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グローバルファンド日本委員会 第30回議員タスクフォース会合を開催

2020年6月18日
グローバルファンド日本委員会 第30回議員タスクフォース会合を開催

グローバルファンド日本委員会(FGFJ)は、2020年6月16日に、第30回議員タスクフォース会合を開催しました。FGFJ初のオンライン開催となった今回の会合には、グローバルファンドのピーター・サンズ事務局長や14名の国会議員をはじめ、国内外の関係者合わせて25名が出席し、世界に甚大な影響を与えている保健課題への高い関心が示されました。

会合では、サンズ事務局長より、低・中所得国での新型コロナウイルス感染症によるエイズ・結核・マラリア対策への影響とグローバルファンドによる支援、新たな国際協力の仕組み「ACTアクセラレーター」とグローバルファンドの役割についてブリーフィングを行い、活発な意見交換が行われました。

開会の挨拶において、FGFJ共同代表幹事の逢沢一郎議員は、多くの先進国が経済活動の再開を迎えた一方で、南米、アフリカ、南アジア等は新型コロナウイルス感染症拡大が加速していることに触れ、早期に有効なワクチンや治療薬が開発されることへの期待と、新しい国際協力の枠組みの中で、新型コロナウイルス感染症と闘う体制を構築していくことがすべての国における課題であると述べました。また、FGFJ共同代表幹事の古川元久議員は、低・中所得国において新型コロナウイルス感染症が拡大・深刻化している中で、グローバルファンドが大きな役割を果たしていることを再認識できたと閉会の挨拶で話しました。

サンズ事務局長によるブリーフィングの要旨は以下の通りです。


ピーター・サンズ 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)事務局長 ブリーフィング要旨

世界における新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況

新型コロナウイルス感染症は、日本を含む東アジア、欧州においては広がりが減速しているものの、米国では未だ感染拡大が継続しており、南米、アフリカ、南アジアでは感染の拡大が加速化している。アフリカでは、エジプトで新型コロナウイルスの感染が初めて確認されてから、現在までにアフリカ大陸の全54カ国に感染が及んでいる。6月4日現在、アフリカにおける感染者数は16万9,637人に達しており、非常に憂慮すべき事態である。

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アフリカの中でも特に、南アフリカでは新型コロナウイルス感染症の感染者が最も多く、他の感染症への影響も既に確認されている。具体的には、HIVの検査数が25%減少、結核の検査数も半分に減っている。アフリカを含めた低・中所得国に共通しているのは、新型コロナウイルス感染症による直接的な死亡数よりも、間接的な死亡数の方がはるかに多くなる見込みであることだ。特にアフリカでは、人口が若いゆえに新型コロナウイルス感染症による直接的な死亡率はそれほど高くならない可能性があるが、エイズ、結核、マラリアの負荷がもともと大きいこと、また、保健システムが脆弱であることから、新型コロナウイルス感染症の影響は極めて大きくなる恐れがある。

新型コロナウイルス感染症が三大感染症に与える影響

世界保健機関(WHO)や国連エイズ合同計画(UNAIDS)、ストップ結核パートナーシップ等のグローバルファンドのパートナーとともに、新型コロナウイルス感染症がエイズ、結核、マラリアの三大感染症に与える影響について複数のシナリオを考察した。

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新型コロナウイルス感染症の拡大により、保健システムが崩壊し、エイズ、結核、マラリア対策が中断するような事態になった場合、年間約240万人のこれら三大感染症による死亡数が大幅に増える可能性がある。

グローバルファンドの新型コロナウイルス感染症への対応

このような事態を防ぐために、グローバルファンドでは、各国が新型コロナウイルス感染症に対応できるように、いち早く緊急の支援策を講じてきた。そのうちの1つは、「柔軟な資金活用」である。各国に既に供与した資金の一部を新型コロナウイルス感染症対策に振り分け、新型コロナウイルス感染症による三大感染症に対するマイナスの影響を食い止めるために使用することを可能にした。6月15日現在、承認額は1億5,900万米ドル(約171億円)に達している。更に、「新型コロナウイルス感染症対応メカニズム」を立ち上げ、数週間前から申請の受け付けを開始している。6月15日現在、このメカニズムに対する54カ国からの申請を受理し、26件(約1億3,800万米ドル)を承認している。

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実際にどのようなサポートをグローバルファンドが行っているのか具体例を2つ紹介する。

ベナン:

村の広場、保健所、クリニック等の施設でマラリア防除用の蚊帳を配布していたが、従来の方法では社会的距離を確保することが困難であるため、コミュニティ・ヘルスワーカー5,500人を動員し、一軒ずつ戸別訪問して蚊帳を配布した。コミュニティ・ヘルスワーカーへの感染防止のため、マスクや手袋等の個人防護具を支給した。更に、携帯電話を活用した登録制度を新たに導入し、蚊帳の配布状況をトラッキングしている。

タイ:

結核検査のため配置してきた検査機器「GeneXpert」が、新型コロナウイルス感染症の検査においても使えるようになったため、メーカーと交渉し、途上国向けの新型コロナウイルス感染症の検査カートリッジを一括調達し、各国を支援している。

 

