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世界マラリアデーによせて:ピーター・サンズ グローバルファンド事務局長 Forbes寄稿

2024年4月25日
世界マラリアデーによせて:ピーター・サンズ グローバルファンド事務局長 Forbes寄稿

ピーター・サンズの宣材写真世界マラリアデーに際し、グローバルファンドのピーター・サンズ事務局長による寄稿がForbesに掲載されました。

The Women Leading The Charge Against Malaria In Cameroon

Peter Sands, Executive Director of the Global Fund to Fight AIDS, TB and Malaria

Apr 22, 2024


【仮訳】

カメルーンでマラリアとの闘いを先導する女性たち

グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)
事務局長 ピーター・サンズ

新しいツールがあってもマラリアとの闘いに変化を生み出せるのは現場に立つヘルスワーカーたちだ。

マラリアで死ぬことがあってはならない。何千年もの長きにわたって人類を苦しめ、今なお毎年何十万人もの命が奪われている。今年3月、カメルーンのヤウンデでマラリア閣僚会議が開催された。「私たちにはこの病気との闘いを永久に終わらせる手段がある。」出席したアフリカ諸国の保健相はこう強調した

最新のツールが効果を発揮している。例えば2種類の殺虫剤が塗布されている二重有効成分(AI)を持つ蚊帳は、これまでの蚊帳に使われていた殺虫成分に耐性を持つ蚊に対しより効果的である。他にも室内残留性スプレーの散布、5歳未満の子どもへの季節性マラリアの化学予防、妊婦対象の断続的な予防治療などもある。そして今、「RTS,S」と「R21」という2つの新しいワクチンがツールボックスに加わった。これらのツールはすべて、包括的な国家マラリア対策計画の一環として併用することが最も効果的である。

それでも、ツールだけでマラリアを終わらせることはできない。その成否は、保健システムがどれだけ強固であるかにかかっている。研修を受けた保健医療人材がマラリアの影響を最も受けている地域社会にリーチできているのか、保健システムの肝はそこにある。

マラリアとの闘いの最前線に立ち、壊滅的な影響に対応する人々。医師、看護師、検査技師、助産師、コミュニティ・ヘルスワーカーらがチームとなって、それぞれの役割を担い、救命のための予防と治療に取り組むことが欠かせない。

そして、ヘルスワーカーの大半は女性であること、ジェンダーの観点からもこれは忘れてはならない。看護師、助産師、コミュニティ・ヘルスワーカーを中心に、これら女性たちが世界で約50億もの人々にヘルスケアを提供している。

全人口の2,700万人がマラリアの危険に晒されているカメルーン。当地を訪れた際、マラリアとの闘いを先導する3人のすばらしい女性に会う機会に恵まれた。

ソア地区病院では、エミリー・イトンドという助産婦に会った。彼女は妊婦への家庭訪問をしながら、断続的予防治療(IPTp)と呼ばれるマラリア予防薬と殺虫剤処理済みの蚊帳を提供している。妊婦がマラリアに感染した場合、胎児は低体重であったり、合併症を引き起こし、死に至ることさえある。エミリーは、妊婦のマラリア検査をルーティーン化して行い、必要な予防手段を提供していると説明した。

エミリーと同じ病院の主任看護師でワクチン・サービス責任者のダニエル・エコトは、病院のワクチン・プログラムを率いる彼女の役割について話してくれた。カメルーンは、世界で初めて、RTS,Sマラリアワクチンを国の予防接種プログラムに取り入れた国である。ダニエル看護師と彼女の同僚たちは、今年1月より、生後6ヵ月の子どもたちにマラリアワクチンを接種している。

医療へのアクセスを確保するには、「信頼」が肝要である。人々が安心し、1人の人として大切に思われ尊厳をもって治療を受けていると感じる必要がある。だからこそ、コミュニティ・ヘルスワーカーの活動が重要なのだ。

父親のトムンジョン。二重有効成分(AI)を持つ蚊帳を取り付けている。

コミュニティ・ヘルスワーカーのアメリー・タチフォに同行した時のこと、彼女がある家族とこれまで築いた信頼関係が家族と医療をつなぐ架け橋にもなっていることがよくわかる出来事があった。母親のメリッサ、父親のトムンジョン、そしてガブリエラとトニー・ジェイソンという2人の子どもたちだ。

アメリーは6年前からこの家族を支援している。メリッサは彼女のことを “私の姉”と呼ぶ。その理由はよくわかる。

メリッサが現在3歳になる娘のガブリエラを出産した時のことだ。周囲に助けてくれる人がおらず、病院に行く手段もなかった一家が深夜2時に電話したのがアメリーであった。

ガブリエラ(3歳)自宅の蚊帳の中で。

昨年、第2子妊娠が判明したばかりのメリッサとまだ小さいガブリエラが病気になった時も、アメリーに電話した。アメリーが地元の病院に彼女らをつなぐと、そこでマラリアと診断された。ガブリエラは4日間入院したが、早急な診断と治療が功を奏し、回復した。

この件があってからというもの、メリッサが妊娠中も断続的予防治療を受け、家族が新型の二重AI蚊帳の下で眠れるように手配したのもアメリーだった。更に、アメリーは一家にマラリア・ワクチンのことを話し、今年2月に、生後8ヶ月のトニー・ジェイソンはソア地区病院でワクチン接種を受けた。

トニー・ジェイソン(生後8ヶ月)と母親のメリッサ、蚊帳の中で。

看護師のダニエル、助産師のエミリー、コミュニティ・ヘルスワーカーのアメリー、彼女たちはそれぞれの仕事を通じ、包括的かつ一貫したマラリア対策を実践し、コミュニティに提供している。保健システムが十分に機能し、コミュニティの健康と暮らしにとって、決して欠かすことのできない普遍的な存在であるのが彼女たちだ。

彼女たちの根気強い取り組みなしに、マラリアとの闘いは成り立たない。

そのためには、コミュニティ・ヘルスワーカーへの適切な支援、訓練、保護、金銭的な補償を行う必要がある。彼女たちは、その重要な役割にもかかわらず、低賃金であるか、まったく報酬が支払われていないことが多い。アメリーの場合、報酬が少ないため、他の仕事に就いて収入を補わなければならない。

ツールはパズルの1ピースに過ぎない。この世界マラリア・デーに、世界の進歩は最前線で働く英雄的なヘルスワーカーたち(そのほとんどが女性)によって担われていることを忘れてはならない。世界は彼女たちを尊敬し、認めるべきだ。

(JCIE/グローバルファンド日本委員会による抄訳、英文原文を正文とする)

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