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米議会 2019年度予算案でグローバルファンドへの満額拠出を要求

2018年7月3日
米議会 2019年度予算案でグローバルファンドへの満額拠出を要求

6月20日および21日、米上下両院の各歳出委員会は2019年度(2018年10月〜2019年9月)の国務省および対外活動に関する歳出予算案を発表しました。いずれも、グローバルヘルス事業に対して大幅な予算削減を求めていたトランプ大統領の予算教書での要求を覆し、例年並みの予算額を提示したほか、グローバルファンドについては、今後3年間「最低13億5000万ドルを拠出する」という要求が明記され、2020年以降の増資への道筋を開きました。以下に概要をまとめます。

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グローバルヘルス事業に対する議会の強いリーダーシップ

今年2月に発表されたトランプ大統領の予算教書では、昨年度に続き、グローバルファンドを含むグローバルヘルス予算の大幅削減を提案していた。しかし、上院予算案は、その冒頭で「外交、開発援助、防衛は、長らく米国の安全保障の枠組みとなってきた」と述べ、米国が開発援助における強いリーダーシップを発揮し続けることの重要性を強調。上下院いずれの予算案においても、主要なグローバルヘルス事業への予算を前年度並みに維持または微増とすることが盛り込まれることとなった。

グローバルファンドに対しては、上院予算案でオバマ政権時に誓約した13億5000万ドル(2019年度分)の拠出を明記したほか、2019年にフランスで開催される第6次増資会合(注)を念頭に、2020年からの3年間についても、「最低でも各年13億5000万ドルを拠出する」ことを求めた。下院予算案でも同様に、グローバルファンドへ各年13億5000万ドルの拠出を表明しており、足並みが揃った形となった。

議会への働きかけを続けてきた米国のNGOフレンズ・オブ・ザ・グローバル・ファイト(グローバルファンド米国委員会)のクリス・コリンズ事務局長は「(国務省・対外活動に関する歳出委員会小委員会を率いる)グレアム上院議員やリーヒ上院議員、ロジャース下院議員、そしてローウィー下院議員のリーダーシップにより、グローバルファンドを含むグローバルヘルス事業にとって極めて重要な予算を維持することができた」と議員に感謝し、「これら非常に効果的な事業にコミットすることで、現代の最も危険な感染症との闘いを持続させると同時に、米国の保健安全保障の強化にもなる」と述べ、議会による予算案を歓迎した。

米国の設定する「上限33%」について

米国は、グローバルファンドへの自国による拠出金が、全体の拠出金の33%を超えないようにするというルールを設定している。ただし、これは単年度の全体の拠出金に対する上限ではなく、2004年からの累積拠出総額に対して設定されている(以前は2009年からの累積とされていたが、近年の法案では2009年からの累積が2004年からの累積に変更され、米国の拠出可能な金額が増えることとなった)。

単年度で見た場合は、拠出額全体の33%を超えることは構わないとされており、今回の予算案でも、新たな法案を追加することなしに、このルールを維持することが上下両院いずれの案にも明記された。従って、他ドナー国・民間からの拠出が一定金額に達する限りにおいて、米国は2020年以降の3年間「最低でも13億5000万ドル」またはそれ以上の拠出ができることが明確となった。

他のグローバルヘルス関連事業予算も例年並みに

世界の感染症対策のリーダーとして、米国は様々なイニシアティブを展開している。グローバルファンドのプログラムはそれらのプログラムとも緊密に連携しているため、米国のグローバルヘルス全体への予算付けはグローバルファンドの活動にも影響を与えることになる。そのため、大統領予算教書で示されたこれらのイニシアティブに対する減額方針も懸念の対象となってきたが、今回の予算案はそれらの懸念を払拭するものとなった。

以下が各プログラムへの両院による予算案である。各プログラムの概要およびトランプ政権後の変化については、6月1日付けの本欄記事を参照。また、グローバルファンドと各イニシアティブの連携については、グローバルファンド米国委員会による記事および以下の図をご覧いただきたい。

上下両院歳出委員会が発表した主なグローバルヘルス事業予算案

  1. エイズ関連(大統領緊急エイズ救援計画PEPFAR 等)
    ● 上院 47億ドル(2018年度比101%)
    ● 下院 46億5000万ドル(2018年度比100%)
  2. グローバルファンド
    ● 上院 13億5000万ドル(2018年度比100%)
    ● 下院 13億5000万ドル(2018年度比100%)
  3. 大統領マラリアイニシアチブ(PMI)
    ● 上院 7億5500万ドル(2018年度比100%)
    ● 下院 7億5500万ドル(同上)
  4. USAID結核事業
    ● 上院 2億7500万ドル(2018年度比106%)
    ● 下院 3億200万ドル(2018年度比116%)

GF and PEPFARGF and PMIGF and USAID TB

今後の展開と国内外への影響

上下院で予算額が異なる事業については、両院それぞれでの議論、決議ののち、両院協議会にて合意した内容(金額および根拠)で一本化され、それを大統領に提出することとなる。新年度の予算審議が長引いた場合、一時的な予算措置をとることになり、その場合は、今回提出された上下院の予算案が元となるため、グローバルヘルスへの支持はいずれの場合も、維持されることとなる。

グローバルファンドの最大ドナー国である米国の拠出意向は、他のドナー国や民間財団などの拠出動向に大きな影響を与える。前述のとおり、グローバルファンドは、来年に3年に1度の増資会合(第6次増資、2020~22年の拠出額の誓約)を開催予定であり、これから各国内での議論が加速するこのタイミングで米国議会による予算案が出たことは、日本を含めた各国の増資に向けた後押しとなると言えよう。

(グローバルファンド日本委員会/米国法人日本国際交流センター
シニア・プログラムオフィサー 吉田 智子)


(注)グローバルファンドの増資会合について
グローバルファンドは、 3年に一度、三大感染症対策に必要な資金額を算定し国際社会に呼びかけて資金を調達します。これを増資(replenishment)と呼び、そのプロセスは、各国が資金拠出を表明する「増資会合」とその数か月~1年前に開かれる「増資準備会合」の二会合から成ります。第6次増資会合では、2020~22年に必要な資金を調達します。

参考:

米国連邦議会ウェブサイト 上院予算案
Senate SFOPS Appropriations report(2018年6月21日)

フレンズ・オブ・ザ・グローバル・ファイト ニュースリリース
Senate Signals Sustained Commitment for the Global Fund in the Coming Years (2018年6月 22日)

カイザー・ファミリー財団 政策レポート
House Appropriations Committee approves FY19 State & Foreign Operations (SFOPs) Appropriations Bill (2018年6月20日)
Senate Appropriations Committee approves FY19 State & Foreign Operations (SFOPs) Appropriations Bill (2018年6月22日)

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