グローバルファンド日本委員会の議員タスクフォースを代表し、4名の国会議員が2023年9月5日から8日にかけてベトナムを訪問し、グローバルファンドの支援の成果を視察しました。また、感染症対策分野における日本の二国間支援とグローバルファンドを通じた支援が共通の目的の下に補完関係となりうることや、幅広い保健分野でのさらなる日越協力の可能性などを現地の皆様と協議しました。
参加議員
逢沢 一郎 衆議院議員(自由民主党)、グローバルファンド日本委員会議員タスクフォース共同議長
古川 元久 衆議院議員(国民民主党)、グローバルファンド日本委員会議員タスクフォース共同議長
田村 麻美 参議院議員(国民民主党)
高木 真理 参議院議員(立憲民主党)
保健大臣との会合
9月7日午後に行われたダオ・ホン・ラン保健大臣との面談において、大臣からは、20年にわたるグローバルファンドの支援により三大感染症分野で多くの成果を上げることができたと感謝の言葉があり、大臣自らによる詳細な現状の説明がありました。
すなわち、結核の発症数は減り関連機材も整備されてきたが、2030年までに結核の流行を収束させるためにはまだいくつかの課題が残っている、特に新型コロナウイルス感染症の影響は想定外のところに及んでいる。エイズにおいては、ベトナム自身の努力と国際支援の結果、新規感染者も死亡者数も減り、現在ベトナムにおけるHIV陽性者は人口の3%(注:推計243,000人)である。国連のエイズ対策目標である「95-95-95」を一部ではあるが実現した。足りない部分は引き続き努力していきたい。マラリアは、山岳部では時々クラスターが発生しているものの、2030年までに完全に排除できる見込みであると報告がありました。
また、保健分野全般について、ラン大臣から日本の長年の資金的・技術的支援に感謝があり、医療分野は両国間の協力関係において重要な役割を果たしているとの言及がありました。さらに三大感染症以外の感染症、手足口病、デング熱、肝炎についても対策が必要であり、加えて、非感染性疾患が他の国々同様に課題となっており、糖尿病や生活習慣病予防における栄養管理の必要性も高い。このため、グローバルファンドと日本政府には、三大感染症のみならず、その他の疾患対策も支援いただければ有難いとする期待が述べられました。(※)
さらに保健システム強化の一環として、医療活動を安定的に実施するための保健医療分野の法律制定や改正、健康保険財源の拡充、高齢者の健康とケアなどについても、日本の知見を共有いただきたいとする言及がありました。
日本議員団からは、グローバルファンドの資金で導入された機材や医薬品が有効に活用され検査や治療が的確に実行されていることを確認できたとし、グローバルファンドとベトナムが協力し三大感染症分野で実績を上げていることに対する敬意が表されました。
また、日越の人の往来の多さに鑑みベトナムにおける感染症対策は日本にとっても重要であること、中央と地方の医療格差の是正の必要性、健康保険の財源確保のための税制改革、偏見によりカミングアウトが難しい疾病サービスにあたる民間の市民団体への支援、学校を通じた結核検診など検査体制の強化と予防の重視など、日本の経験に基づく数々の問題提起がなされました。逢沢団長は、日本はこれまでも二国間支援を通じてバクマイ病院、E病院、チョーライ病院などに対する支援を行ってきた、併せて、グローバルファンドを通じた支援にも一層力を尽くしていきたいと結びました。
なお、本会合には、4名の議員、グローバルファンド日本委員会関係者、グローバルファンド事務局代表のほか、日本大使館およびJICAベトナム事務所代表、さらに正林督章JICAベトナム保健省政策アドバイザーに同席いただきました。
(※)肝炎について:B型・C型肝炎などのウイルス性肝炎はHIVとの共感染が多いことから、グローバルファンドでは、エイズ対策にB型・C型肝炎の予防、検査、治療を統合して、総合的な保健サービスを提供することを各国に働きかけ、これらの肝炎の予防、検査、治療を支援対象に含めています。これは、疾病を中心にするのではなく患者さんなど保健サービスを受ける人々のニーズを中心に据えた包括的支援の一環で、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの増進に貢献しています。
主な視察先・会合
今回の視察における訪問先・会合は以下の通りです。報告は追って掲載いたします。
・国立肺病院
・国立熱帯病病院
・ハノイ医科大学病院およびセクシャル・ヘルス外来
・ベトナムのNGO 社会開発研究所(ISDS)およびコミュニティ開発イニシアティブ支援センター(SCDI)幹部との会合
・コミュニティ組織「カフェ・ホープ」にて当事者団体との会合
・世界保健機関(WHO)ベトナム事務所幹部との会合
・国連合同エイズ計画(UNAIDS)ベトナム事務所所長との会合
・国際移住機関(IOM)ベトナム事務所所長との会合
・山田滝雄 駐ベトナム大使との会合
・JICAベトナム事務所およびSATREPS事業「ベトナムにおける治療成功維持のための”bench-to-bedside system”構築と新規HIV-1感染阻止プロジェクト」関係者との会合
尚、本年は日本とベトナムの外交関係が樹立されてから50年の節目であり、本事業は、日越外交関係樹立50周年認定事業の認定を受けています。
参考
グローバルファンドによるベトナムの結核対策支援の成果についてはこちらのビデオをご覧ください。
グローバルファンド設立20周年記念ビデオ(グローバルファンド日本委員会制作)「何事も夢から始まる」
ベトナム編「生死をさまよい、今は希望をつなぐ当事者代表へ」
若くして多剤耐性結核を発症し、グローバルファンドの結核治療の支援を通じて病を克服。自身の夢とベトナムと世界の結核の終息という夢の実現に向けて、家族や医師、学校の先生たちに支えられ、また自らも結核で苦しむ人々を支えながら、前向きに結核対策に取り組む、フィオナのストーリー。