世界基金/マグナムフォト共同制作写真展「Access To Life 命をつなぐ」開催の最後の週末を迎えた9月18日(土)、エイズやセクシュアル・マイノリティを取り上げ、1996年の初演から今なお根強い支持を集めるミュージカル「RENT」のキャストであるソニンさん、田中ロウマさん、そして実際にHIV陽性者の治療にあたっている本田美和子医師をゲストに迎え、エイズの予防啓発に取り組んでいる若手企業人のひとり吉田智子さんの司会のもと、トークセッションを行いました。週末の夜にも関わらず、70名以上の方が会場を埋めました。本企画は有志・学生NGOによる自主企画として開催されたものです。
トークセッションの前に写真展会場を回ったソニンさんと田中ロウマさんは、被写体となったHIV陽性者一人ひとりの表情を見つめながら、解説に耳を傾け、また、説明パネルの前で足を止めては、その国の経済事情、社会的背景、それぞれのHIV感染経路や患者の治療の経緯なども熟読していました。
10月7日に初演を迎える「RENT」でHIV陽性者のアーティスト役を演じる二人は、写真を実際に見た印象を「実際にお会いしたかのようにリアルに感じた」(ソニン)、「この気持ちは(RENTの役作りに)『使える』と思う。今の自分に必要な刺激だった」(田中ロウマ)と話し、互いのコメントに深くうなずきました。
二人が出演する「RENT」は1989年から90年にかけてのニューヨークを舞台にしたミュージカルで、セクシャル・マイノリティや薬物依存、エイズをテーマにしています。当時も治療薬はあったものの、現在では複数の抗HIV薬を同時に服用する多剤併用療法が開発されるなど、その治療法は格段の進歩を遂げています。これを知るソニンさんは、「RENTはHIV陽性者たちのストーリーですが、最後は『絶望』ではなく、『希望』で終わるんです。(作者の)ジョナサン・ラーソンは、この未来を予見していたんじゃないかな、と思うんです。HIVに感染したとしても生きられるんだ、という希望がある未来を」。
ソニンさんは、薬物依存やエイズ、性同一性障害などのテーマを取り上げるテレビ番組にレビュラー出演しており、番組内で様々な経験をしてきました。RENTへの出演が決まる以前から、エイズへの関心を持っていたそうです。「日本ではHIVとエイズの違いも知らない人が多いですよね」と、パネリストや会場を見渡しました。これを受け、アメリカで生まれ育ち、予防センターでのボランティア経験もあり、HIV陽性の友人がいるなど、エイズがとても身近な問題だったという田中ロウマさんは、会場に向かって問いかけました。「会場のなかで、HIVとエイズの違いがわからない人、どれくらいいますか?」(1/3ほど手が上がる)。「今日ここで聞いたことを、直接でもインターネットででもいいから、発信してください」。
本田医師からは、実際にHIV陽性者を診察する立場からの貴重な経験をお話しいただきました。「患者さんにはまず、『味方になってくれる人はいる?』と聞きます。自分の状態を話せる人がいる、ということがとても大事なんです。驚くことに、いまだに『イス取りゲームでうつりますか?』と聞かれることがある。だから皆さん、もし誰かがあなたに『自分はHIVに感染している』と打ち明けてくれたとしたら、それはあなたを本当に信頼している、ということなんです。味方になって、支えてあげてください」。
最後に、「自分たちができること」について、ソニンさんは「私に病気を治すことはできないけど、知識を広めることはできる」として、田中さんと同じく、来場者に今日の経験を周囲と語って欲しいとメッセージを送りました。トークセッション終了後には、9月20日からニューヨークで開催される国連MDGsレビューサミットに向けて、パネリストと来場者が一緒になり、 世界の貧困削減にむけた世界的キャンペーン ※STAND UPを行いました。
※STAND UP TAKE ACTIONとは
一人ひとりが「立ち上がる」ことで、「貧困を終わらたい」という意志を世界のリーダーたちに示す世界最大級の同時アクションです。
パネリスト
モデレーター
吉田智子(サンスター株式会社広報室)
AccessToLife-スタンドアップユース-実行委員会・参加団体
アデオジャパン(ADEO Japan)
日本国際保健医療学会学生部会 jaih-s
HAATAS(HivAidsActionTeamAtShare)
YDPジャパン・ネットワーク YDP Japan Network
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