An initiative by
検索
Close this search box.

グローバルファンド 2023年の成果報告書をリリース

2023年9月18日
グローバルファンド 2023年の成果報告書をリリース

 Results report 2023 cover9月18日、グローバルファンドは2023年版の成果報告書を公表しました。新型コロナウイルス感染症の影響で停滞していた治療や予防、検査のサービス提供が回復し、これまでで最も高い成果を達成することができました。

ただし、2030年のSDGs目標に掲げられる三感染症流行の収束に向けた軌道に達するまでには、まだ大きな乖離があります。気候変動、紛争、経済の低迷と債務、人権侵害、国内および国家間で広がる不平等など、様々な危機が互に作用しながら複合的な危機となり、感染症対策の推進を妨げる要因となっています。感染に拍車をかける不平等を解消し、技術革新による新たな医療製品を用いた取り組みに資金を投じていく必要がある、と訴えています。

成果報告書 ウェブサイト
報告書 英文
報告書ANEX 英文
概要(At a Glance)  英文 |  和文

―――――――

要点は以下の通りです。

救われた命の数5900万人、死亡率は55% 減

グローバルファンドのパートナーシップの支援により、2022年末までに5900万の命が救われました(※1)。グローバルファンドの支援対象国(約100カ国)では、エイズ、結核、マラリアによる合計死亡率が、グローバルファンド発足の2002年以降、55%減少しました(※2)。これらは、コミュニティ、低・中所得国の政府、民間セクター、市民社会、そしてグローバルファンドの技術パートナーである国際機関などとの協働により達成できたものです。

 

1年間の成果:過去最高、コロナの影響から回復

2022年の1年間で、グローバルファンドの支援によるプログラムの三大指標の成果は、以下の通りです。いずれも過去最高となりました。

• 抗レトロウイルス治療を受けている HIV 陽性者: 2450 万人
• 結核治療を受けた人数: 670万人
• マラリア予防のため配布された蚊帳の数: 2億2000万張

以下の図に例示されている通り、2020年、21年は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてグローバルファンド支援による治療や検査の提供に中断や遅れが生じ、その件数は2019年より下回る、あるいは多少の増加にとどまる状態でしたが、2022年は最も影響を受けていた結核も力強く回復し、2019年の件数を上回りました。

 

保健システム強化への投資

2021~2023年の支援期間における保健システム強化への支援は年間約15億ドルに上ります。具体的には以下のような活動に使われています。

  • コミュニティ・システムへの支援(当事者団体やコミュニティ団体を支援し、保健サービスの提供や将来のパンデミックに備えるためのモニターや対応力強化支援)
  • 最前線で働くコミュニティ・ヘルスワーカーの支援(研修、管理、移動手段や感染から守る防護具の提供、保健用品やデジタル機器の提供、コミュニティヘルスワーカーの法的保護や地位向上など)
  • 検査体制の整備(検査システム、診断、試薬、サーベイランスのための製品や機器の調達、検体搬送体制の強化、遺伝子解析の技術)
  • 調達・供給網の整備(支援対象国の医療製品の調達とサプライチェーン管理の強化、貨物・保険、医薬品倉庫や貯蔵施設、国内搬送、品質保証、品質管理などの支援)
  • 品質が保証された保健医療製品(医薬品、医薬品以外の医療製品、医療機器)の公平なアクセスを実現するためのマーケット・シェイピング
  • アフリカなど地域レベルで保健医療製品の現地生産ができる体制構築の支援
  • デジタルヘルス、保健情報システム
  • 将来のパンデミックへの備えと対応(上記の様々な支援により、その国の感染症検査能力を高め、サーベイランスを通じて新たな病原体や薬剤耐性の出現などを検知する能力を構築)
  • 人権、ジェンダー平等(人権侵害とジェンダー不平等に対するアドボカシー支援、法的サービス、ジェンダーに基づく暴力のサバイバー支援、刑務官、裁判官、教師、ヘルスワーカーなどを対象とした人権・ジェンダー関連の研修、コミュニティ対話、メディアを通じた情報発信などの支援)

 

2030年目標達成までの軌道との乖離

上記の進捗にもかかわらず、SDGs達成年である2030年に向けて国連機関が定めた目標に向けた軌道(以下緑色の線)には乗っておらず、大きな乖離があります。

 

複合的な危機

報告書は、対策の進捗を妨げる原因として、気候変動、紛争、経済の低迷と債務、人権侵害、国内および国家間で広がる不平等などを挙げています。例えば気候変動の影響としては、今までは気温が低くマラリアを媒介する蚊が生息していなかったアフリカの高地でマラリアが広がっていたり、マラウイやパキスタンのように異常気象のサイクロンや洪水の発生によりマラリア感染が急増したり、保健医療のインフラが被災し命にかかわる医療サービスの提供が中断されるなどの例が見られます。食糧難や水不足も集団での移住を促す原因となり、結核のような感染症に感染する脆弱性が高まることになります。

詳細は報告書のp86-を参照ください。

 


*1  保健への投資の成果は様々な方法で測定可能ですが、最も重要な尺度は救われた命の数です。グローバルファンドの成果報告に含まれる「命が救われた」数値は、グローバルファンドの技術パートナーであるWHOやUNAIDSなどの国際機関や研究機関が推奨する方法を採用して推計しています。特定の年に特定の国で救われた命の数は、主要な疾病介入が行われなかった場合に発生した死亡者数から実際の死亡者数をひいて算出されています。例えば、治療を受けていない喀痰塗抹陽性の結核患者の70%が死亡すると示す研究がある国において、ある年に1000人の喀痰塗抹陽性の結核患者が治療を受け、登録死亡者数がわずか100人だった場合、この例では治療により600人の命が救われたとみなすことができます。反対に治療がなければ、700人の命が奪われていたことになります。(詳細は成果報告書p.109参照)。

*2 現時点で得られる最新統計による。エイズについては国連合同エイズ計画(UNAIDS)2023年リリースによる2022年の死亡数、結核とマラリアについては世界保健機関(WHO)の2022年報告書による2021年の死亡数。

月別のアーカイブ