枚目となる『ALEGO〜ニャティティの故郷』をリリース。12月、『翼はニャティティ舞台は地球』(学芸みらい社)を出版。Anyangoとはルオ語で、「午前中に生まれた女の子」という意味。日本ケニア文化親善大使として、日本全国各地の小・中学校で公演も行っている。

http://anyango.com/

 

イベント概要

詳細はこちら

【日時】2014年4月25日[金] 19:00‐21:00(開場18:30)
【場所】The GARDEN Ginza(東京都中央区)
【主催】一般社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、特定非営利活動法人日本医療政策機構(HGPI)、公益財団法人日本国際交流センター(JCIE)/世界基金支援日本委員会(FGFJ)、特定非営利活動法人Malaria No More Japan(MNMJ)
【協力】政策研究大学院大学グローバルヘルス・イノベーション政策プログラム、公益社団法人日本青年会議所
【POWER OF ONEキャンペーンへの参加】同イベントは、Malaria No More Japanが米国本部と共に進めるアフリカの子どもたちへマラリア初期治療のための簡易診断テスト・抗マラリア薬キットを届けるキャンペーンに賛同、参加費3000円のうち500円が同キャンペーンへ寄付されました。

 

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