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国連総会のサイドイベント「包摂的な保健システム:PPR、UHC、結核対策の鍵」開催報告

2023年10月13日
国連総会のサイドイベント「包摂的な保健システム:PPR、UHC、結核対策の鍵」開催報告

2023年9月にニューヨークで開催された第78回国連総会中、「パンデミックの予防・備え・対応(PPR)」、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」、「結核」 を含む、保健に関する3つのハイレベル会合が開催されました。グローバルファンド日本委員会では、この機会をとらえ、欧州、米国のグローバルファンド委員会と共に「包摂的な保健システム:PPR、UHC、結核対策の鍵」と題したサイドイベントを開催しました。

ハイレベル会合の3つのテーマを繋ぐことを目的としたこのサイドイベントでは、UHC、PPR、そして結核対策を加速させるための共通の土台として、人間中心の包摂的な保健システムの重要性や、三大感染症対策を通じてどのようにその目標達成に貢献できるかが議論されました。ブディ・サディキン インドネシア保健大臣による基調講演の他、日米欧の政府関係者、グローバルファンドやグローバルファンドの支援国から専門家をお招きし、パネルディスカッションを実施しました。

概要は以下のとおりです。(ページ下部にて登壇者一覧とアーカイブ動画をご覧いただけます。)


基調講演

サディキン保健大臣による基調講演では、主にプライマリ・ケアを重視する近年のインドネシアの取り組みについて紹介がありました。同国では、1969年の時点で政府が所有するプライマリ・ケアの診療所が1万カ所あったが、今、それを集落レベルのプライマリー・ヘルスケアの施設30万カ所にまで広げようとしていること、また、同国では、医療サービスやその提供の標準化とその促進、そして予防に重点を置くようになったことについて触れました。また、新型コロナウイルス感染症への対応では、グローバルファンドからの支援を受けた結果、約半年間でゲノム解読ラボを2から56カ所に増やし、以前は9カ月で140だったシーケンス能力を、1カ月で5,000まで増やした事例を挙げ、インドネシアを支援し続けているグローバルファンドと、グローバルファンドの設立契機となった日本政府に感謝の意を表しました。

 

パネルディスカッション

冒頭、コリンズ米国グローバルファンド委員会 理事長によるモデレーターとパネルの紹介があり、コリンズ氏は、これからのグローバルヘルスにおいて議論されるべき課題は、新たな縦割り組織の設立を抑止できるのか?どのようにデジタル技術の活用を促進できるのか?新たなパンデミックにどう対応できるのか?そして、毎年何百万人もの命を奪い続けている三大感染症との闘いを継続しながら、どのように新たな脅威への対応をすることができるのか?といったことであろうと述べました。その上で、エイズ、結核、マラリアが猛威を振い続ける限り、健康の安全保障やUHCの達成は実現し得ないであろうと述べました。

 

続くパネルディスカッションでは、モデレーターを務めたロバロ 前ギニア・ビサウ公衆衛生大臣が冒頭、グローバルファンドは過去20年間で、エイズ、結核、マラリアの3つの疾病の死亡率削減や発症予防に貢献しているだけではなく、保健システム強化やコミュニティを活動の中心に据えることができるユニークなパートナーシップであることを実証してきたこと、また、このパートナーシップの連帯を維持し、公平性を活動の中心に据えなければ、人間の安全保障が実現されることはないと述べました。

ワンドワロ グローバルファンド結核部ヘッドは、新型コロナウイルス感染症が流行した際に、グローバルファンドは迅速にコロナ対策支援を開始したのみならず、エイズ、結核、マラリアに対するコロナの影響も緩和できるように対応したことに触れました。特に結核とコロナは同じ呼吸器疾患であることから、例えば結核とコロナの両方を検出できるデジタルX線装置の導入を促進するなど、実に4億ドルもの結核とコロナ双方の対策に資する支援を実施し、多くの国での検査能力向上に貢献したと述べました。また、パンデミックの間に加速化した多くの革新的技術が今後益々拡大していくことに期待を示しました。

ワンドワロ氏はさらに、グローバルファンドの真の強みは、資金供与だけではなく、資金の流れに様々なメリットが伴うことだと強調しました。例えば、国が自ら対策を立案するオーナーシップ、市民社会や当事者コミュニティを意思決定に巻き込む包摂的なガバナンス、そしてグローバルファンドが形成する巨大な医療用品マーケットにより、医薬品や機器の価格が低価格化すること、などを例として挙げました。