更に、新型コロナウイルス感染症が三大感染症プログラムや保健システムに与えるマイナスの影響について2週間ごとに各国の状況をモニタリングするツールを開発し運用している。このモニタリングツールは、必要時に各国別により詳細に状況を調べることもできる。モニタリングを通じて、グローバルファンドの支援対象国のうちおよそ4分の1の国々において、三大感染症のサービスの提供に大きな影響が出ていることが判明した。

新たな国際協力の仕組み「ACTアクセラレーター」とグローバルファンドの役割

4月24日に欧州委員会の呼びかけのもとグローバルファンドなど保健関係の機関により、新型コロナウイルス感染症対策の新しいツール(ワクチン、治療薬、診断・検査)の開発・生産・アクセスのための国際協働の仕組み「ACTアクセラレーター」が立ち上がった。グローバルファンドはACTアクセラレーターのうち、診断パートナーシップや分野横断・保健システムの強化において重要な役割を担っている。

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「検査」の重要性

新型コロナウイルス感染症対策において「検査」の重要性を強調したい。もちろんワクチンが最善の答えであるが、完成時期はまだわからない。治療薬が実際に使⽤できるまでにも時間がかかる中、今、アフリカをはじめとする低・中所得国が新型コロナウイルス感染症拡大を抑える手段として唯⼀ある選択肢は、「検査を⼤規模に実施すること」である。三大感染症で最も大きな影響を受けている国における検査機能を強化するためにグローバルファンドも支援を始めているが、今ある資金、物資、人的資源ではカバーすることができない。実際、ラオス、パプアニューギニア、タンザニア、スーダンのような国々は、人口10万人あたり新型コロナウイルス感染症の検査を4件以下しか実施していないという報告があり、このような状況下では、各地域における感染状況はわからない。検査を⾏い、接触者を追跡し、適切に隔離を行うことが極めて重要である。

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現在、ワクチンの研究開発のために多くの資⾦が集まっているが、診断・検査にも応分の資⾦を投じるべきだろう。ACTアクセラレーターの試算では、診断・検査分野の開発・⽣産・中国を除く低・中所得国での公平なアクセスに60億ドルが必要とされている。現時点で集まっているのは2〜3億ドル程度で、不足分を埋める必要がある。エイズ・パンデミックの危機により2002年に誕⽣したグローバルファンドとしても、その知⾒を活かし、新型コロナウイルス感染症との闘いにおいて重要な役割を果たしていきたい。世界経済が混沌状態に陥っている中で、いずれの国も財政が苦しいことは承知しているが、今、低・中所得国を⽀援しなければ、そのつけは必ず私たちに回ってくる。危機に対する国際協調の取り組みに、各国からご⽀援をいただけると有り難い。

グローバルファンド支援対象国における追加資金の4つの活用ニーズ

最も重要なことは、既存のエイズ、結核、マラリア・プログラムを新型コロナウイルス感染症の事態に適応させることである。適応策を講じることにより、三大感染症への新型コロナウイルス感染症のマイナスの影響を抑え、既存のプログラムの効果が持続するようにする。

第2の重要なポイントは、脆弱した保健システムが新型コロナウイルス感染症の影響により崩壊しないようにすることである。具体的には、検査機関のネットワークを強化することにより、三大感染症と新型コロナウイルス感染症対策を下支えするような保健システムを作り上げることである。

第3の重要なポイントは、保健医療従事者に対してマスクなどの個人防護具を提供することである。現在、新型コロナウイルス感染症拡大や三大感染症への影響を抑えるためにコミュニティ・ヘルスワーカーが最前線で活動している。アフリカにおいては、医療従事者やコミュニティ・ヘルスワーカーの数が絶対的に足りていない状況であり、彼らが感染し、隔離をしなければならない状況になれば、全ての疾病対策において悪影響が生じ、死亡数が増えてしまう。最前線で活動するコミュニティ・ヘルスワーカーにマスクや手袋などの個⼈防護具を提供し、彼らを⽀援することが重要だ。

最後に、低・中所得国において、新型コロナウイルス感染症の診断・検査能力を強化すること、更に、治療薬が開発され、利用可能になった際には、全ての国に治療薬が適切な価格で配布されることが重要である。

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コミュニティ主体の対策の重要性を強調

検査の実施、接触者の追跡、隔離を実効性のあるかたちで実現するには、技術や医療従事者だけではなく、コミュニティの力が不可欠である。グローバルファンドが年間10億米ドル以上を投資して、保健システムの強化に取り組む中で学んだことは、コミュニティを主体とする対策への支援が最も重要であるということだ。グローバルファンドは、新型コロナウイルス感染症により生じた事態に迅速に対応すべく、各国政府、関連機関、パートナーたちと緊密に連携を図り尽力しているが、直面している状況が非常に深刻であるために、各コミュニティや国を支えるための更なる国際的な支援が必要となっている。新型コロナウイルス感染症への対策という課題に加えて、三大感染症へのマイナスな影響が深刻化してしまうことを絶対に阻止しなければならない。


ピーター・サンズ事務局長のブリーフィング資料

※画像をクリックして、ブリーフィング資料(英)をご覧ください。(2020年8月一部訂正)
※画像をクリックして、ブリーフィング資料(和)をご覧ください。(2020年8月一部訂正)

 

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