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グローバルファンド日本委員会 第38回議員タスクフォース会合を開催

2024年4月18日
グローバルファンド日本委員会 第38回議員タスクフォース会合を開催

グローバルファンド日本委員会(FGFJ)は、来年の TICAD を前に東京で開催の「気候変動と健康に関するサミット」(4 月17 日、マラリア・ノーモア主催)に登壇するため来日された、マラウイのクムビゼ・カンドド・チポンダ保健大臣を招き、第38回議員タスクフォース会合を開催しました。

会冒頭、マラリア・ノーモアCEOのマーティン・エドルンド氏より、この20年で感染症の取り組みに大きな進捗があり、グローバルファンド創立メンバーでもある日本の功績も大きく寄与しているとの話がありました。また、世界銀行の新しいデータ(2023年)によると、気候変動の影響で、5つの健康リスク(猛暑、発育阻害、下痢、マラリア、デング熱)だけで、死亡者数が少なくとも2100万人も増えるといわれ、中でもアフリカは気候変動の影響を受けやすい地域だと説明しました。

チポンダ保健大臣のブリーフィング要旨および国会議員との質疑応答の要旨は以下の通りです。


クムビゼ・カンドド・チポンダ  マラウイ保健大臣

「気候変動による感染症への影響と保健システム強化の重要性」

【ブリーフィング要旨】

クムビゼ・カンドド・チポンダ保健大臣

マラウイはアフリカ南部に位置する小国で、人口約2000万人のうち18歳以下が半数を占めており、マラウイの発展を担う若年層への援助を必要としている。2021年に長期国家戦略「マラウイ2063」を設定した。2063年までに自立し、現在の低所得国から中所得国になるビジョンを抱いている。

気候変動の影響:マラウイは気候変動の影響を受け、危機に直面している。近年は毎年、サイクロン、大洪水が多発し、北部では干ばつの被害も受けている。中でも2023年に発生した超大型サイクロン「フレディ」によって200万人が避難を余儀なくされ、医療施設は流された。持続可能で強靭な保健システムをどう構築するか、どう新たなパンデミックを予防するかについて世界では議論されているが、マラウイは何よりまず復興しなければならない段階だ。

気候変動による感染症への影響

  • コレラ:サイクロン「フレディ」で1973年以来最悪のコレラのアウトブレイクが発生し、子どもも含めて1700人が死亡した。安全な水と衛生設備を整えるため、3週間学校を休校にせざるを得なかった。コレラに感染すると数時間で死に至る。コレラワクチンは以前からあるもので、アクセス可能であるべきだが、全く足りていない。21世紀のこの時代にワクチンを求めて長蛇の列をつくり、接種できない人がいるような状況であってはならない。マラウイのみならず、ザンビアやモザンビークなど近隣諸国でもコレラで苦しんだ。解決策の一つは、アフリカにおけるワクチン製造工場への投資であり、アフリカにワクチン製造の拠点があれば現地の需要を理解し、素早く供給できる。
  • マラリア:グローバルファンドの支援もありマラリア対策を推進中で、薬をはじめマラリア対策のための医薬品・機材を切らすことはなくなった。妊婦は産前検診で必ず蚊帳をもらう。室内残効性スプレーも使用しており、罹患率が高い地域ではマラリアの感染が50%減少した。それでも十分ではない中、昨年のフレディで蚊帳やスプレーも流された。今年はマラリアの発生率が高くなっており、公共病院の入院患者の25%はマラリアが重篤化している。これまでのマラリア対策に積み重ねてきた努力が水の泡となるような多くの症例が気候変動で発生している。多くのサポートが必要だ。マラリアに罹患すると最低10日くらい寝たきりになってしまう。誰か一人でも罹患すると看病するために家族も学校を休んだり、働くことができなくなり、収入が断たれる。飢餓によって死亡することもある。マラリアは経済危機をも引き起こす。マラウイ人の多くは外に出て稼いでその日の糧を得ている。そのため、新型コロナウイルス感染症が拡大した時もロックダウンはできなかった。今や日本、アメリカ、ヨーロッパでマラリアはない。日本や欧米で実現できたことを私たちがなぜできないのか。いかなる予防方法をも取り入れ、これ以上母子の命が奪われることがあってはならない。

 

エイズの状況

日本政府、JICAをはじめ日本の皆さんやグローバルファンドをはじめとする国際支援のおかげでエイズの状況は改善している。国連のエイズ対策目標である「95-95-95」について、マラウイは「93‐90‐97」の状況。エイズが猛威を振るっていた1990年代は平均余命が37歳だったが、今は64歳にまで上がっている。さらに向こう10年で日本に近い75歳にまであげたい。

保健システム構築の現状と国際支援

コロナからの復興においてグローバルファンドは柔軟に対応してくれた。コミュニティの保健センターを55カ所建設することで遠い道のりを歩かずに済むようになり、最低限の医療サービスを受けられるようになった。グローバルファンドのおかげで救急車も増車でき、またJICAを通じて21台のトラックを提供してもらった。

我々は現在、多くの保健サービスを統合して提供している。つまり、5歳未満児のワクチン接種、妊婦の産前検診、高血圧や糖尿病などの非感染性疾患やマラリア、結核、エイズといった感染症への対応もすべてコミュニティレベルで実施できている。