次に、赤堀 日本外務省地球規模課題審議官は、今年のG7広島サミットは、GHA(グローバル・ヘルス・アーキテクチャー)、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)、R&Dの9文字にまとめられる、と述べました。特にUHCに関しては、日本では1961年という早い段階で国民皆保険制度を達成したことを紹介し、終戦後の時期まで国民病だった結核を克服すべく保健システムを強化したことがUHC達成に貢献した、と強調しました。また、日本がUHCを重視するのは、グローバルヘルスが恐怖からの自由、欠乏からの自由、そして尊厳ある生活を営む能力という3つから構成される人間の安全保障に直結するからであると述べました。

ペース 米国保健福祉省国際問題担当次官補は、今回の国連総会では、結核、UHC、PPRだけの話をしているのではなく、これらの課題を底上げする保健のこと、アクセスのこと、そしてシステムやアーキテクチャーの重要性についての議論であることを強調しました。また、これらの課題に対して、総合的なアプローチ、即ちシステム・アプローチをとることが重要であり、それ政権の優先事項であると述べました。

 

 

また、アンプロー フランス外務省グローバルヘルス特使は、グローバルファンドに代表される多国間主義の重要性を強調しました。

最後に、ゲレッツェン欧州委員会人間開発・移住・ガバナンスと平和部ディレクターは、EUのグローバルヘルスへの取組みの3つの原則は、保健システム強化、持続可能性を達成するための協調と相乗効果の必要性、そして公平性の原則を再確認することであると述べました。特に保健システム強化に関しては、パンデミックは、私たちにUHCと健康の安全保障という2つの目標を達成するためには、健康、公平性、そして疾病中心ではなく患者中心を目指した、強靭な国レベルの保健システムが如何に不可欠であるかを如実に示したと述べました。

 

このように、本サイドイベントでは、UHC、PPR、そして結核対策の土台は人間中心の包摂的な保健システム強化であり、また三大感染症対策を通じてこの目標達成に貢献できるということが確認できたと共に、多くのパートナーがこれに取り組んでいることを改めて認識する機会となりました。

 


 

♦アーカイブ動画(オリジナル:英語)の視聴はこちら↓♦

 

♦アーカイブ動画(日本語の同時通訳バージョン)の視聴はこちら↓♦

 

フランス語の同時通訳バージョンの視聴はこちら | ドイツ語の同時通訳バージョンの視聴はこちら

 

【開催概要】

「Inclusive Health Systems: Key to PPR, UHC and TB response」

 包摂的な保健システム:PPR, UHC, 結核対策の鍵

日 時:2023919日(火)23:00~25:00(日本時間)| 10:00~正午(米国東部夏時間 EDT)
会 場:ニューヨーク/オンライン(YouTube Live Stream
主 催:日米欧のグローバルファンド委員会(Friends of the Global Fund) による共催
登壇者

開会挨拶
Ms. Kazuyo Kato
Executive Director, Japan Center for International Exchange (JCIE/USA)
(加藤和世 米国法人日本国際交流センター エグゼクティブ・ディレクター)

基調講演
Hon. Budi Gunadi Sadikin
Minister of Health of the Republic of Indonesia(インドネシア保健大臣)

パネル
Hon. Magda Robalo
President and co-founder of the Institute for Global Health and Development; former Minister of Health of Guinea-Bissau; Vice-Chair of the Global Fund’s Ethics and Governance Committee and an Alternate Board Member of the GFATM for West and Central Africa (前ギニア・ビサウ公衆衛生大臣)(モデレーター)

Dr. Eliud Wandwalo
Head of Tuberculosis, The Global Fund (世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)結核部ヘッド)

Amb. Takeshi Akahori
Director-General for Global Issues, Ministry of Foreign Affairs
(赤堀 毅
 日本外務省地球規模課題審議官)

Hon. Loyce Pace
Assistant Secretary for Global Affairs, United States Department of Health and Human Services(米国保健福祉省国際問題担当次官補)

Ambassador Anne-Claire Amprou
French Ambassador for Global Health(フランス外務省グローバルヘルス特使)

閉会リマークス
Ms. Erica Gerretsen
Director, Human Development, Migration, Governance & Peace, European Commission [on behalf of Jutta Urpilainen, European Commissioner for International Partnerships] (欧州委員会人間開発・移住・ガバナンスと平和部ディレクター)

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