グローバルファンド日本委員会(FGFJ)は、10月16日、第42回議員タスクフォース・第33回アドバイザリー・ボード合同会合を開催しました。
会合では、エチオピアを訪問した国会議員による現地視察報告、モザンビークにおけるマラリア対策の取り組み、第8次増資における日本の拠出状況等について報告が行われました。また、第8次増資に際して日本政府が活用を検討している「セットアサイド」について、他ドナーの事例や日本としての戦略的な活用のあり方をめぐり、活発な意見交換が行われました。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン主催で8月にエチオピアを視察した加藤勝信議員、とかしきなおみ議員、尾身朝子議員から、視察報告が行われました。
視察では、ヘルスポスト、ヘルスセンター、総合病院など、地域の保健サービスを支えるさまざまな医療施設を訪問。グローバルファンドの支援によって、医薬品や医療機器が実際に現地の医療現場に届けられ、患者の治療に活用されている状況を確認しました。
報告では、医療施設や医薬品といったハード面の整備に加え、地域住民に予防接種の重要性を伝え、医療サービスへのアクセスを促す地域保健人材の役割が強調されました。特に、遊牧民など移動の多い人々に対しては、患者が医療施設を訪れるのを待つのではなく、医療従事者が地域に出向いてサービスを届ける仕組みが重要であることが紹介されました。
また、現地では、富士フイルムのポータブルX線機器や大塚製薬の抗結核薬デラマニド、塩野義製薬の抗レトロウイルス薬ドルテグラビルなど、日本企業の製品が実際に活用されていることも確認されました。グローバルファンドの調達・支援の仕組みを通じて日本の技術や製品が現地に届いていることへの評価とともに、人材育成や技術移転など、継続的な保健システム強化への日本の貢献に対する期待が示されました。
視察報告を通じて、国際的な支援環境が厳しさを増す中でも、現地のニーズに応え、一人ひとりの命を守るための支援を継続する重要性が改めて共有されました。
あべ俊子議員から、モザンビークにおけるマラリア対策に関する視察報告が行われました。
視察では、ドローンやAIを活用し、蚊の発生リスクが高い地域を特定した上で、細菌を用いた蚊の駆除につなげる新たな取り組みなどが紹介されました。
また、限られた資金の中でマラリア対策の成果を最大化することの重要性についても報告がありました。
外務省の喜多洋輔国際保健戦略官から、第8次増資における日本政府の拠出状況について説明がありました。
日本政府は2025年11月、グローバルファンドの第8次増資に対し、今後3年間で最大810億円の拠出を表明しています。2025年度補正予算では外務省・厚生労働省からそれぞれ162億円、計324億円、2026年度当初予算ではそれぞれ54億円、計108億円を拠出する予定であり、2027年度以降の具体的な拠出額については、財政当局と調整を進めるとの報告がありました。
セットアサイドの活用に向けて:日本の強みを生かした戦略的な支援とは
会合後半では、第8次増資に際して日本政府が活用を検討している「セットアサイド」について、仕組みや各国の活用事例を踏まえ、今後の日本の取り組みのあり方について議論が行われました。
セットアサイドとは、ドナー国がグローバルファンドへの誓約額の一部を二国間支援に充て、グローバルファンドの活動を補完する仕組みです。グローバルファンドの支援と連携しながら、ドナー国の技術や知見を生かした取り組みを進めることができます。
グローバルファンド日本委員会ディレクターの伊藤聡子から、フランスや米国などの活用事例を紹介し、日本での制度設計に向けた5つの論点を提示しました。
- 資金規模:セットアサイドに充てる資金の規模はどの程度か。
- 具体的な実施計画:どの国・地域、どの分野を対象とし、誰が実施するのか。2027年~2029年の実施スケジュール。
- 日本の強みの活用:日本が持つ技術・知見など、日本ならではの強みをどう生かすか。UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)を主導する日本にふさわしい取り組みにできるか。
- グローバルファンド支援との連携・現地ニーズへの対応:グローバルファンドの既存の支援との重複を避け、現地のニーズに応えながら相乗効果をどう高めるか。対象国のニーズや優先課題にどのように応えるか。
- 透明性・説明責任:資金の使途や成果をどのように把握・評価するか。未使用資金が生じた場合、コア・ファンドへの拠出に繰り入れられるか。
続いて、外務省の喜多戦略官からは、日本政府として、三大感染症対策や保健システム強化など、グローバルファンドが支援する活動に資する二国間支援への活用を検討しているとの説明がありました。具体的な案件については、外務省内の関係部局やJICA、グローバルファンドなどとの調整を進めている段階であり、現地のニーズや国別調整メカニズム(CCM)との整合性を確保することが重要だと述べました。
意見交換では、日本がどの地域・分野に重点を置き、どのような技術や人材を生かしていくのか、戦略的な設計の必要性が指摘されました。特に、アジア太平洋地域におけるマラリアやHIV/エイズ対策、薬剤耐性結核への対応、診断技術やデジタル技術の活用、人材育成など、日本が強みを発揮できる分野について具体的な提案がありました。
一方、セットアサイドの活用によってグローバルファンド本体への拠出が減少することへの懸念や、二国間支援として実施する際の調整・行政上の負担、実施体制の確保といった課題も指摘されました。市民社会からは、グローバルファンドとの信頼関係や多国間支援の重要性を維持しながら、現地の優先課題や脆弱なコミュニティへの支援につながる仕組みとする必要性が強調されました。
こうした議論を通じて、セットアサイドを活用する場合には、単に日本の技術や製品を海外に展開するだけでなく、現地のニーズを起点に、グローバルファンドの支援との相乗効果を生み出すことが不可欠であるとの認識が共有されました。
閉会にあたり、古川元久衆議院議員(グローバルファンド日本委員会共同議長)から、感染症対策は引き続き重要な課題であり、外務省・厚生労働省と議員タスクフォース、アドバイザリー・ボードが連携しながら取り組みを進めていくことへの期待が述べられました。
国際的な保健支援を取り巻く環境が大きく変化する中、日本がこれまで培ってきた国際社会との信頼関係や技術、人材などの強みを生かし、グローバルファンドを通じた多国間支援と二国間協力の双方を通じて、三大感染症対策と保健システム強化への貢献を継続していくことの重要性が改めて確認されました。









