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グローバルファンドの「新型コロナ現況レポート」4月号 和文抄訳 

2021年4月26日
グローバルファンドの「新型コロナ現況レポート」4月号 和文抄訳 

グローバルファンド「新型コロナ現況レポート」2021年4月

出典:COVID-19 Situation Report #41 (April 16, 2021) 2021年4月19日アクセス

グローバルファンドは、毎月、新型コロナウイルス感染症の現状とグローバルファンドの活動を伝えるSituation Report (新型コロナウイルス現況レポート)を発行しています。グローバルファンド日本委員会では、2021年3月より、毎月のレポートを日本語で抄訳しグローバルファンドの対応の現状をご紹介しています。

 

概要

世界の新型コロナウイルス感染症の状況(2021年4月16日現在、出所:WHO)

死亡者数:297万4642人
感染者数:1億3841万1980人

この状況に対するグローバルファンドの対応

承認済資金合計:9億9000万ドル(約1070億円)(※1)
グローバルファンドの支援を受ける国の数:106か国及び14の広域プログラム

グローバルファンドの「新型コロナウイルス感染症対応メカニズム」(以下、「コロナ対応メカニズム」。下段参照)にこれまでに集まった資金合計:37億ドル

資金調達目標(2021年末まで):100億ドル(約1兆8020億円)(※1)

 

グローバルファンドのコロナ対応メカニズムとは、グローバルファンドが支援する低・中所得国が、新型コロナウイルス感染症に対応しながら、三大感染症との闘いや保健システム強化を継続するために時限的に設置された資金調達・配分メカニズムです。この資金の55%が全国における新型コロナ対策強化に、34%が三大感染症に与えるコロナの影響の軽減に、そして11%が保健やコミュニティのシステムの早急な改善に使われています。

 

グローバルファンドの支援状況

グローバルファンドがこれまで築いてきた広範な保健及びコミュニティのネットワークや調達・配布システムを最大限活用し、新たな新型コロナウイルスに係るツールや医薬品の配布、研修を100か国以上で実施しています。

以下(1)~(3)は、Access to COVID-19 Tools Accelerator(ACTアクセラレーター)(※2)の枠組みで実施されています。

(1)診断・検査

グローバルファンドは、PCR検査と迅速抗原検査の組み合わせを推奨するとともに、国家検査戦略の開発や実施を支援しています。 さらにグローバルファンドは、結核の診断やHIVウイルス量のテストを実施するための施設として建設されたラボを利用して、新型コロナウイルスに対応しています。低・中所得国に1万台を超えるジーン・エキスパート(GeneXpert、遺伝子検査システム)を設置し、これを操作できる技術者の能力向上を図ることで、パンデミックの発生以降、当該国の新型コロナウイルス検査能力を大幅に向上させることに繋がっています。

コロナ対応メカニズムから診断検査への配分額:1億8400万ドル
受注数:87か国からPCR検査と迅速抗原検査の双方で計2020万件の注文完了

自動PCR検査機器:83か国から380万件
迅速抗原検査:34カ国から1460万件
手動式PCR検査機器:170万件

(2)治療

グローバルファンドは、WHOが推奨するコルチコステロイド薬の使用を支援しています。また2020年8月から、グローバルファンドが運用する調達サイトwambo.orgで酸素装置の調達が可能になっています。これまでに、グローバルファンドの資金を使った酸素発生器、医療用酸素、シリンダー等の調達は最大1100万ドルに上ります。

(3)保健システムコネクター

グローバルファンドは、マスク、手袋、ガウンといった個人用保護具(PPE)の購入に資金を提供しています。各国は、これらPPEを現地調達することも、グローバルファンドの共同調達メカニズムもしくはwambo.orgから価格保証済の高品質な製品を注文することもできます。

コロナ対応メカニズムからPPE購入への配分額:2億7600万米ドル(最前線の医療従事者用PPE1億キット)
wambo.orgを通じたPPE購入:50ヵ国

 

各国における新型コロナの影響のモニタリング状況

グローバルファンドが支援する三大感染症対策事業の進捗状況をモニタリングしている現地の機関が、実施中の事業の潜在的リスクや中断のリスクを特定するために、隔週でオンライン調査(※3)を実施しており、次のことが分かっています。(2021年4月1日現在)

(1)ロックダウン

グローバルファンドが支援する国の37%が全土ロックダウン中(前回2021年3月1日データから1%減)、24%が局地的にロックダウンしており(同様に1%減)、グローバルファンドが実施するプログラムに影響が出ています。

(2)保健サービスへの影響

結核とエイズのサービスへの悪影響は3月1日以降やや改善傾向にありましたが、マラリアのサービスへの悪影響はやや増加傾向にあります。理由としては、交通の問題で蚊帳や室内残留性スプレー等の配達やマラリアのキャンペーンに遅延をきたしていることが考えられます。3疾患を比較すると、マラリアの保健サービスデリバリーは、支援対象のうち45%の国で、中断はない、もしくは少ないと報告されており(前回比1%増)、エイズ(35%、前回比2%増)、結核(32%、前回比2%減)に比べ悪影響が少ないことがわかっています。

