感染症を知るーなぜ、エイズ・結核・マラリアか?
エイズ、結核、マラリアは、毎年230万人以上もの命を奪い、「世界の三大感染症」と呼ばれ、長年にわたり人びとに様々な障害をもたらしてきました。21世紀に入り、グローバルファンドをはじめとする多くの国際的な支援の結果、感染拡大の勢いは低下し、死亡数も減少してきていますが、いまだに多くの低・中所得国で主要な死因の一つであり続けています。
この三つの感染症は、多数ある新興・再興感染症の中でも感染拡大を制御できず世界規模で長期にわたり流行している疾病です。予防や治療の手段があるにもかかわらず、その費用が高いことや社会的・文化的な背景により、貧しい人々や社会的に弱い立場におかれた人々に予防・治療のサービスが届いていません。さらに、多くの人々が感染し健康を害することによる労働力の減少、労働生産性の低下、医療費の増加、教育機会の減少など、経済や社会セクターに甚大な損失をもたらしています。こうした背景から、集中的に対応すべき疾病として、グローバルファンドの支援対象となっています。
さらにグローバルファンドは、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を受け、2020年3月からは新型コロナ対策も守備範囲に加え支援をしています。新型コロナへの危機対応のために三大感染症の検査や予防、治療に停滞が生じることを防ぎ、同時に、20年にわたる三大感染症対策支援で100カ国以上に構築した感染症への対応の基盤を新型コロナ対策にも活かし、検査や治療薬、医療用酸素、医療従事者のための個人防護具などを各国が調達できるよう支援しています。
新型コロナで明らかになった通り、国境を超えた人の移動がより一層活発となった現代社会では、感染症は地球規模に広がりやすくなっています。新型コロナ以外のエイズ、結核、マラリアは現在の多くの日本人にとって、あまり身近な病気ではないかもしれませんが、決して対岸の火事ではなく私たちの問題でもあります。
拡大の勢いが低下してきている今、世界規模での対策を継続して感染症を封じ込められるか、あるいは、途中までの成果に安堵して手を緩め感染の勢いがぶり返すのを許すか、感染症との闘いは今、歴史的な岐路に立っています。