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カベルカ議長の寄稿が毎日新聞英字版に掲載されました

2019年8月28日
カベルカ議長の寄稿が毎日新聞英字版に掲載されました

これまで6回のTICADに出席した経験を持つグローバルファンド理事会議長のドナルド・カベルカ氏(前アフリカ開発銀行総裁)の寄稿が毎日新聞英字版に掲載されました。開発プロセスにおけるアフリカのオーナーシップを醸成するTICADは、持続可能な開発目標(SDGs)達成の方法を示す偉大な例の一つである、と述べています。

Commentary: TICAD is a great path to sustainable global prosperity
by Mainichi Japan)

英文全文はこちらから、また、全文の和文仮訳は以下でご覧いただけます。

 

仮訳

TICADは持続可能な世界の繁栄に向けた素晴らしい道筋である

ドナルド・カベルカ (グローバルファンド理事会議長)

 

過去25年間で7回目の機会として、アフリカと日本の指導者たちはアフリカ、日本、そして世界の共通の繁栄と未来への前進を計画するために今月、再び集います。アフリカ開発会議(TICAD)を通して、この8月、我々は再び集い、今日の相互に関連した世界において、地球上で最も小さな国の運命が、最も大きな国の運命と複雑に関連しているということを強調し、多国間主義を支援するでしょう。国際的パートナーシップに基づき、開発プロセスにおけるアフリカのオーナーシップを醸成するTICADは、持続可能な開発目標(SDGs)達成の方法を示す偉大な例の一つとなっています。

私はこれまで6回のTICADに参加してきました。それらはどれもユニークでしたが、2016年の会合は、特に祝う価値のあるものでした。TICADが初めてアフリカの地、ナイロビで開催されたのです。その後、TICADは3年ごとに日本とアフリカの間で交互に行われます。この交互開催は、我々が打ち立てなくてはならない未来の象徴です。その未来は、我々が世界のどこにいようが、お互いの運命は複雑につながっているという事実をはっきりと示しています。それはSDGs時代において、強く求められているパラダイムシフトなのです。

歴史学者たちは、SDGsの開始を歴史の転換点と認識することになるでしょう。つまり、2015年は、共通の繁栄という概念が世界の発展のための基本的な方法となった重大な瞬間として記憶されるでしょう。こうしたSDGsの精神に導かれて、東と西、北と南、富める者と貧しい者、知識を伝える者と受け取る者の伝統的な二分法を打ち壊すために、我々は自分たちが持つ資源と活力を投資しなくてはなりません。TICADとその他の多国間イニシアティブを通して、我々は、誰ひとり取り残さない包括的で持続可能な開発の枠組みを打ち立て続けなくてはなりません。それは、アフリカの変容を前進させるとともに、世界中の繁栄も育む枠組みなのです。

このためには、人的資本への投資が不可欠です。SDGsの時代においては、世界のどこかで教育や健康の面で取り残された人がいれば、他の人たちにとっても懸念となるべきです。その理由はまず、これら二つの問題は人権問題であり、また、世界中の人々の優れた健康は、世界の健康安全保障をもたらし、優れた教育が世界の繁栄を構築するからです。女性の健康における進展、幼児の死亡率の削減、予防接種の増加は、より強く、安定した社会につながります。安定した社会は世界の成長の原動力であり、それがアフリカの開発にもつながります。

多くのアフリカ諸国とアジアの一部の国では、今後数十年間、人口の増加が続きます。これらの地域では、継続する人口増加は、ポジティブな「人口増加の配当」またはネガティブな「人口増加の災害」をもたらす可能性があります。これはグローバルヘルスを含む開発のポートフォリオ全体にあてはまります。

エイズを例にとると、HIVは思春期の女子と若年女性に偏って広がっていることがデータから明らかになっています。サハラ以南のアフリカでは、毎年新たにHIVに感染する人の5人のうち1人は、人口のわずか10%でしかない思春期の女子と若年女性(15歳~24歳)です。この感染症の流行を終結させるためには、この集団でのHIV感染を減らすための緊急対策が極めて重要です。アフリカで、このような高いHIV感染率と若者の人口増加が続いた場合、2030年までにHIVを終結させることはできません。しかし、この若者の集団および、そのほかの社会的弱者が直面する課題への対策に対して、精力的かつ革新的に投資すれば、感染症としてのHIVを永遠に終結させることができます。うまく行った場合、世界のHIVの流行を終わらせるための大きな一歩を踏み出す絶好の機会となりえます。失敗した場合、私たち全員が大きな代償を払うことになるでしょう。

長年にわたってHIVやそのほかの感染症に対して築いてきた勢いを失わないためには、保健に対する国際的および国内の投資が不可欠です。今年、グローバルファンドは2023年までに1600万人の命を救い、HIV、結核、マラリアによる死亡率を半減させ、保健システムを強化するため、少なくとも140億米ドルの調達を目指しています。この取り組みに対して既に支援を誓約してくださった日本の皆様に心から感謝いたします。日本政府の8億4千万米ドルの誓約は100万人の命を救うことに貢献します。この取り組みに対して誓約してくださったほかのすべての国際ドナーにも感謝しています。

しかし、HIV、結核、マラリアとの闘いを順調に進め、これらの感染症の流行を終結させられる真の持続可能性を構築するためには、これらの感染症の影響を受けている国々からより多くの国内資金を調達しなければなりません。TICADに象徴される共同責任とグローバルな連帯精神で、国際社会は、グローバルファンドに支援することにより、これまで行ってきたグローバルヘルスへの投資の取り組みを継続しなければなりません。

グローバルヘルスのために行われることは、環境や安全保障上の課題の終結を含め、開発のほかの分野にも影響を及ぼします。これらの二つは、我々がグローバルヘルスやその他の分野で得たすべての成果を確保し、維持するための基礎的要素です。TICADでアフリカと日本の指導者たちが集うにあたり、世界のどこかで誰かを取り残せば世界の全員にとって莫大な損失となるという事実を改めて強調しなければなりません。指導者たちは、多国間主義に対する真のコミットメントが共通の繁栄の達成を導く、最も確実な道筋であることを強調しなければなりません。そうすることによって、持続可能な開発という言葉とその精神に真の意味を与えることができるのです。

 


ドナルド・カベルカ博士は世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の議長。前アフリカ開発銀行総裁。

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