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グローバルファンドの「新型コロナ現況レポート」3月号 和文抄訳 

2021年3月30日
グローバルファンドの「新型コロナ現況レポート」3月号 和文抄訳 

グローバルファンド「新型コロナ現況レポート」2021年3月

出典:COVID-19 Situation Report #40 (March 12, 2021) 2021年3月29日アクセス

グローバルファンドは、毎月、新型コロナウイルス感染症の現状とグローバルファンドの活動を伝えるSituation Report (新型コロナウイルス現況レポート)を発行しています。グローバルファンド日本委員会では、2021年3月より、毎月のレポートを日本語で抄訳しグローバルファンドの対応の現状をご紹介します。

 

概要

世界の新型コロナウイルス感染症の状況(2021年3月12日現在、出所:WHO)

死亡者数:262万1046人
感染者数:1億1805万8503人

この状況に対するグローバルファンドの対応

承認済資金合計:9億8800万ドル(約1080億円)(うち8割弱がサハラ以南アフリカ向けの支援)(※1)
グローバルファンドの支援を受ける国の数:106か国及び14の広域プログラム

グローバルファンドの「新型コロナウイルス感染症対応メカニズム」(以下、「コロナ対応メカニズム」)にこれまでに集まった資金合計:37.6億ドル (※2)

 

グローバルファンドは新型コロナの感染拡大の初期から迅速に対応し、これまでに、106の国と14の広域プログラムを対象に約9.8億ドルを承認しました。各国はこの資金により、1)全国における新型コロナ対策の強化、2)コロナによるロックダウン等によりエイズ、結核、マラリアの各プログラムが受ける影響の軽減、3)保健やコミュニティのシステムの早急な改善、といった多様なプログラムを実施しています。

 

グローバルファンドの支援状況

グローバルファンドがこれまで築いてきた広範な保健及びコミュニティのネットワークや調達・配布システムを最大限活用し、新たな新型コロナウイルスに係るツールや医薬品の配布、研修を100か国以上で実施しています。

(1)最前線で活動する医療従事者の保護

グローバルファンドは、マスク、手袋、ガウンといった個人用保護具(PPE)の購入に資金を提供しています。各国は、これらPPEを現地調達することも、グローバルファンドの共同調達メカニズムもしくはwambo.orgから価格保証済の高品質な製品を注文することもできます。

コロナ対応メカニズムからPPE購入への配分額:2億7600万米ドル(最前線の医療従事者用PPE1億キット)
wambo.orgを通じたPPE購入:53ヵ国

(2)診断・検査

グローバルファンドは、PCR検査と迅速抗原検査の組み合わせを推奨するとともに、国家検査戦略の開発や実施を支援しています。 さらにグローバルファンドは、結核の診断やHIVウイルス量のテストを実施するための施設として建設されたラボを利用して、新型コロナウイルスに対応しています。低・中所得国に1万台を超えるジーン・エキスパート(GeneXpert、遺伝子検査システム)を設置し、これを操作できる技術者の能力向上を図ることで、パンデミックの発生以降、当該国の新型コロナウイルス検査能力を大幅に向上させることができました。

コロナ対応メカニズムから診断検査への配分額:1億8200万ドル
受注数:86か国からPCR検査と迅速抗原検査の双方で計2010万件の注文完了

自動PCR検査機器:83か国から370万件
迅速抗原検査:31カ国から1480万件
手動式PCR検査機器:160万件

 


(3)治療

グローバルファンドは、WHOが推奨するコルチコステロイド薬の使用を支援しています。また2020年8月から、グローバルファンドが運用する調達サイトwambo.orgで酸素装置の調達が可能になっています。これまでに、グローバルファンドの資金を使った酸素発生器、医療用酸素、シリンダー等の調達は最大1100万ドルに上ります。

 

