マーク・ダイブル事務局長が、就任後アジア初の訪問国として3月11-12日にかけて日本を訪問しました。3月初めに就任したばかりの國井修戦略投資効果局長、日本との関係強化に長年にわたり尽力してきたクリストフ・ベン渉外局長も同行し、3人の幹部揃っての来日となりました。
日本滞在中には、田村憲久厚生労働大臣、松山政司外務副大臣、自民党の石破茂幹事長への表敬のほか、議員タスクフォース(代表幹事:逢沢一郎議員、古川元久議員)の会合で14名の国会議員と懇談、また世界基金支援日本委員会の会合やその他の会合で、省庁、研究者、企業、NGOなど各界のリーダーとの意見交換を行いました。また、ダイブル事務局長は2009年まで米国の大統領緊急エイズ救援計画のトップを務めていたことから、ルース駐日米国大使とも懇談し、外務省幹部や日本の国会議員、研究者を交えて、世界基金や感染症対策における日米協力について意見交換をいたしました。
諸会合における主要なメッセージは以下の通りです。
日本の皆様への感謝
日本は、世界基金の誕生の地である。G8九州沖縄サミットにおける日本のリーダーシップがなかったら、世界基金は存在していなかっただろう。そして870万の命を救うという偉業は達成されなかった。基金の設立から今日に至るまで、日本の皆様の支援に心から感謝したい。世界基金という仕組みを通じて、日本の税金がアフリカやアジアの人々の命を救うために使われている。支援の対象国には、そのことを常に強調している。
JICAの技術協力への期待
日本からは、資金拠出だけでなく、JICAの技術協力も多としている。新しく導入した資金供与方式を成功させるためには、実施国における案件形成のプロセスや実施面でJICAとのいっそうの連携が必要になってくる。JICAは、現地の組織の能力強化、モニタリング・評価の分野で高い専門性をお持ちであり、ミャンマーを初め多くの国でさらなる連携を図っていきたい。
企業セクターとの連携
経済界とのパートナーシップは、世界基金の特長といってよい。日本企業では、武田薬品、住友化学、ソニーなどすでに多くのパートナーシップが生まれている。ご支援に感謝したい。国際的に見ても、企業による資金的な支援、商品やノウハウの現物提供、アドボカシーへの協力、現地の感染症対策に世界基金と企業が共同投資するスキームなど、様々な入り口がある。更に最近は、個人富裕層からの寄付の受け入れ、インパクト・インベストメントとの連携など、革新的な手法も考案しているところである。
理事会における日本のリーダーシップ
世界基金はlearning institution (常に学び自己変革していく組織)である。世界中の人の知恵を結集させて、より効果的・効率的に資金を投入し人命を救えるようになるために、常に組織改革を続けてきた。日本政府は、理事会に単独議席を持つ主要ドナーとして、この改革を牽引してきた。ぜひ今後も、理事会で強い発言力を持つドナーとして世界基金をリードしていっていただきたい。
転換点の今、さらなる一押しを
今、三大感染症対策は、歴史的な転換点を迎えている。沖縄サミットで感染症基金の構想が持ち上がった当時、三感染症はものすごい勢いで拡大しており、緊急事態であった。しかし10年余を経て、世界基金やその他の感染症イニシアティブを通じて巨額の資金が投入され、また科学の進歩による改善もあり、感染率を低く抑えられるようになるまであと少し、というところまで来た。だが、安堵感が、関心の低下を生んでいるのではないか。今ここで対策の手を緩めれば、感染症の勢いはぶり返し、これまでの投資が水泡に帰しかねない。我々が、今、投資をせずに孫子の代にまで課題を残せば、さらに長期にわたって巨額の資金が必要となり、そして多くの人命が失われる。今こそ、さらなる一押し(the Big Push)が必要とされている。引き続き、日本の強いコミットメントを期待したい。