20年以上にわたる進展を経て、エイズのない未来が手の届くところまで来ています。コミュニティ、政府、市民社会、民間セクター、そしてグローバルヘルスのパートナーたちの努力により、HIV/エイズとの闘いは目覚ましい進歩を遂げました。2002年から2024年の間に、グローバルファンドが支援する国々では、エイズ関連死亡率が82%減少し、HIV新規感染率も73%減少しています。
しかし、私たちはいま、岐路に立っています。国際的な援助資金の減少や気候変動や紛争などの複合的な危機が、これまでの成果を脅かしています。予防、検査、治療プログラムの中断は、HIV/エイズが再び急速に広がる条件を生み出し、成果を後退させ、感染や死亡を増加させる恐れがあります。流行の再燃が起きれば、地域社会や経済に深刻な影響を与え、世界の健康安全保障や、各国が自国の保健プログラムを自立的に管理・資金調達する能力をも脅かします。
エイズのない未来――それは各国政府、市民社会、民間セクターの継続的なリーダーシップ、投資、最新のイノベーションの最大活用、そしてエイズを終わらせ、すべての人により健康な未来を築くという共通のコミットメントにかかっています。
グローバルファンドは、国際的なHIV/エイズプログラム資金の26%を提供し世界のHIV対応を支え続けています。
| State of the Fight:2024年度グローバルファンド支援国での成果|
2560万人:抗レトロウイルス治療を受けたHIV陽性者数
4660万件:HIV検査実施数(うち1170万人はキーポピュレーション)
1230万人:HIV感染予防サービスを受けた人数(うち770万人はキーポピュレーション)
*グローバルファンド2025年度版成果報告書:グローバルファンド日本委員会による解説ページはこちらから
現在、より多くの国がUNAIDSの95-95-95目標を達成、または達成に近づいており、これまでに世界で4,400万人以上の命を奪ってきたパンデミックの終息というゴールも視野に入ってきました。
一方で、過去20年間に大きな進歩があったものの、HIV/エイズはいまなお世界の健康安全保障に対する重大な脅威であり、2024年には世界で63万人がエイズ関連の原因で死亡し、130万人が新たに感染しました。保健資金の減少、経済情勢、紛争といった複合的な危機によって、この20年の成果が脅かされています。
こうした混乱を乗り越え、エイズ終息に向けたこれまでの成果を守るためには、持続的な投資、新たなコミットメント、そしてエイズ終息を加速できるイノベーションを迅速に展開する必要があります。キーポピュレーション(最もリスクの高い人々)へ長時間作用型のHIV予防ツールを拡大していくことで、新規感染を劇的に減らし、終息へと進む道筋がより鮮明になります。
急速に変化するグローバルヘルスを取り巻く環境に、私たちは適応する努力をし続けなければなりません。各国が国主体かつ国内資金による保健システムへ移行を加速できるように、思い切った変革が求められています。公衆衛生上の脅威としてのエイズを終息させることは、数百万の命を救い、世界の健康安全保障を強化し、地域社会や経済を活性化することにつながります。
|「U=U」が照らす未来へ:日本の場合|
毎年12月1日は、HIV/エイズについて世界がともに考える「世界エイズデー」です。
2025年のテーマは「U=U(Undetectable:検出されない) = (Untransmittable性感染しない)」。
“治療で一定期間以上、血液中のウイルス量が検出限界以下に抑えられているHIV陽性者からは、性行為によって他者へ感染させることはない” ことが科学的に証明されています。
選択肢が広がり、人生の見通しを変え、日々の生活に安心をもたらします。
|「U=U」がもたらすのは、医学的事実だけではない ── HIV/エイズのコミュニティから|
世界エイズデーに先立ち、HIV/エイズ対策に関わる方々と座談会の場を設け、まさに多角的な視点でHIV/エイズについて語り合いました。
治療による安心や日常生活でのリアリティに耳を傾けることは、公衆衛生の前進にもつながります。U=Uにまつわる大事なことを今日、多くの方に知ってほしいと思います。
*座談会の模様は後日公開いたします。
「U=Uの前に、大事なのは日常生活している上で感染を起こすものではない、ということ。これが大前提です」
「例えば抗HIV薬を使って、感染してない人は抗HIV薬を使って予防する方法もあったりしますけど、やっぱり検査を受けて陰性を確認してからでないとならない。治療も予防も、自分が選びたい方法を自分にとっていい形でスタートさせるためには、検査がやっぱりスタートラインなんだよっていうことを、そのメリットをもっといろんな人が知ってほしいし、そのためにメッセージを発信しています」
「U=UをはじめとするHIV陽性者のリアリティっていうのが、ちゃんと伝わることが、実は結果的に公衆衛生対策につながっていく」
岩橋 恒太 氏 特定非営利活動法人 akta 理事長
「治療していれば相手にうつさないってわかることで、日常生活の中でも“うつさないんだ”って思える。その実感が、内なるスティグマをも変えて、生活そのものが大きく変わるんです。それを自覚することで治療成績もよくなると言われています」
田沼 順子 氏 医師/国際医療福祉大学医学部教授
「治療していれば他の人に性感染しない、という事実だけでなく、陽性者の方たちが“私たちはHIVの感染源ではないんだ”という意味を持っていること、これはもっと多くの人が知ってほしいと思います」
笹井 明日香 氏 ヴィーブヘルスケア株式会社 エクスターナル・アフェアーズ ヘッド
特定非営利活動法人aktaが運営するHIV/エイズの総合情報サイト:HIVマップ
|エイズのない未来へ向けて──世界と日本のメッセージが重なるところ|
世界各地で積み重ねられてきたHIV/エイズ対策の進歩、コミュニティが育んできた知見と経験、そして未来への希望と変革への意志。これらが重なり合うことで、「エイズのない世界」という長年の目標は、より確かな現実味を帯びています。
世界エイズデーは、歩んできた軌跡を振り返るだけでなく、私たち一人ひとりがこの先の行動を選び取る日でもあります。検査、治療、予防へのアクセスを広げること。偏見やスティグマを減らすなくすこと。安心できる社会をつくること。コミュニティの声をシステムにも日常にも確実に届けること。そのどれもが、公衆衛生上の脅威としてのエイズを終息させるための確かな一歩です。
いま私たちは岐路に立ち、何を選び、どんな未来をともに築いていくのか。世界エイズデーを、未来への責任を共有する機会としていきたいと思います。
#世界エイズデー #WorldAIDSDay






