サンズ事務局長ステートメントを発表 結核終息に向けた機運が高まる今、果敢に立ち向かうべき
10月29日に世界結核報告書2024が公表されたことを受け、グローバルファンドのピーター・サンズ事務局長がステートメントを発表しました。サンズ事務局長は、気候変動や紛争など複合的危機に直面しているが、結核の終息に向かってかつてないほど機運が高まっている今、歩みを止めず果敢に立ち向かうべきだと訴えています。
If We Act Decisively, We Can End TB
29 October 2024
Peter Sands, Executive Director, The Global Fund
日本語仮訳
果敢に立ち向かえば、結核は終息できる
2024年 10 月 29 日
ピーター・サンズ 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)事務局長
今年の世界結核報告書から得られる大きなメッセージは、結核に果敢に立ち向かえば、終息できるということです。私たちにはその機運の高まりがあり、手段があり、リーダーシップもありますが、より多くの資金が必要です。また、人々が必要とする保健医療サービスにアクセスすることを妨げる人権やジェンダー関連の障壁を撤廃する必要もあります。結核の終息には、政治的な意志と持続的な取り組みが必要です。
新型コロナウイルス感染症による死亡者数が減少する中、結核は再び感染症の中で最大の死因となっています。人類を苦しめてきた最古のパンデミックであり、貧困層のパンデミックでもある結核は手ごわいですが、打倒する方法がわかっている敵でもあります。
紛争や気候変動による課題が増加する世界において、私たちは躊躇しているわけにはいきません。爆撃時に人々がシェルターに避難したり、難民キャンプに押し寄せたり、干ばつや洪水で農業を営めなくなり土地を離れたりする際に、結核は蔓延します。苦しみ、栄養状態が悪く、強いストレスを感じている人は結核に感染しやすくなります。最も貧しく社会的に疎外されたコミュニティが複合的危機に同時に直面する状況下では、結核の負担を取り除く緊要性はさらに高まります。
例えば、ウクライナは、ヨーロッパの中で結核罹患率(薬剤耐性結核を含む)が最も高い国の一つでしたが、戦争によりその脅威はさらに増幅しました。しかし、グローバルファンドの現地パートナーによる勇敢な活動が大きな変化をもたらしています。紛争地域でもモバイルクリニック(移動式診療車)を配備し、継続的なスクリーニング、検査、治療を実施しているのです。
多くの実施パートナーは、複合的危機や困難な課題に直面してはいますが、結核との闘いはかつてないほど機運が高まっています。新型コロナウイルス感染症の影響で停滞していた保健医療サービスは回復し、多くの国で診断や治療を受ける人の数が過去最高を記録しています。私たちはこの成功からインスピレーションを得て、さらに取り組みを強化せねばなりません。人工知能(AI)といったイノベーションは、私たちの進歩を加速させるのに役立ちます。昨年、グローバルファンドは、AIを活用して「見落とされていた」患者をより迅速かつ体系的に発見するべく、シーメンス・ヘルシニアーズと提携しました。新技術の利用を拡大し、クリエイティブな連携を行うことで、結核終息に向けた軌道をさらに加速させることができます。
去年、結核との闘いは、大きな勢いをもたらしました。多くの国では、コロナの影響による後退から回復しました。この報告書が示すように、2023年には結核患者の届出数が過去最高を記録しました。結核および多剤耐性結核の治療へのアクセスは増加しています。世界的に結核による死亡者数は再び減少しており、(パンデミックによる)結核罹患率の上昇は鈍化し、安定し始めています。結核が最も蔓延している国の多くは、この恐ろしい病気に打ち勝とうとする、かつてないほどの強い決意が見られます。
しかし、結核は依然として大きな世界的課題です。2024年には、コロナによる死亡者数が減少する中、結核は再び感染症による死因の第一位に舞い戻る可能性が高いです。結核は依然として、世界の死亡原因のトップ10に入っています。
結核の予防、診断、治療における新たな進歩と、この闘いの鍵となるツールの大幅な価格引き下げにより、私たちはこの勢いに乗らなければなりません。私たちはこの病気との闘いに、より積極的に投資しなければなりません。そして何よりも、人々をこの感染症にかかりやすくし、必要とする治療を享受することを妨げる根深い社会的不公平に取り組まなければなりません。それが、結核を公衆衛生上の脅威として終わらせるための最も確実な方法です。
(グローバルファンド日本委員会による仮訳。英文を正文とする)
結核とは(グローバルファンド日本委員会)
結核の最新情報(英文、グローバルファンドウェブサイト)