ピーター・サンズ事務局長来日の主要メッセージ

  • 2018年4月23日~24日

この記事の掲載日 : 2018年05月02日(水) この記事のカテゴリー : , ,


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世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)のピーター・サンズ事務局長が、クリストフ・ベン渉外局長、國井修戦略・投資・効果局長、高山眞木子渉外局ドナー・リレーションズ担当官とともに、2018年4月23日-24日にかけて日本を訪問しました。事務局長に就任後7週間目という早いタイミングでの初来日が実現し、加藤勝信厚生労働大臣、中根一幸外務副大臣への表敬訪問のほか、超党派の国会議員、省庁の幹部、官民の有識者によるグローバルファンド日本委員会アドバイザリー・ボードや市民社会代表などとの意見交換、主要メディアの取材などを行いました。
来日中の諸会合での主要メッセージは以下の通りです。

グローバルファンド日本委員会議員タスクフォース会合で今後の方針やビジョンについて話すピーター・サンズ事務局長(中央)

「素晴らしいのは、多くの人の命を救うというだけでなく、流行の終息を目指すということが現実的な意味を持って語れるようになったことだ」グローバルファンド日本委員会議員タスクフォース会合で今後の方針やビジョンについて話すピーター・サンズ事務局長(中央)

三大感染症の流行終息は実現可能だ

グローバルファンドと世界中のパートナーの努力の結果、設立以来今日まで目覚しい成果――2200万人の命が救われ、2002年の設立時に比べ三大感染症による死亡者数は三分の一減少――を達成した。困難は伴うが、医療技術や研究開発の進歩などにより三大感染症の流行の終息は実現可能な目標になった。

HIV/エイズの治療は、この20年余りの間に大きく進歩してきている。かつては命を落とす病気として知られていたエイズも、今は抗レトロウィルス治療を受ければ通常の生活ができるようになってきた。しかしながら、エイズによる死亡者数が減少したにもかかわらず、サブサハラアフリカ地域ではHIV新規感染者のうち80%以上が15~25歳の少女や若い女性である。一週間あたり8000人の少女や若い女性がHIVに感染しており、状況は深刻だ。またアジア太平洋地域では男性同性愛者、薬物使用者、セックスワーカーなどに感染が集中している。これらエイズ対策の鍵となる人々(キー・ポピュレーション)は依然として社会的に脆弱な立場にあり、エイズ対策は医療や健康だけの問題ではなく、人権の問題が大きく絡む。予防啓発や診断のアウトリーチに加え、保健医療サービスへのアクセスを保証することが大きな課題となる。

Peter Sands close up結核は、エイズに代わり最も死亡者数が多い感染症となった。年間約1000万人と推定される新規感染者のうち、約400万人は診断や治療を受けていなかったり報告がされていないなど「見落とし症例」である。これは薬剤耐性結核を拡大させる一因でもあり、結核流行の終息を目指すためには、このような「見落とし」を減らすことに全力で取り組まなければいけない。世界で最も多い結核患者を抱えるインドのモディ首相は、3月にデリーで開かれた結核サミットで「2025年までにインドの結核の流行を終わらせる」と宣言し、2017~18年の結核対策予算を倍増させ、貧困層の結核患者の生活支援のためにさらに年間1億ドルを支出すると約束した。結核高まん延国が多いアジア地域には、モディ首相のような強力な政治的リーダーシップが求められる。また、今年9月26日に国連総会にて結核に関するハイレベル会合が開催され、日本の別所浩郎国連大使が共同議長を務める。かつて、国をあげての結核対策を土台としてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を推進した日本には、これまでの経験を生かして、結核流行の終息に大きな役割を果たしていただけるものと期待している。

マラリアは蚊帳の配布や診断・治療の普及により、過去10年間で死亡者数は半減した。しかし、大メコン圏における薬剤耐性マラリアの拡大が懸念されており、広域の対策が必要となる。グローバルファンドは国別支援に加え、この地域に対する包括的な支援Regional Artemisinin Initiative (RAI)を開始した。また、東京に来る直前の4月17日に出席したロンドンのマラリア・サミットでは、イギリス政府とビル&メリンダ・ゲイツ財団がそれぞれ1億ポンド、5000万ポンドのマラリア・マッチングファンドを発表し、企業の協力を呼びかけている 。同サミットでは、住友化学を含む農業化学品企業5社が革新的な製品の研究開発、供給を支援する共同声明を発表した。歴史が示すとおり、マラリアは、対策に力を入れれば効果がすぐに表れる一方、手を緩めばすぐ感染の勢いが再燃する。車を動かすためにはアクセルを踏み続けていなければならないのと同じだ。マラリア根絶まで対策を続けることを強調したい。

日本への感謝と期待

2000年のG8九州・沖縄サミットで、議長国日本が感染症対策を主要課題として取り上げたことがグローバルファンド設立の発端となった。直近の2億8200万米ドルの拠出を含め、日本からの拠出は累計31億米ドルに上る。創設メンバーとして一貫してグローバルファンドを支えてくださり、日本の皆様には心から感謝したい。また、資金面のみならず、グローバルヘルス分野の政策形成に対する日本の知的な貢献や優れた技術力も、三大感染症との闘いに大きく貢献している。今年の結核に関する国連ハイレベル会合に加え、2019年にはG20サミットやTICAD7、国連UHCハイレベル会合など、日本は一連の重要な会合の議長国を務める。三大感染症対策を含むグローバルヘルス分野における日本の強いリーダーシップに期待し、またグローバルファンドとしてもこれらの会合を成功させるために日本と協力していきたい。

市民社会との協力

グローバルファンドにとって、市民社会は数々の大変重要な役割を担っている。市民社会は、エイズ、結核、マラリアと共に生きる人々の声なき声を届けてくれる。そして、現場ではどのようなプログラムが成功し、何が必要とされ、どこを変えていかなければいけないかを示し、我々を現実に引き戻してくれる存在だ。三大感染症に対する社会や政治家、マスメディアの関心を高めるためにも、市民社会の働きかけが重要だ。三大感染症の流行終息に向けて、これからも市民社会と綿密に協力していきたい。

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