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ピーター・ピオット氏 HIV予防の拠点コミュニティセンターaktaを訪問

2014年11月2日
ピーター・ピオット氏 HIV予防の拠点コミュニティセンターaktaを訪問

エボラ・ウィルスの発見者の一人で、前国連合同エイズ計画事務局長のピーター・ピオット氏(現・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長)が、10月31日に、東京のエイズ予防の拠点コミュニティセンターaktaを訪問しました。JCIEグローバルファンド日本委員会(FGFJ)では、aktaに協力しピオット氏の訪問をコーディネートしました。

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前列右より、akta代表荒木順子氏、JCIE/FGFJ伊藤聡子、 ピーター・ピオット博士、ハイジ・ラーソン博士(ピオット夫人)

コミュニティセンターakta(アクタ)は、アジア最大のゲイタウンと言われる新宿2丁目にある、HIV/エイズの情報センターです。NGOと研究者が行政に働きかける形で2003年に設立され、首都圏のゲイ・コミュニティにおけるエイズ予防啓発活動の拠点として大きな役割を果たしています。2011年には厚生労働省により事業化され、現在では、同様なセンターが全国に7拠点設置されています。

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岩橋氏

akta代表の荒木順子氏の説明では、日本では全国で、年間約1500人が新たにHIVに感染していると報告されていますが、その約半分が関東甲信越地方で感染がわかり、約7割が男性の同性間の性感染によるものです。ゲイ・コミュニティの人々に一番響く予防メッセージやコミュニケーションの方法を知っているコミュニティの人たち自身による働きかけが、aktaの活動の基礎になっています。スタッフの一人で名古屋市立大学の岩橋恒太氏からは、日本では、HIVに感染していても自分の感染を把握していない人が相当数に上ることが最大の課題である(ある研究によれば、実際のHIV感染者数は、報告されている数の4.2倍の可能性)と報告がなされました。

この日は、akta代表の荒木氏をはじめスタッフの皆さん、日本HIV陽性者グループやエイズ分野のNPOの代表、HIV感染症の研究者などが、ピオット氏との意見交換に参加されました。

ピオット氏は、現在居住しているロンドンでも、1日に平均5人のゲイの男性がHIVに感染していると述べ、「ロンドンは、ダイバーシティがあり、同性婚が認められ、無料で医療を受けられる制度が整っており、良いNPOも多数ある。それでも、これだけの人数がHIVに感染している、それが現実だ。エイズは終わったかのようなメッセージがUNAIDSやエイズ学会から出されているが、それは間違っているだけではなく、危険だとさえ感じている」と指摘しました。

aktaがゲイコミュニティの多くのバーや性風俗店にリーチアウトしていることをピオット氏は高く評価し、どの国でも、HIV陽性の人々、ゲイ・コミュニティの人々など、当事者たちのコミュニティの活動がエイズ対策の根幹であることを改めて強調しました。ともすると純粋な医学的なアプローチだけが公的なエイズ対策として認識されることが多く、欧米ではコミュニティ活動への支援が減っている状況であるが、こうした状況が続けば新規のHIV感染は増えていく、と警鐘を鳴らしました。

ピオット氏はエボラ・ウィルスの発見者の一人であることから、今回の来日は今までと異なり、エボラに関する講演や取材が中心となりましたが、緊急に対処すべきエボラ出血熱と、長く流行が続くエイズのような感染症とは別の性格のものであるという点も繰り返し強調しました。

(photo credit: ©toboji)

 


◆ピーター・ピオット氏の来日に伴う議員懇談会の開催(日本国際交流センターJCIEウェブサイト)

JCIEでは、ピオット氏の来日に際し、国会議員との会合などいくつかの会合をコーディネートしました。エボラ出血熱がなぜ今、西アフリカでこれほど拡大しているのか、エイズ対策の教訓はエボラにどのように生かされるのかなど、JCIEがコーディネートした会合におけるピオット氏の主要メッセージはこちらからご覧いただけます。

◆akta訪問について関連記事等

HIV支援「コミュニティーが重要」英のピオット博士 新宿のNPO訪問
毎日新聞 2014年11月1日 首都圏版23面
(記事を読むには毎日新聞ウェブサイトへの会員登録(無料)が必要です。)

<11/11 追記>
みなさんのメガフォンになりたい ピオット博士
産経デジタル オピニオンサイトiRONNA

 


ピーター・ピオット氏略歴

Prof. Peter Piot
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長
国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長、元国連事務次長

世界保健機関(WHO)の国際エイズ対策プログラム副ディレクター、国連事務次長を務めたほか、1995年から2008年まで、国連の10機関が合同で関わる国連合同エイズ計画(UNAIDS)の初代事務局長として世界のエイズ対策におけるリーダーシップを発揮した。2009年から10年までインペリアル・カレッジの国際保健研究所所長を経て現職。

1974年ゲント大学で医学の学位、1980年にアントワープ大学で微生物学の博士号を取得。アントワープ熱帯医学研究所在勤中の1976年、ザイールでエボラ・ウイルスを共同で発見した。その後、サハラ以南アフリカにおいてエイズ、女性の健康、公衆衛生の分野で研究を指揮。アントワープ大学ほか多くの大学・研究機関で教鞭をとった。

現在、イギリス医学アカデミーフェロー、米国科学アカデミー外国人会員、フランス国立医科大学およびベルギー王立医学アカデミー選出メンバー、イギリス王立内科医協会フェロー。1995年にベルギー国王アルベール2世より爵位を授与、2009年に英国より聖マイケル・聖ジョージ勲章(CMG)、2013年に日本政府より第2回野口英世アフリカ賞、タイよりプリンス・マヒドン賞を授与される。

500を超える論文と16の著書がある。2012年5月に刊行した自伝『No Time to Lose: A Life in Pursuit of Deadly Viruses』の日本語版が、慶応義塾大学出版会より2015年春に刊行予定。母語はオランダ語で、英語のほか、フランス語に堪能。

 

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