課題の一つは、保健人材の確保だ。医療用品があっても、それらを提供できる人材が必要だ。グローバルファンドのおかげで、医師、看護師、助産師、コミュニティでの疾病管理やサーベイランスをする保健人材は雇用できるようになった。

 

【国会議員からのコメントおよび質疑応答(抜粋)】

逢沢一郎 衆議院議員

逢沢一郎 参議院議員(グローバルファンド日本委員会共同議長):マラウイにおける深刻な状況を率直にご説明いただいた。エイズが大きく改善したというのは嬉しい報告だが、気候変動の影響でマラリアが非常に厳しい状況であることを理解した。インドの医薬品セクター(ワクチン、検査薬、治療薬)は世界で大きく貢献しているわけだが、インドができた現地生産がアフリカでできないわけがなく、日本としても支援していきたい。

コロナのパンデミックがマラウイでどれほどのダメージがあったのか、またコロナ対策で保健システムが強化された国もあるとの報告も聞いているが、それがエイズやマラリアの対策の改善にどう繋がったのか。

チポンダ大臣:コロナ禍はどう対応していいか分からず試行錯誤だった。マラウイは他国とは少々状況が異なり、ロックダウンができなかった。自宅で仕事する人は増えたが、多くの人は在宅で仕事をすることができるわけではなかった。どの危機もシステムの強化や改革のチャンスをもたらす。当初は地方の病院に専門棟もなく、シフトを変えてコロナ患者に対応するしかなかったが、後に感染症対応の病棟をつくることができた。またグローバルファンドのおかげで保健人材の採用も進んだ。コロナ患者に対応する保健医療従事者をつけることができ、これは大きなプラスとなった。

現在、「第3次保健戦略計画」を進めている。すべてのリソースを一つにまとめていれば、対策も一本化できる。ただ、メンタルヘルスについては支援してくれるパートナーがいない。コロナ禍ではパニックが起こり、ストレスが国民に広がったときにメンタルヘルスの対策が必要だった。この問題に目を向けなければならない。何よりも、コロナにしろ、慢性疾患、精神的な問題も同じ一人の人間に起こっていることであり、「人」に焦点を当てて、その人全体の保健問題を等しく進めなければならい。

小田原潔 衆議院議員:日本のマラリア終息に関して、1961年に皆保険制度がはじまったことも関係している。そしてマラウイと比べて日本の気候がより涼しく、蚊も少ないことも貢献したのだろう。最近デング熱が見つかった時には蚊のゲノム変換(non-fertile mosquito)の試みを行った。

大串正樹 衆議院議員

大串正樹  衆議院議員:コレラやマラリアが多く発生する地域は下水道設備が整ってない地域が多く、医療制度と上下水道の整備などは両輪でやっていかなくてはならない印象を持っている。日本も1960年代は生活排水が雨水と混ざる地域が多かったが、きちんと整備されるようになってマラリアなどの感染症を克服できた。「マラウイ2063」を策定し、色んな方向を目指されている中で、どのような上下水道の整備や都市計画がなされているのか。

チポンダ大臣:水源、水衛生の問題だと考える。コレラが発生したとき大統領直下のタスクフォースが対応した。これはコロナ禍で発足したもので、保健省、財務省、公衆衛生省、教育省、法務省、地方自治省などで構成され、マルチセクター・アプローチをとり、症例管理に関して予防措置を行った。マラウイでは地方分権化を進めているため、地方自治体が主体となって下水道の管理などに対処する必要がある。また予防可能な疾患については市民が担う役割も大きい。各村には、「村開発コミュニティ」というものがあり、コミュニティ参画を進めている。

古川元久 衆議院議員

古川元久 衆議院議員(グローバルファンド日本委員会共同議長):日本においてマラリアは1962年以降発生しておらず、また多くの感染症が大きな問題になっていないため、日本での危機意識は低いと考える。しかし日本においても、梅雨時の雨の降り方が激しくなり、洪水も増えているし、本来この時期は春でもう少し涼しいが気温が高かったりするなど、気候変動の影響を受けている。マラリアを媒介する蚊が今まで確認されていない高地で発生する状況が続けば、日本でもそうした蚊が発生するリスクが目の前に近づいているかもしれない。人の危機意識をどう変えるか、どう危機感を持ってもらえるか苦労している。他の国で起きている問題が日本とは無関係ではなく日本にもつながっており、日本にも危機が近づいているということを意識できるよう、今日の話を聞いて我々も努力していきたい。

 


出席いただいた国会議員(敬称略)

逢沢 一郎 衆議院議員(自由民主党)[グローバルファンド日本委員会共同議長]
古川 元久 衆議院議員(国民民主党)[グローバルファンド日本委員会共同議長]
阿部 俊子 衆議院議員(自由民主党)
大岡 敏孝 衆議院議員(自由民主党)
大串 正樹 衆議院議員(自由民主党)
小田原 潔 衆議院議員(自由民主党)
黄川田 仁志 衆議院議員(自由民主党)
藤井 比早之 衆議院議員(自由民主党)
宮澤 博行 衆議院議員(自由民主党)
山本 右近 衆議院議員(自由民主党)
古屋 範子 衆議院議員(公明党)
小熊 慎司 衆議院議員(立憲民主党)

(政党別五十音順)


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