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15年あれば、たくさんのことができる

2015年5月20日
15年あれば、たくさんのことができる

グローバルファンドのナンバー2である官房長を務めるマライケ・ヴェインロクス氏が、エチオピアのアジスアベバで開かれた「グローバルファンド・パートナーシップフォーラム」(注)の閉会式で、感動的な演説を行いました。

公衆衛生の脅威としてのエイズ・結核・マラリアの流行を2030年までに終結に導くという目標―あと15年しかない中でそんなことは不可能だと思いがちだが、今までの15年でどれだけの変化を起こせたかよく思いだしてほしい、とアフリカの政府や市民社会の人々に向けて呼びかけています。

スピーチはこちらから
A Lot Can Happen in 15 Years  by Marijke Wijnroks, Chief of Staff at the Global Fund
(Global Fund Blog, May 13, 2015)

日本語訳(仮訳)も、以下でご覧いただけます。

Remarks delivered at the closing session of the 7-8 May 2015 Partnership Forum in Addis Ababa, Ethiopia. Photo: The Global Fund

15年あれば、たくさんのことができる

マライケ・ヴェインロクス(グローバルファンド官房長)

2015年5月7-8日にアジスアベバで開かれたパートナーシップフォーラムの閉会式における演説 (Global Fund Blog 2015/05/13)

 

以前、グローバルファンド理事会のメンバーだった時にも度々お話ししてきましたが、私が知る限り、グローバルファンドのように、自分たちへの批判を聞くために会議に人を招く組織は、他にはありません。実際にこの2日間、ここはもっと改善できるはずだという意見を聞き、どうしたら現実のニーズにもっと対応できるかという助言に耳を傾けてきました。

さらに、今後の戦略策定にあたって、何が最も重要な要素なのかということについても、明確で力強い提案がありました。次の5年間の戦略を策定するうえで、大きな助けとなりました。皆さんの英知と助言には深く感謝しています。次期戦略は、公衆衛生の脅威としてのHIV、結核、マラリアの流行を2030年までに終結に導くというビジョンの実現に向けた重要なステップになります。

この目標は、気が遠くなるほど困難な課題です。しかも、2030年まではわずか15年しかありません。これほど野心的な目標を達成するのに十分な時間とは言えないでしょう。ほとんど不可能にさえ思えます。

でも一方で、15年あればたくさんのことが可能でもあります。15年前を振り返ってください。

いまからちょうど15年前、国連安全保障理事会はHIVの集中討議を行いました。世界の安全保障の脅威として疾病を取り上げたのは安保理史上、このときが初めてです。1年後の2001年には、HIVに関する国連エイズ特別総会が開かれました。私は、あの総会で2つのことが印象に残っています。

一つ目は、ボツワナの大統領が演説の中で、ボツワナは国家消滅の危機に瀕していると語ったことです。成人人口の3分の1以上がHIV陽性となり、利用できる治療法もない状態で、大統領はどうすれば国を運営していけるのか、どうすればボツワナは生き延びられるのか、まったく展望がなかったのです。

二つ目は、皆さんはすでに忘れているかもしれませんが、最終的な宣言の中に治療の文言は何とか、かろうじて入っただけだったということです。多くの人が、低・中所得国で治療のアクセスを確保するなどということは現実的だと思っていなかったし、それを進めたいと望んでもいませんでした。2003年に3 by 5計画 ― 2005年までに低・中所得国のHIV陽性者300万人に抗HIV治療を提供する計画 ― が始まったときには、多くの人がWHOとUNAIDSは正気を失ったのではないかと思いました。それはユートピア的な目標に過ぎず、実現できるわけがないと見られていたのです。

PEPFAR(米大統領エイズ救済緊急計画)とグローバルファンドが発足してから、まだ15年もたっていません。

当時の思い出はそれぞれの人にあります。私以上に皆さんの方がもっと多くのことを覚えているはずです。

病院は患者であふれかえっていました。患者は2人で1つのベッドを共用し、床にも寝ていたのです。だれにも看取られることなく人々は亡くなっていきました。

私が会ったHIV陽性の母親たちは、子供のために作ったメモリーブックを見せてくれました。わが子を残して死んでいかなければならなかったのです。私も母親の一人として、彼女たちの話には深く心を揺さぶられました。

グローバルファンドは今も、理事会の冒頭にエイズ、結核、マラリアで亡くなったすべての人を偲び黙祷を捧げています。しかし、初期の理事会ではそれは、前回の会合には出席していたのに、その後、亡くなった理事会メンバーに対する黙祷でした。

当時も結核やマラリアの治療は受けることができたのですが、状況は悲惨なものでした。毎年、何百万もの人が感染し、何百万もの人が亡くなっていました。

行く手に厳しい試練が待ち受けていることは重々、承知しています。しかし、過去を振り返って、どんな成果をあげてきたのかを確認し、力を合わせて素晴らしい進歩を遂げてきたことに誇りを持つことも大切です。

HIV検査で陽性であっても、それはすでに死の宣告ではありません。今は治療へのアクセスがあるので、何百万もの人が生きて活躍しています。HIVの新規感染数も、HIV関連の原因で死亡する人も、劇的に減少しました。

結核による死者も減っています。期待通りではないかもしれませんが、大きく改善しています。

マラリアの感染者数、およびマラリア関連の死者数も劇的に減少しました。わずか15年前には厳しい流行に苦しんでいた国々の中にも、いまやマラリア排除計画を具体的に検討するところにまでこぎ着けた国が増えています。

この15年間、力を合わせて、素晴らしい進歩を遂げ、国際保健の大きな改善という成果をあげてきました。歴史的にも例のない成果です。このエネルギーと約束遂行の意思、そして協力を持続させることができれば、次の15年間で必ず、HIV、結核、マラリアに打ち勝つことができると私は確信しています。

この長い旅に加わるすべての皆さんにお礼を申し上げます。

(仮訳)


注) グローバルファンドの「パートナーシップフォーラム」は、グローバルファンドの参加型意思決定の仕組みの一つ。政府や非営利組織、コミュニティの代表など、グローバルファンドの支援に関係する多くのステークホルダーが一堂に会し、将来の戦略や方針作成に参加する。

地域会合とe-フォーラムを通じて集まった世界各地からの意見やアイディアは、提言にまとめられてグローバルファンド理事会に提出される。理事会は 2016年春に、グローバルファンドの今後の戦略と方向性を決める次期5か年計画(2017-2021)を策定する予定であり、フォーラムはそのための開 かれたコンサルテーション・プロセスの一環として開かれる。

 

 

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