An initiative by
Search
Close this search box.

グローバルファンドの「新型コロナ現況レポート」5月号 和文抄訳 

2021年5月25日
グローバルファンドの「新型コロナ現況レポート」5月号 和文抄訳 

グローバルファンド「新型コロナ現況レポート」2021年5月

出典:COVID-19 Situation Report #42(May 20, 2021) 2021年5月21日アクセス

グローバルファンドは、毎月、新型コロナウイルス感染症の現状とグローバルファンドの活動を伝えるSituation Report (新型コロナウイルス現況レポート)を発行しています。グローバルファンド日本委員会では、2021年3月より、毎月のレポートを日本語で抄訳しグローバルファンドの対応の現状をご紹介しています。

主なトピックス

・新型コロナの概要
・グローバルファンドの支援概況
・各国における新型コロナの影響のモニタリング状況
・新型コロナ収束に向けてのグローバルファンドの展望
・焦点~世界的な医療用酸素不足~
・事例紹介~危機的状況に直面するインド~

 

概要

世界の新型コロナウイルス感染症の状況(2021年5月20日現在、出所:WHO)

死亡者数:340万9220人
感染者数:1億6440万9804人

この状況に対するグローバルファンドの対応

承認済資金合計:11億ドル(約1200億円)(※1)
グローバルファンドの支援を受ける国の数:105か国及び14の広域プログラム

グローバルファンドの「新型コロナウイルス感染症対応メカニズム」(以下、「コロナ対応メカニズム」(※2))にこれまでに集まった資金合計:37億ドル(2021年)

資金調達目標(2021年末まで):100億ドル(約1兆894億円)(※1)

グローバルファンドのコロナ対応メカニズムの63%が全国における新型コロナ対策強化に、28%が三大感染症に与えるコロナの影響の軽減に、そして9%が保健やコミュニティのシステムの早急な改善に使われています。

 

グローバルファンドの支援状況

グローバルファンドがこれまで築いてきた広範な保健及びコミュニティのネットワークや調達・配布システムを最大限活用し、新たな新型コロナウイルスに係るツールや医薬品の配布、研修を100か国以上で実施しています。

以下(1)~(3)は、Access to COVID-19 Tools Accelerator(ACTアクセラレーター)(※3)の枠組みで実施されています。ACTアクセラレーターの基本情報、進捗状況や課題などは、ぜひ『ACT-A WATCH 』をご覧ください。

(1)診断・検査

2021年は変異株の拡大に伴い、検査がさらに重要な役割を果たします。

グローバルファンドは、PCR検査と迅速抗原検査の組み合わせを推奨するとともに、国家検査戦略の開発や実施を支援しています。 さらにグローバルファンドは、結核の診断やHIVウイルス量のテストを実施するための施設として建設されたラボを利用して、新型コロナウイルスに対応しています。低・中所得国に1万台を超えるジーン・エキスパート(GeneXpert、遺伝子検査システム)を設置し、これを操作できる技術者の能力向上を図ることで、パンデミックの発生以降、当該国の新型コロナウイルス検査能力を大幅に向上させることに繋がっています。

コロナ対応メカニズムから診断検査への配分額:1億8300万ドル
受注数:88か国からPCR検査と迅速抗原検査の双方で計2020万件の注文完了

自動PCR検査機器:82か国から380万件
迅速抗原検査:35カ国から1460万件
手動式PCR検査機器:170万件

(2)治療

2021年は各国の臨床ケアの最適化や新しいツールの導入、デキサメタゾンや医療用酸素製品といった既存の治療薬の調達への支援を優先します。

グローバルファンドは、WHOが推奨するコルチコステロイド薬の使用を支援しています。また2020年8月から、グローバルファンドが運用する調達サイトwambo.orgで酸素装置の調達が可能になっています。これまでに、グローバルファンドの資金を使った酸素発生器、医療用酸素、シリンダー等の調達は最大9000万ドルに上ります。

(3)保健システムコネクター

「国の備え」は新型コロナのツールの公正なスケールアップの絶対必要条件であるため、2021年は、保健システムのボトルネックを特定して対処するとともに、特に最前線で活動する医療従事者用の個人防護具(PPE)を筆頭に、新型コロナのツールが確実に届き、活用されることを優先事項に掲げます。

グローバルファンドは、マスク、手袋、ガウンといったPPEの購入に資金を提供しています。各国は、これらPPEを現地調達することも、グローバルファンドの共同調達メカニズムもしくはwambo.orgから価格保証済の高品質な製品を注文することもできます。

コロナ対応メカニズムからPPE購入への配分額:2億8000万米ドル(最前線の医療従事者用PPE1億キット)
wambo.orgを通じたPPE購入:52ヵ国

 

各国における新型コロナの影響のモニタリング状況

グローバルファンドが支援する三大感染症対策事業の進捗状況をモニタリングしている現地の機関が、実施中の事業の潜在的リスクや中断のリスクを特定するために、隔週でオンライン調査(※4)を実施しており、次のことが分かっています。(2021年5月1日現在)

