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次のパンデミックに備える”意外な”最善策:サンズ事務局長とビャニマUNAIDS事務局長による共同寄稿

2022年12月1日
次のパンデミックに備える”意外な”最善策:サンズ事務局長とビャニマUNAIDS事務局長による共同寄稿
左)ウイニー・ビャニマUNAIDS事務局長 右)ピーター・サンズグローバルファンド事務局長

世界エイズデーに際し、グローバルファンドのピーター・サンズ事務局長と国連合同エイズ計画(UNAIDS)のウィニー・ビャニマ事務局長による共著の寄稿が発表されました。既存のパンデミックとの闘いを終わらせることと、次のパンデミックに備えることを両立させるべきであると説いています。

The Best Way to Prepare for the Next Pandemic Is Not What You Think
By Peter Sands and Winnie Byanyima

2022.12.1


日本語仮訳

次のパンデミックに備える“意外な”最善策

世界エイズ・結核・マラリア対策基金 事務局長ピーター・サンズ
国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長ウィニー・ビャニマ

エイズとの闘いは新たな推進力を必要としています。新型コロナウイルスが登場した時に危惧されたとおり、コロナ禍はエイズ対策の進歩に壊滅的な影響を及ぼしています。しかしそれ以前から、HIVの新規感染とエイズによる死亡の減少は進捗が遅れていたので、今や、目標達成への軌道を大きく外れてしまっています。

国内および国家間の著しい不平等が、エイズの流行に拍車をかけ続けています。根深い人権侵害と強いジェンダーの不平等が、2030年までに「公衆衛生の脅威としてのエイズの流行を収束させる」という目標に向けた前進を妨げています。2021年の150万人の新規感染のほとんどは、最も社会的に疎外され、弱い立場の人々の間で起こっています。2021年に救命のための抗レトロウイルス治療を受けることができたHIV陽性者が2870万人に上ったという数字は記録的ですが、世界には治療を受けていないHIV陽性者がまだ1000万人近くいることは憂慮すべきことです。

世界エイズデーに際して、危険にさらされているすべての人々、特に最も取り残されたコミュニティにエイズ対策を拡大することを決意しなければなりません。例えば、HIVに感染している子どもたちのうち、必要な救命治療を受けているのはわずか半数です。しかし、予防方法がわかっているにもかかわらず、非常に多くのの子どもがHIVに母子感染して生まれている事実はもっと受け入れがたいことです。

同様に不公平なのは、思春期の少女や若い女性のHIV感染リスクの状況です。2分に1人の割合で、若い女性がHIVに感染しているのです。HIVが初めて出現してから40年が経ちますが、エイズは依然として生殖年齢にある女性の主な死因となっています。これは、世界の健康におけるジェンダーの不公平を深く憂慮させる指標となっています。

私たちは、最も必要とする人々に届けるべきツール(効果的な予防と治療サービス)が何であるかわかっています。しかし、あまりにも多くの人々がそのツールへのアクセスを拒否されたり、最適とは言えないサービスを受けているのです。効果が低く、副作用のある古い抗レトロウイルス薬を投与されている子どもたちが大勢いることを考えてみてください。治療を継続するためのサポートが弱いことも相まって、ウイルスの抑制効果は低くなっています。治療範囲の拡大と同時に、子どもたちを、ドルテグラビルをベースとした最新の抗レトロウイルス薬レジメンに移行させることを急がなければなりません。この製剤は、より効果的で安価、かつ子どもたちの忍容性も高いものです。

危険にさらされているすべての人が最高の医療ツールとアプローチにアクセスできるようにすることに加え、HIVに感染した人々の脆弱性を悪化させる人権の壁、ジェンダーの不平等、その他の不公平に対して、さらに断固とした姿勢で取り組まなければなりません。
HIV/エイズとの闘いが、単に特定のウイルスを撲滅するための努力ではなく、常に大きな意味を持つのは、この権利と平等という極めて重要な側面があるからなのです。HIVは不公平によって悪循環が繰り返されてきたため、HIVを打ち負かすことは、世界をより良く、より包括的にすることを意味します。

その意味で、HIVとの闘いは、新型コロナウイルスを含む今直面している感染症や、将来出現するであろう感染症など、他のすべての感染症を打ち負かすことを考えるきっかけを与え、行動をおこすためのプラットフォームでもあるのです。コロナの大流行が急性の緊急事態から、手ごわい病原体との長期的な闘いに発展するにつれ、40年にわたるエイズとの闘いから学ぶべき多くの教訓があります。特に、こうした大流行は通常、経済的に豊かな社会では脅威が薄れた後も、貧しい社会ではその後もずっと死と混乱を引き起こし続けるという事実です。

このような闘いを終わらせることができなければ、何百万人もの命が失われることはもちろん、パンデミック対策で繰り返し生じている「パニックと放置」を助長することにもなります。パンデミックが猛威を振るっている間は、次のパンデミックを防ぐことが政治的な緊急課題として注目されます。しかし、差し迫った脅威が減るとすぐに忘れられ、次のパンデミックに備え投資する機運は急速に失われてしまいます。

答えは、既存のパンデミックとの闘いを終わらせることと、次のパンデミックに備えることを両立させることにあります。特に、新しい感染症の脅威のほとんどは、まったく新しいものではなく、既存の疾病に由来しているため、病原体と闘う科学に投資することは、既存の病原体と潜在的な病原体の両方と闘うために有効であるということです。例えば、新型コロナウイルス感染症はSARSやMERSの時に予兆されていたようにです。

このようなアプローチをとることで、現在多くの死者を出している大規模な感染症(エイズ、結核、マラリア、新型コロナなど)と、今後必ず発生するであろう感染症から、すべての人を守ることができるのです。

紛争や気候変動が感染症による脅威を悪化させている世界において、今スピードを落とすわけにはいきません。私たちは、最も致命的な感染症に打ち勝ち、強靭で持続可能な保健システムを構築し、誰一人取り残さないために、より強く、より賢く努力を重ねなければなりません。
そうすることで、真のユニバーサル・ヘルス・カバレッジの夢を実現し、「持続可能な開発目標」の約束を果たすことができるのです。HIV/エイズとの闘いは、この努力の心臓部なのです。

(日本国際交流センター/グローバルファンド日本委員会による仮訳)


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