ACTアクセラレター:1億2000万キットの迅速抗原検査を低・中所得国へ

この記事の掲載日 : 2020年10月02日(金) この記事のカテゴリー : ,



グローバルファンドは9月28日、世界保健機関(WHO)のプレス発表に、感染症診断技術革新を推進する財団FIND、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などのパートナー機関とともに参加し、「ACTアクセラレーター」(Access to COVID-19 Tool Accelerator)(注)のもとで、新たに開発された簡易検査キット1億2000万個を低・中所得国用に提供する準備が整ったことを発表しました。ACTアクセラレーターのワクチン・治療薬・診断薬の3つの部門のうち診断薬に関する大きな成果であり、またACTアクセラレーター自体としても、初めて実際に革新的ツールを低・中所得国に提供し始めることになります。

この発表が注目に値するのは、「簡易・迅速」に使うことができる検査キットを「大量」に「安価」で提供するとしている点です。現在調達されているPCR検査は、検査結果が判明するまで数日かかる上に、高価なものでした。今回発表された検査キットは、検査後15〜30分で結果が分かる迅速抗原検査で、妊娠検査キットのような形で検査結果が判明し、検査装置を通すことなく、その場で検査を完了することができます。

新たな技術を実用化するには、通常、多くの研究開発費がかかり、安価で大量に提供することが困難ですが、今回は、開発した韓国のSDバイオセンサー社および米国アボット社に対し、ビル&メリンダ・ゲイツ財団がvolume guarantee (購入数保障)契約を結び、今後6ヶ月の間にACTアクセラレーターの枠組みのもとで1億2000万キットが購入されると確約することで、1キット5米ドル以下で提供されることが決まりました。この価格は今後、検査数が増えることでさらに下がる予定です。この様な技術の実用化およびグローバルな調達が、ウイルス発見からわずか8ヶ月で実現したことは、例えば、エイズウイルスに対する迅速検査の開発には5年の月日がかかったことを考えると、特筆すべき点です。

The Guardian の報道によれば、大量購入を確約することで、上記2社は、生産するキット総数の20%を低・中所得国向けに確保することに合意しました。これにより、新しい検査キットを高所得国が買い占めてしまうことなく、確実に低・中所得国に提供し、検査件数を一気に拡大することができます。最大のメリットは、簡易で迅速な検査キットが提供されることで、検査機関などのインフラが少なく、PCR検査に対応できる検査技師が不足している低・中所得国の中でも、地域の保健・医療現場で検査を行うことが可能になることです。特に、新型コロナ対策の最前線で働く保健医療従事者の安全を守ることができる点が重要です。

グローバルファンドは、ACTアクセラレーターにおいて、診断薬・検査キットの低・中所得国への展開支援という重要な役割を負う機関の一つです。今回、確保された迅速抗原検査のうち、グローバルファンドは初回分として5000万ドルの支援を約束し、各国がこれらの抗原検査を1000万キット調達できるようにすると発表しました。今週から注文が開始される予定です。

サンズ事務局長は今回の発表に際し、「これはまさにACTアクセラレーターが動き始めたことを意味する」と述べ、グローバルな規模でこうした協調が進めば、パンデミックと闘い制圧するための新しいツールを開発し現地に展開することができると訴えました。

SDバイオセンサー社の迅速抗原検査キットは、9月22日にWHOの性能・安全審査を経て、迅速抗原検査キットとしては初めてWHOの緊急使用リスト(EUL)に掲載されました。アボット社の検査キットも近々に掲載される予定です(追記:10月2日付で記載)。さらに複数の迅速抗原検査がWHOの緊急時使用の審査中です。ACTアクセラレーターとしては、12か月の間に低・中所得国に対し5億の検査キットの供給を支援することを目指しています。


ACTアクセラレーター(Access to COVID-19 Tools Accelerator)とは

出典:ACT accelerator Status Report & Plan (WHO, 2020)

新型コロナウイルス対策の新たなツール(ワクチン・治療薬・診断薬)の開発と公平なアクセスを加速させる国際協調の枠組み。2020年3月のG20サミットにおける要請を受け、4月24日に、WHO、フランス、欧州委員会、ゲイツ財団の主導のもとに発足した。世界的な感染症対策とR&Dに実績を持つ国際機関や団体が前例のない協力体制を組み、新型コロナのパンデミック収束のために必要なツールが公平に行きわたるよう、ツールの開発と実際の普及を支援する。診断薬、治療薬、ワクチン、保健システムコネクターの4部門に分かれ、さらに全分野を横断してアクセス・分配を統括する部門が置かれている。

診断薬部門には、診断薬・検査キットの研究開発から、市場準備、調達・供給、低・中所得国での備えの強化に至るまで、一連の流れが迅速・効果的に進むようそれぞれを担当する部会がおかれている。これまでの5か月間に、50超の検査を評価中、ゲームチェンジャーとなる迅速検査の確定、15超の検査(PCR検査を含む)が緊急使用リストに掲載、1700万の検査(同左)が調達されている。

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グローバルファンドは、診断薬部門においてFINDとともに共同議長(Co-convener)を、保健システム部門においても世界銀行とともに共同議長を務め、また治療薬部門においては、各国への普及展開の部会でリードを務め、感染症対策最大の資金提供機関として重要な役割を担っている。

Access to COVID-19 Tools Accelerator WHOウェブサイト


参考資料

●Global partnership to make available 120 million affordable, quality COVID-19 rapid tests for low- and middle-income countries
The Global Fund News Release, September 28, 2020

●Covid-19 tests that give results in minutes to be rolled out across world
The Guardian, September 28, 2020

●ACT accelerator Status Report & Plan (WHO, 2020)

●SDバイオセンサー社世界保健機関(WHO)と新型コロナウイルス迅速抗原検査キット6000万テスト契約
2020年9月30日