(1)ロックダウン

グローバルファンドが支援する国の36%が全土ロックダウン中、24%が局地的にロックダウンしており、グローバルファンドが実施するプログラムに影響が出ています。

(2)保健サービスへの影響

エイズ、結核、マラリアのサービスへの悪影響は4月1日以降やや改善傾向にあります。3疾患を比較すると、マラリアの保健サービスデリバリーは、支援対象のうち50%の国で、中断はない、もしくは少ないと報告されており、エイズ(41%)、結核(34%)に比べ悪影響が少ないことがわかっています。

(3)主要医薬品供給への影響

エイズの主要医薬品の供給リスクは、3月以降増加傾向にあります。結核やマラリアに関しては、グローバルファンドが支援する少なくとも半数の国で主要医薬品を最低でも6か月分は供給できる一方、7%の国が抗HIV薬の不足を報告しており、44%の国で主要医薬品の供給能力がないことがわかっています。

(4)検査サービスへの影響

2020年11月以降改善傾向にありましたが、4月から5月にかけて再び悪化の傾向にあります。エイズや結核の検査サービスへの影響はない、もしくは少ないと報告した国は48%で、4月1日の50%から2ポイント減少しました。検査サービスへの影響が「非常に高い」または「高い」と報告している国は11%にのぼり、2021年の最悪値です

図表はいずれも出典:COVID-19 Situation Report #42(May 20, 2021) より転載。

 

新型コロナ収束に向けてのグローバルファンドの展望

グローバルファンドは、新型コロナの収束に向けて、検査、治療、ワクチン、保健システム、医薬品供給を一体とした包括的なアプローチを提唱しています。ワクチンだけでは十分ではありません。検査は新型コロナ対応の第一選択です。

変異株は、すべての国で新型コロナを食い止める緊要性を明示しています。高所得国がワクチンの接種拡大と新型コロナの封じ込めに成功したとしても、 低・中所得国で同時に同様の対策を取らなければ、ウイルスは変異し続け、すでに新型コロナの封じ込めに成功した国も含め、新たな脅威をもたらします。

保健システムへの支援は、世界の健康安全保障上重要であり、エイズ、結核、マラリアといった既存の感染症や、新型コロナの新しいパンデミック、そして将来の健康上の脅威と闘う唯一の方法です。グローバルファンドは、検査、治療、医薬品供給を通じて新型コロナと闘い、最前線で活動する医療従事者を守り、エイズ、結核、マラリアの救命プログラムを適応し、脆弱な保健システムを強化する各国を支援します 。グローバルファンドの保健やコミュニティのネットワーク、既に確立している調達や配布システムを活用して、新型コロナの新ツールの配布、医薬品供給、研修を100か国以上で実施しています。

 

焦点~世界的な医療用酸素不足~

世界はいま、医療用酸素不足に直面しています。 医療用酸素はコルチコステロイドと並んで、最も重篤なコロナ患者にとって唯一証明された救命治療です。 酸素がないと、低酸素血症(血中の酸素レベルが異常に低い)に苦しむコロナ患者が死に至る可能性があります。PATHの COVID-19 Oxygen Needs Tracker によると、低・中所得国はいま、1日あたり最大2500万立方メートルの医療用酸素を必要としています

医療用酸素には、シリンダー、濃縮器、液体酸素、PSA酸素装置などがあります。 保健システムには、酸素製品を配達するためのインフラや、マスク、鼻カニュラ、パルスオキシメータなどの酸素療法を患者に提供するための機材が必要です。保健システムの強化や酸素への支援は、新型コロナによる死者数の減少のみならず、他の疾病からも救命することにつながるのです。

グローバルファンドとパートナー機関は、ACTアクセラレーターの「治療」の柱の一部である、COVID-19 Oxygen Emergency Taskforce などを通じて、医療用酸素製品への各国のアクセスを支援しています。 

 

事例紹介~危機的状況に直面するインド~

現在インドは、新型コロナ危機の最中にあり、深刻な酸素不足に直面しています。パンデミックが始まって以来、新型コロナ症例数は2540万件以上にのぼり、これまでに28万3000人以上が命を落としています。

ピーター・サンズ グローバルファンド事務局長:

”インドは悲痛な状況にあります。医療用酸素が緊要ですが、それは解決策の一部にすぎず、医療従事者や保健システムも支援する必要があります。 また、ンドや世界における新型コロナの蔓延を食い止めるには、検査とワクチンを大幅に拡充する必要があります。”

グローバルファンドの対インド支援の状況は、こちらをご覧ください。

 


※1 円換算額は、2021年5月24日為替レート(1USD=108.94円)で算出。

※2  コロナ対応メカニズムは、グローバルファンドが支援する低・中所得国が、新型コロナウイルス感染症に対応しながら、三大感染症との闘いや保健システム強化を継続するために時限的に設置された資金調達・配分メカニズム。

3 ACT(アクト)アクセラレーターとは、新型コロナウイルス対策の新たな診断、治療、ワクチンの開発、生産、公平なアクセスを加速化させるための国際協働の仕組みのこと。

4  各国状況を厳密に評価することを目的とした調査ではなく、国内ステークホルダーの見解に基づく、未検証のデータ。

本稿は、グローバルファンドの「COVID-19 Situation Report#42」 をグローバルファンド日本委員会の責任において抄訳したものである。和文と英文に乖離がある場合は、英文を正文とする。

月別のアーカイブ