グローバルファンド日本委員会には、超党派の議員タスクフォース(共同代表幹事:逢沢一郎衆議院議員、古川元久衆議院議員)が設けられていますが、その活動の一環として、4名の衆議院議員にご参加いただき、9月5日から11日にかけてインドネシアと東ティモールを訪問しました。 日本の拠出金がグローバルファンドを通じてどのような成果をあげているかを実地に確認するとともに、政府関係者やコミュニティの人たちとの対話を通じて現地の課題を把握することができました。また、グローバルファンドの支援と日本の二国間支援の連携についても、様々な可能性を検討。いずれの国でも、日本への感謝とともに、アジアで唯一のグローバルファンド主要ドナーとして日本がより大きなリーダーシップを発揮することに高い期待が寄せられました。
インドネシア(9月5日~7日
![201609-diettaskforcevisit-TB](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/20160906_Persahabatan-Hospital-qls5mw08y6ekincp15b50canqs0robi0w9ztzjgr1c.jpg)
![201609-diettaskforcevisit-SG](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/20160906_SecGen-qls5nn9kgdfvvc93lz3binf0yyaevji8o0wwwkcc0w.jpg)
![木原誠二衆議院議員](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/IMG_2855-qls5nfquxp5lagk0tvuaypbc7vbh5yodyzp12cnheo.jpg)
![ジャカルタ市内の保健センターで、HIV陽性者や当事者団体、支援団体の皆さん、保健センターのスタッフの話を聞く議員一行](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/IMG_2653-qls5jxshhwd62pmz9deaol3km8kaiiscto9yr9u8kg.jpg)
![201609-diettaskforcevisit-puskesmas](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/20160906_Puskesmas-Jatinegara1-qls5ovfzdl4d10gxg06s9u9ow28nxbdmi3kqgkitwg.jpg)
![バリに本拠をおく社会企業家コペルニクの共同代表中村俊裕さんに、テクノロジーを使って途上国の課題解決に取り組む話をうかがう。](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/20160910_200752-qls5lntu0yq3cz4v747o95fzto2imjmn27c0fja95s.jpg)
インドネシアは結核高蔓延国の一つで、世界で2番目に結核の発生数が多い国です。特に薬が効かない多剤耐性結核がまん延していることが深刻な問題となっていますが、治療を受けている患者さんの割合は周辺国に比べ非常に低い状態です。 結核対策の拠点病院であるジャカルタのぺルサハバタン病院を訪問し、病院関係者から概要をうかがいました。
多剤耐性結核の治療薬は無償で提供されており診断機器も整備されていますが、最大の課題の一つとしてあげられたのが、多剤耐性結核の患者さんを発見すること、治療を続けてもらうことの困難さです。同病院では、過去5年の間に928人が多剤耐性結核の治療を開始したものの、完治は半分以下で、約3割の患者さんは治療から脱落してしまうと報告がありました。地域で結核を疑われる人をみつけ、保健センターへつなぎ、診断し完治するまでを支援するコミュニティ・グループの活動が重要です。結核からの回復者でこうした活動をしている若者に話しをうかがいました。医薬品や人材など保健医療サービスを拡大する供給サイドと、保健サービスを受ける人を増やす需要サイドの両方が必要とされていることを改めて認識しました。
その他、インドネシアでは、エイズ対策を提供すべき人口層(宗教・社会的に排除されがちなセックスワーカー、男性同性愛者、トランスジェンダー、薬物使用者などのキーポピュレーション)へのアウトリーチの必要性と国民感情の間のディレンマ、島国という地理的な制約による医薬品供給網整備の難しさ、辺鄙な地域の医師不足をどう解消するか、2019年に皆保険達成を目指すインドネシアの社会健康保険制度の課題、日本のテクノロジーの活用など、忌憚のない意見交換が行われました。
東ティモール(9月8日~10日)
![ヘラ村の保健センターに集まる妊婦さん。徒歩で何時間もかけて来る。](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/DSC_0186-qls5lh8yp4hnkaqplm1qssxs1tf5ejvpas9g3k2zew.jpg)
![マラリアを媒介する蚊を識別](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/IMG_3241-qls5o706fw7h3qspqsay049ptw1bn2nsc83y0c21fs.jpg)
![雨季に入る前に屋内に殺虫剤を噴霧することが重要](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/DSC_0232-qls5nb1nzizq5034xehmncc1mseudd4wvtxfoxdfbc.jpg)
![東ティモールへの議員視察でアラウジョ首相(当時)に表敬訪問した際の写真(写真右手が山本氏)](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/20160909_PM-qls5o706fw7h3qspqsay049ptw1bn2nsc83y0c21fs.jpg)
![黄川田衆議院議員、アラウジョ首相](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/IMG_3153-qls5mgytwtujthatt1hkfjxamgj3j1ti3p1wc2m0ug.jpg)
