國井修 戦略・投資・効果局長の主要メッセージ(2021年9月)

この記事の掲載日 : 2021年10月07日(木) この記事のカテゴリー : , ,



世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の國井修 戦略・投資・効果局長が、2021年9月に超党派の国会議員、省庁の幹部、研究者、企業やNGOリーダーなどとオンライン会合等を行ない、新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)のエイズ・結核・マラリア対策への影響、新型コロナ対策においてグローバルファンドが支援・強化してきた保健システムを活用した各国の事例などについて報告しました。諸会合での主要メッセージは以下の通りです。


グローバルファンド2021年成果報告書にみる、新型コロナの三大感染症への影響

2002年の設立から2020年末までに4400万人の命を救うことができた。これは、国際社会のコミットメントや、低・中所得国の政府とコミュニティのリーダーシップがあれば、最も致命的な感染症を退くことができることを証明している。しかし、新型コロナがエイズ、結核、マラリアとの闘いに甚大な影響を及ぼした。
2020年はグローバルファンド設立以来初めて、検査や治療の件数などの主要指標の実績が前年実績を下回る結果となった。また、2020年の本来の目標値との比較においても、HIV検査の件数は3700万件減少、結核の治療を受けた数は140万人減少、マラリア検査の件数は4200万件減少するなど、目標値を下回った(下図参照)。※2021年成果報告書の要点は、こちらをご参照。

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多くの国でロックダウンになり、交通遮断や新型コロナ感染への恐怖心などにより、医療施設への来院数が減った。世界のサプライチェーンも停滞し、エイズや結核の治療薬を必要としている人に届かない事態に陥った。こうした深刻な状況に対して、グローバルファンドは感染拡大の初期から迅速に対応し、Grant Flexibilities(柔軟な資金活用*¹⁾)やコロナ対応メカニズム*²⁾を通じて、低・中所得国に資金を供与してきた。特に検査は、低価格で迅速に行えるよう、昨年のうちに迅速抗原検査を広めることができた。

グローバルファンドが支援してきた「強靭で持続可能な保健システム」を各国が新型コロナ対応に活用

エイズ、結核、マラリアの流行を終息させるには、強靭で持続可能な保健システムが重要だとグローバルファンドは考え、国際機関の中でも最大規模の年間10億ドルを保健システム強化に投資している。主な支援対象は、保健情報管理システム、保健人材育成、サプライチェーン、コミュニティ対策などで、これらを強化していることがグローバルファンドの強みだ(下図参照)。

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例えば保健情報管理システムは、いつどこでどのような人がどのような病気に罹っているのか、感染症がどこで広がっているのか、といった保健医療情報を収集・報告して、対策につなげるためのプラットフォームで、インドネシアや南アフリカなど32カ国が、この管理システムを2か月弱でコロナの症例報告に適用することができた。また、エイズ対策で強化してきた検査システム(検体採取・搬送・保存、PCR検査、人材確保・育成等)をコロナ対策に活用した国もナイジェリアをはじめ多くみられた。グローバルファンドの保健システムへの投資が、低・中所得国における新型コロナ対応の基盤となっているのだ。

「健康安全保障」や「新たなパンデミックへの備えと対応」におけるグローバルファンドの役割

米国ジョージタウン大学の研究で、グローバルファンドの支援額の3分の1以上が、「世界健康安全保障」に貢献していることが分かった(下図参照*³⁾)。予防、危機対応、検出、その他から成る19項目中、13項目で貢献していることになる。

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新型コロナの対応において、世界保健機関がガイドライン策定や検査キットの承認といった規範や基準を設定し、グローバルファンドが低・中所得国に検査キットを迅速に広め、それをNGOや市民社会が現場で協働して届けるといった、これまで培ってきたパートナーシップが発揮された。

ある健康危機が起こった場合、多少は違えど対処方法は大きくは変わらない。情報やツールなどが必要になるのだ。これまでグローバルファンドは、感染経路や治療期間など、性質が異なる三疾患(エイズ、結核、マラリア)に対応してきた。この三疾患に対応できるような基盤ができていれば、他の多くの感染症への対応にも応用が効く。

ただ、今後は感染症のみならず、バイオテロや戦争といった感染症に限定されない健康危機が起こることをも想定して、健康安全保障を考える必要がある。グローバルファンドとしても、このコロナ危機で得られた教訓や各国からの要請(調達サイトwambo.orgの汎用性の拡大や、ITを活用したコミュニティレベルでの接触・隔離のシステムづくりなど)を踏まえて、どのような備えと対応が必要なのか、まさに議論しているところである。

グローバルファンドの新型コロナ対策支援の資金ニーズ

グローバルファンドの2021年末までの資金調達目標は100億ドル(約1兆1102億円*⁴⁾)で、グローバルファンドが必要とする資金は、先進国などが自国で実施しているコロナ対策費の1000分の1に過ぎない。それでも、低・中所得国100カ国以上におけるコロナ対策には、かなりの助けになる。

日本の財政的貢献は大変重要であり、世界的な新型コロナ対策への支援を引き続きお願いしたい。

 

※図表はいずれも、「グローバルファンド日本委員会第33回議員タスクフォース・第26回アドバイザリーボード合同会合」における國井局長の発表資料より転載。


*¹ グローバルファンドから受けているグラントの5%の範囲内であれば、事前承認を経たうえで、節約資金(訳注:費用の削減により生じた使途が定まっていない予算)を時限的に新型コロナ対策に使うことも可能にする資金のこと。
*² コロナ対応メカニズムは、グローバルファンドが支援する低・中所得国が、新型コロナウイルス感染症に対応しながら、三大感染症との闘いや保健システム強化を継続するために時限的に設置された資金調達・配分メカニズム。
*³ Boyce et. al ‘Global Fund contributions to health security in ten countries, 2014–20: mapping synergies between vertical disease programmes and capacities for preventing, detecting, and responding to public health emergencies’, Lancet Global Health, 2021
*⁴ 円換算額は、2021年10月5日為替レート(1USD=111.02円)で算出。