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グローバルヘルス・サミット:G20首脳 ACTアクセラレーターを通じた世界のコロナ対策支援を再確認

2021年5月26日
グローバルヘルス・サミット:G20首脳 ACTアクセラレーターを通じた世界のコロナ対策支援を再確認

5月21日、G20議長国イタリアとEUの共催で、グローバルヘルス・サミットが開催されました。G20を初めとする各国の首脳および関係国際機関の代表がオンラインで一堂に会し、国際協調に基づく新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)との闘いを誓い、ローマ宣言を採択しました。高所得国でワクチン接種が進み、低・中所得国との格差がより顕著となり公平性が問われる中、各国や経済界からはワクチンの寄贈やACTアクセラレーターへの資金貢献が表明されました。

国際機関のトップの一人として登壇したグローバルファンドのピーター・サンズ事務局長の発言の要点、およびACTアクセラレーターの資金調達状況と各国に求められている「公平な分担」は以下の通りです。

グローバルファンド サンズ事務局長のメッセ―ジ

●新型コロナはエイズ、結核、マラリア、母子保健などに甚大な影響を与えており、低所得国ではこうした間接的影響が新型コロナを直接の原因とする死亡数を上回る可能性がある。新型コロナを収束させるにはワクチン、検査、治療薬、酸素、個人防護具などすべての医療ツールが低・中所得国にも行き渡るよう公平なアクセスを促進しなければならない。もし、12か月前の段階でACTアクセラレーターに十分な資金が投入されていたら、間違いなく今よりも良い状況になっていただろう。同様に、今必要とされる額の資金を投入しないと、12か月後に再び後悔することになる。

●グローバルファンドは、(1990年代後半に発生し今でも続く)パンデミックであるエイズに対応するために、20年前に設立された国際ファイナンス機関である。グローバルファンドの設立は、国際社会が一丸となってパンデミックに対応するメカニズムを作ったというポジティブな記憶を呼び覚ます一方、その後の経過は、逆の側面も示している。すなわち、高所得国で感染危機が去り、自分たちは安全だと感じると一気に熱が冷め、科学技術の関心は薄れ、財政支援も低下し、そして感染症との闘いはきっちりと終わらない。エイズ、結核、マラリアに見られるように未解決の(residual) パンデミックとして残り続ける。新型コロナでこのようなことが繰り返されてはならない。道義的にも、疫学的にも許されない。『皆が安全になるまで、誰も安全ではない』というのは単なるスローガンではなく、疫学的な事実である。

●グローバルファンドはACTアクセラレーターの創設メンバーとして、エイズ、結核、マラリアという既存のパンデミックに対応してきた経験、システム、能力をフルに活用している。新しいパンデミックと古いパンデミックを二項対立で論じるのは間違っている。両者を区別するのは(低・中所得国の)現実に即しておらず、また費用対効果も低い。従来からある既存のパンデミックに対応することは新型コロナに対応することになり、今新型コロナに対応することは将来起きるパンデミックへの備えの土台にもなる。まだ克服していない従来からのパンデミックと新たに直面しているパンデミックに対応し、そして将来のパンデミックに備えるためには、保健システムをより強く、より回復力があり、より包摂的で、より成果を重視し、コミュニティの人々を中心としたものにする必要がある。(以上抜粋・抄訳)

ACTアクセラレーターへの拠出の公平な分担について

ACTアクセラレーターが必要とする資金332億ドル(3.6兆円)(昨年9月発表の381億ドルから調整後の額)のうち、5月18日現在、146億ドルがG7をはじめとする各国から拠出誓約されていますが、依然として185億ドルの資金が不足しています(注1)

グローバルヘルス・サミット終了後、ACTアクセラレーターが各国に求める拠出額を規定したフェアシェア・モデル(注2) がWHOのウェブサイト上で公開されました。フェアシェア・モデルは、ACTアクセラレーターを構成する各組織が、国際公共財であるワクチン、検査、治療、防護具などの医療ツールの開発を加速化し、公平なアクセスを実現するための資金を確実に調達するための枠組みで、公平で透明性のある算出方法で分担額を決め、共同で責任を分かち合っていこうとするものです。ACT-A運営理事会の議長である南アフリカとノルウェーの主導のもとに算出されました。

両議長国は本年3月に、世界の約90か国の政府に対して公式書簡を発出し、このフェアシェア・モデルに基づき応分の負担を各国に要請しました。以下は、そのうち最も多くを占めるG7国に求められている分担額と、5月11日現在の誓約額および達成率です。日本には24億ドルの拠出が期待されています。

ACTアクセラレーターに対するG7各国のフェアシェア(公平な分担額)および
これまでの拠出誓約額・達成率(2021年5月11日現在)

出典:WHO How to fairly share the financing of the ACT-A – framework
(2021年5月21日版、5月25日アクセス)よりG7国を抜粋

注釈

  1. ACT-A Funding Tracker (2020年5月22日アクセス)
  2. フェアシェア(公平な分担額)の算出は、IMF出資割当額の算出方式やGDPなどに基づく。分担額は一定の範囲が定められ、上記表(a) はmid point(中間の値)。範囲を示した額は公開されていない。詳細はHow to fairly share the financing of the ACT-A – framework参照。
  3. 5月12日開催のグローバルヘルスサミットにて、フランスは5億ユーロ(約6.12億ドル)、イタリアは3億ユーロ(約3.67億ドル)、スイスは3億スイスフラン(約3.35億ドル)を誓約済み(支払い時期や配分部門は未定)。上記表は5月11日現在データのため、フランス、イタリアの誓約は含まれていない。

参考


ACTアクセラレーターとは

ACTアクセラレーター(Access to COVID-19 Tools (ACT) Accelerator)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を収束させる上で決め手となる検査、治療、ワクチンの3つの医療ツールの開発、生産を加速化し、低・中所得国への公平なアクセスを実現させるため国際協働の枠組み。G20の提唱に基づき、各国政府と世界保健機関(WHO)を初めとする国際機関や民間財団によって2020年4月に立ち上げられた。グローバルファンドは、検査部門、保健システム部門で主管組織を務める。

 

日本国際交流センターではACTアクセラレーターの動きをモニターする「ACT-A WATCH」を発行しています。あわせてご参照ください。

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