![バイロ・ピッテクリニック。東ティモールの結核の3割近くは、この クリニックから報告があがる。](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/20160909_Bairo-Pite-qls5o706fw7h3qspqsay049ptw1bn2nsc83y0c21fs.jpg)
![豊田真由子衆議院議員、セウ保健大臣](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/IMGP0971-qls5p130ilcnf9l0v5b07wogu7x2hdz74czhd6tfwo.jpg)
![国民議会副議長主催夕食会で挨拶する濱村進衆議院議員](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/IMGP1613-qls5lwadqh28q24v5sjrwp55jzd0tpjeoup7rzgonc.jpg)
![ヌネス東ティモール国民議会副議長](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/IMGP1578-qls5o38tok2btay6cqofq57vgcjusa8uzpi0387m4o.jpg)
![日本のNGOシェアが学校保健教育を行う小学校を訪問](https://fgfj.jcie.or.jp/wp-content/uploads/elementor/thumbs/IMG_3441-qls5mmlv1u29r52mw3xbuii26rrat8fw4gyt7qdnt4.jpg)
21世紀最初の独立国東ティモールでは、かつて最大の死因の一つがマラリアでした。しかしこの10年足らずの間に、グローバルファンドの資金、WHOの技術支援などを受けて、マラリアの脅威は劇的に改善し、現在は「マラリア掃滅前段階」(pre-elimination phase)に向けた状態にあります。島国であるという地理的な要因も幸いしているかもしれませんが、医療従事者の研修、長期残効型蚊帳の大規模配布、室内の殺虫剤散布、検査の質の向上、流行の予測やアウトブレイクの管理、意識啓発などの対策を、政府が本腰をいれて実施したことが功を奏したと分析されています。ディリ郊外にあるヘラ村を訪問し、根絶にむけて、科学的な効果を確かめながら屋内の殺虫剤噴霧や蚊帳を使用している状況を視察しました。
結核では、残念ながら東ティモールの結核有病率は東南アジア最大と推定されています。発見率そのものが低く、疾病負荷の正確な状況は明らかでないと報告がありました。独立前から活動する豪州系の民間病院バイロ・ピッテクリニックを訪問し、医師、結核やエイズの患者さん、コミュニティ・ヘルスワーカーたちと対話。HIVに対して比較的オープンだったインドネシアと異なり、エイズに強い偏見がありタブー視されている事実を目の当たりにする機会もありました。課題は山積しています。
今回の視察では、日本大使館のご協力を得て、アラウジョ首相への表敬訪問、セウ保健大臣、ヌネス国民議会第二副議長ほか国会議員など、政府や議会関係者とも懇談する機会を持ちました。
アラウジョ首相は、独立の是非をめぐる国民投票後の騒乱の後、1999年に最初の東ティモール支援国会議が開かれたのが日本であったことに触れ、重要な開発パートナーである日本への感謝の念を表しました。医師でもあるアラウジョ首相は、独立から14年間の社会開発の中でも特筆すべきはマラリアの流行がここまで下がったことだと述べ、グローバルファンドとのパートナーシップに感謝するとともに、日本のグローバルファンドへの支援がどのような結果を出しているかはまさにここに具体的に表れている、誇りに思うとともに日本に感謝したいと強調されました。
一行を代表して黄川田仁志衆議院議員は、東ティモールが政治的安定を保ち着実に開発の歩みを進めていること、グローバルファンドの資金を使いマラリア対策で目に見える成果を挙げていることに敬意を表しました。また、国民の健康は国の発展にとって極めて重要であり、各国が保健に十分な予算を割り当てることが重要であると強調し、さらに日本はアジアの感染症対策に積極的に貢献していく用意があり、本視察を機会に二国間でも協力関係を強化していきたいと述べました。
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1週間の視察を通じて、グローバルファンドの仕組みが両国で大きなインパクトを与えていること、しかしながら、感染症の脅威は依然として高く、社会の発展を妨げており、多剤耐性結核などは日本への脅威ともなっていることを改めて認識しました。
報告書
グローバルファンド日本委員会 議員タスクフォース
インドネシア・東ティモール視察プログラム 視察報告 (2016年10月)
参加者
木原 誠二 衆議院議員(自民党)*
黄川田仁志 衆議院議員(自民党)
豊田真由子 衆議院議員(自民党)
濱村 進 衆議院議員(公明党)
國井 修 グローバルファンド戦略・投資・効果局長
高山眞木子 グローバルファンド渉外局ドナー・リレーションズ担当官
伊藤 聡子 日本国際交流センター執行理事、グローバルファンド日本委員会事務局長
レオン・シャオイン 日本国際交流センター プログラム・オフィサー
*インドネシア日程に参加
訪問先・懇談
【インドネシア】
プスケスマス・ジャティネガラ(HIVプログラム)
ペルサハバタン病院(結核プログラム)
中央医薬品倉庫(保健システム強化プログラム)
ウントン・スセノ・スタルジョ保健省次官他、保健省関係者との懇談
国内調整委員会(CCM)メンバーとの会合
谷崎泰明大使主催夕食会
社会起業家コペルニクの中村俊裕共同代表よるブリーフィング
【東ティモール】
ヘラ村ヘルス・ポスト(マラリア プログラム)
バイロ・ピテ クリニック(結核、HIVプログラム)
ルイ・マリア・デ・アラウジョ首相への表敬
マリア・ド・セウ・サルメント・ピナ・ダ・コスタ保健大臣他、保健省関係者との会合
デュアルテ・ヌネス国民議会第二副議長ほか国会議員との懇談
Bidau Masau小学校訪問(学校保健教育)
山本栄二大使主催昼食会
JICA青年海外協力隊員、国際援助機関・NGO邦人職員の皆さんとの懇談