各国モニタリングの状況

グローバルファンドの支援事業の進捗状況をモニタリングしている現地の機関が実施プログラムの潜在的リスクや中断のリスクを特定するために、隔週でオンライン調査(※3)を実施しており、次のことが分かっています。(2021年3月1日現在)

(1)ロックダウン

グローバルファンドが支援する国の38%が全土ロックダウン中、25%が局地的にロックダウンしており、グローバルファンドが実施するプログラムに影響が出ています。

(2)保健サービスへの影響

結核とマラリアのサービスへの悪影響は昨年秋からやや改善傾向にありましたが、2021年2月15日以降緩やかに悪化しています。結核はロックダウンで交通手段がないことや受診者そのものが減ったこと、マラリアは蚊帳や室内残留性スプレー、季節性マラリアの化学予防(SMC)キャンペーンの遅延が理由と考えられます。しかし、3疾患を比較すると、マラリアの保健サービスデリバリーは、支援対象のうち46%の国で、中断はない、もしくは少ないと報告されており、エイズ(33%)、結核(34%)に比べ悪影響が少ないことがわかっています。

(3)主要医薬品供給への影響

エイズ、結核、マラリアの主要医薬品の供給リスクは、昨年秋からやや改善傾向が続いていますが、直近(2月15日~3月1日)で再び微増しています。5%の国が抗HIV薬の不足、4%の国が結核薬の不足を報告しています。

(4)検査サービスへの影響

2020年11月以降改善傾向にあり、エイズや結核の検査サービスへの影響はない、もしくは少ないと報告した国が51%まで増えました(2020年6月時点では同35%)。

 

図表はいずれもCOVID-19 Situation Report #40 (March 12, 2021)より転載。

 

事例紹介 コロンビア「新たなアプリでこの状況に立ち向かう」

(写真左)ラテンアメリカ諸国の中で新型コロナの影響を最も受けるコロンビアの首都ボゴタで、HIV活動家兼コミュニティ・ヘルスワーカーとして活動するケニー・エスピノーザ氏(立っている男性)。男性同性愛者、トランスジェンダーの人々、セックスワーカーや隣国ベネズエラからの移民といったエイズ対策のカギとなる人々が、コロナ下で取り残されないよう、保健やHIVに関するカウンセリングやワークショップを行っています。

(写真右)グローバルファンドが支援するTeCuiadmos.comと呼ばれるアプリケーション。コロナ対応でヘルスセンターのヘルプラインが崩壊し、治療や予防のサービスにアクセスできない中、アプリを使うことで、HIVテストの受診予約、コンドームなどの予防具の配達注文、コロナやその他疾患に関する情報収集等ができます。2020年8月~12月までの4か月でHIV検査予約件数は2200件、予防具の注文者数は1400人を超えました。現在首都ボゴタを含む7都市で利用されています。

 


※1(訳注)円換算額は、2021年3月30日為替レート(1USD=109.67円)で算出。承認済み9.88億ドルのうち2.29億ドルは、コロナ発生前に各国に供与済みの支援金のうちコスト削減などにより生じた節約資金の使途変更を認め、柔軟にコロナに対応したもの。残りの7.59億ドルは、新たに設けた「コロナ対応メカニズム」で各国から新たに申請を受け付け、供与を承認した額。

※2 (訳注)「コロナ対応メカニズム」は総額50億ドルの資金ニーズに対応するためのグローバルファンドの資金調達・配分のメカニズム。最初の5億ドルはグローバルファンドの既存の予算から充当したが、その他は新たにドナーから資金を調達中。2021年3月に予算成立した米国の35億ドルを含め、これまでに集まった資金は37.6億ドル。

※3  各国状況を厳密に評価することを目的とした調査ではなく、国内ステークホルダーの見解に基づく、未検証のデータ。

 

本稿は、グローバルファンドのCOVID-19 Situation Report をグローバルファンド日本委員会の責任において抄訳したものである。和文と英文に乖離がある場合は、英文を正文とする。

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