結核とは?
どんな病気?
結核とは、結核菌という細菌が主に肺に入ることで起きる感染症です。初期症状は咳、痰、微熱などで風邪によく似ていますが、進行すると、体重が減る、だるさや胸の痛みを感じる、血を吐くといった症状が見られ、さらにひどくなると呼吸困難に陥って死に至ることもあります。
どうやって感染するの?
感染者が咳やくしゃみなどをすることにより、結核菌が体外に排出され空気中に漂い、それを周囲の人が吸い込むことにより感染します。世界人口の約3分の1が結核菌に感染していると言われていますが、感染した全ての人が発病して結核という病気になるのではなく、そのうち1〜2割のみが発病すると言われています。しかし、糖尿病や栄養失調、HIVによる免疫低下など健康問題を抱える人々、高齢者、生活困窮者など社会的経済的弱者は発病のリスクが高いとされています。
どうしたら防げるの?
結核の重症化を防ぐワクチンであるBCGは、乳幼児への結核予防として広く接種されています。感染しても発病しないよう、規則正しい生活や栄養バランスのよい食事、十分な睡眠などを心がけ、免疫力を低下させないことも重要です。定期的な健康診断と、咳が続いた場合には早めに医療機関を受診することで早期発見・早期治療につながります。
どうしたら治るの?
かつては有効な治療法がなく、不治の病とされていましたが、現在では3〜4種類の治療薬を6ヶ月以上正しく飲み続ければ治るようになりました。近年、直接服薬確認療法(Directory Observed Treatment Short-course)、通称DOTS(ドッツ)*と呼ばれる治療方法が効果を上げています。
*DOTS(Directly Observed Treatment, Short-course:直接服薬確認療法)とは、6〜8ヶ月で治療が完了する短期で有効な抗結核薬を用い、患者が適切な容量の薬を服用するところを医療従事者が目の前で確認し、治癒するまでの経過を観察しながら治療を進める治療方法。
どのくらい広がっているの?
予防や治療アクセスの向上により、2015年から2023年の間に、世界における結核罹患率は8.3%減少したと言われています。しかし2050年までに50%減らすという世界結核終息戦略の目標には程遠い状況です。2023年には約1080万人が新たに発病し、推定125万人が結核によって命を落としました。そのうちHIV陽性者は16万1000人でした。毎年新たに結核を発症する人のほとんどは、結核の高負担国30カ国に集中しており、2023年は世界の結核患者数の87%を占めました。インド(26%)、インドネシア(10%)、中国(6.8%)、フィリピン(6.8%)、パキスタン(6.3%)で、これら5カ国で世界の結核患者数の56%を占めました。
HIV/エイズとの重複感染*や、薬が効かない多剤耐性結核が全世界で急速に広がっており、喫緊の課題となっています。
*免疫機能が低下したHIV感染者は、何十倍も結核を発病しやすく、HIV合併の結核は治療が困難。
日本での広がりは?
日本でも戦後すぐの時期まで、結核は最大の死因でした。将来ある多くの若者の命が結核によって奪われ、樋口一葉、石川啄木、正岡子規、中原中也、堀辰雄などの歌人や作家が結核に倒れています。今でも、年間約1万人以上が新たに発症し、年間1500人以上が亡くなっており、結核は日本における主要な感染症です。ただ亡国病といわれた時代から脱し、2021年以降、結核低まん延国に分類されています。
日本における新規の結核患者は高齢者に多く、65歳以上が全体の7割を占めています。また、近年では若年の外国生まれの患者の占める割合が増加しており、20-29歳の新規患者の8割以上を占めています。結核は今なお身近な病気であり、当然のように他の人口にも伝播していく可能性もあります。より一層の感染予防対策を必要としています。