(3)主要医薬品供給への影響

エイズ、結核、マラリアの主要医薬品の供給リスクは、3月1日から4月1日の間でやや増加傾向にあります。結核やマラリアに関しては、グローバルファンドが支援する少なくとも半数の国で主要医薬品を最低でも6か月分は供給できる一方、6%の国が抗HIV薬の不足を報告しており、44%の国で主要医薬品の供給能力がないことがわかっています。

(4)検査サービスへの影響

2020年11月以降改善傾向は安定しており、エイズや結核の検査サービスへの影響はない、もしくは少ないと報告した国が50%まで増えました(前回比1%減)。

図表はいずれも出典:COVID-19 Situation Report #41 (April 16, 2021) より転載。

 

新型コロナの三大感染症への影響とその適応事例

上記の各国におけるモニタリング状況の調査とは別に、グローバルファンドは、アフリカとアジアの32カ国の502保健施設を対象に実態調査を実施しました。これは、アフリカやアジアにおいても新型コロナの感染が拡大しはじめた2020年4月から9月にかけて、新型コロナの保健サービスへの影響を調査したもので、「エイズ、結核、マラリアのサービスと保健システムへの新型コロナの影響:アフリカとアジアの502保健施設からのスナップショット」という報告書にまとめられました。

この報告書から以下のことが判明しました。(数値は、2020年4~9月と2019年同時期との比較)
HIV検査が41%減少
結核患者のリファラル(結核が疑われる患者が診断・治療を受けるために他施設へと紹介されること)が59%減少
マラリア診断が31%減少
産前産後ケア初診の受診率が43%低下

さらに、
少なくとも4つの必須個人防護具(マスク、グローブ、消毒剤、手指消毒剤)を全職員が使用している施設は45%のみ
アフリカ24か国の医療施設のうち、迅速抗原検査を実施できるのは11%のみ、PCR検査を実施できるのは8%のみ
であることも判明しました。

しかし「望み」はあります。保健施設は、新型コロナの影響に立ち向かうため、革新的で適応可能な解決策を見い出しており、調査した医療施設の68%が少なくとも1つの適応策を用いていました。適応策を実施している国は、実施していない国よりも新型コロナの三大感染症への悪影響を抑えていることがわかっています。以下、3つの事例を紹介します。

ナイジェリアのエイズ対策

首都ラゴスにある総合病院では、母子感染予防のサービスを受ける患者に対して、ロックダウン中も継続して抗HIV薬を服用できるよう、3か月分を処方しました。ナイジェリアではロックダウンは緩和されていますが、交通費の値上げや新型コロナの感染を恐れ、医療施設の受診者数は少ないといい、ロックダウン前のこうした対応策は効果的と言えるでしょう。また、医療従事者が遠隔でも患者を診察できるよう、ワッツアップ(無料の携帯チャットアプリ)を活用し、患者のフォローアップを行っています。

ブルキナファソのマラリア対策

首都ワガドゥグでは、ヘルスワーカーが戸別訪問して、蚊帳やマラリア予防薬を配付しています。この取り組みは、特にマラリア流行時期に感染しやすい地域に住む子どもたちをマラリアから守るために重要です。戸別訪問するヘルスワーカーは、この活動はコミュニティや家々から歓迎されていると感じており、また、子どもの重症例が大幅に減少していると言います。

インドの結核対策4) 

世界最大の結核患者数を抱えるインドでは、結核と新型コロナを一体化させたスクリーニング、検査を実施しており、PCR検査にTruenatと呼ばれる結核診断用の機器が活用されています。これは、「スーツケースサイズの検査室」と言われるほど小型で持ち運びに便利な機器で、必要最低限の研修を受けた医療従事者であれば操作することができます。小型のチップに収められたサンプルの情報は、Truenatを通じて上位病院に即時データ送信され、60分で検査結果を得ることができます。現在、インドの530県にTruenatのワークステーションが2500超あります。共通の診断ツールや保健システムへの支援を行うことで、同時に2つの呼吸器疾患と闘うこともできるのです。

 


※1 円換算額は、2021年4月23日為替レート(1USD=108.02円)で算出。

※2  ACT(アクト)アクセラレーターとは、新型コロナウイルス対策の新たな診断、治療、ワクチンの開発、生産、公平なアクセスを加速化させるための国際協働の仕組みのこと。

※3  各国状況を厳密に評価することを目的とした調査ではなく、国内ステークホルダーの見解に基づく、未検証のデータ。

※4  COVID-19 Situation Report #41及びスナップショットに記載の事例より引用。

 

本稿は、グローバルファンドの「COVID-19 Situation Report#41」 及び「THE IMPACT OF COVID-19 ON HIV, TB AND MALARIA SERVICES AND SYSTEMS FOR HEALTH: A SNAPSHOT FROM 502 HEALTH FACILITIES ACROSS AFRICA AND ASIA」をグローバルファンド日本委員会の責任において抄訳したものである。和文と英文に乖離がある場合は、英文を正文とする。

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