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世界基金 エボラ出血熱への対応について

2014年9月12日
世界基金 エボラ出血熱への対応について

西アフリカのエボラ出血熱の流行国は、エイズ・結核・マラリアの流行国でもあります。エボラは世界基金が直接的に支援する対象の疾病ではありませんが、密接に関係するため、公衆衛生情報の共有や、エイズやマラリア・プログラムの従事者のエボラ対策への応援派遣、さらに保健システムへの投資など、世界基金でもエボラ対策への対応を求められ、また柔軟な対応で貢献をしています。

9月8日付の世界基金ニュースフラッシュに「エボラ出血熱への対応」「システム強化の必要性」の2記事が掲載されましたので、和文でご紹介します。


世界基金ニュースフラッシュ(仮訳)
2014年9月8日

エボラ出血熱への対応

エボラ出血熱への対応
© afreecom/Idrissa Soumaré

西アフリカのエボラの流行が世界の関心を集めている。地方の村に限定されていたこれまでの流行とは異なり、今回は人口の多い都市部にも広がっている。しかも、感染した人の50%以上が極めて短期間のうちに死亡しているのだ。これまでにすでに2000人以上の死亡が報告され、さらに死者は増える見通しだ。今回のエボラの流行は,緊急対策の必要性のみならず長期的な保健基盤強化の問題も提起している。世界基金は世界保健機関(WHO)のエボラ対策ロードマップ上の主要組織ではないが、流行動向の監視を続け、流行国のパートナー機関と協力して事態に対応していく。

ギニア、リベリア、シエラレオネで、世界基金の支援を受けているプログラムは今回の流行により厳しい状況におかれている。感染した人の血液や体液に触れることでエボラウイルスが感染することへの恐怖から、病院や診療所で他の病気の治療を受けることを控える患者もいる。また、240人を超える医療従事者の感染が報告されていることから、出勤を恐れる医療関係者も多い。その結果、ただでさえ脆弱な保健システムが一段と弱体化し、すでに閉鎖を余儀なくされた診療所もある。渡航規制が厳しくなってグローバルファンドの各国チームが西アフリカを訪問できず、助成金の活用状況への評価や監督が困難になるとともに、新たな資金供与モデルの準備にも遅れが出ている。

リベリア保健省およびシエラレオネにおかれている世界基金の国別調整メカニズム(CCM)からは、世界基金に対し、エボラの流行に対応するため助成金を柔軟に活用したいという要請が寄せられている。世界基金はこうした要請に迅速に対応し、組織の使命の枠内でエボラの流行国を支援する方策を探っていく。しかし、これまでの基礎的なエイズ、結核、マラリア対策のサービス提供、治療の継続のための支援は続けていく。さらに、公衆衛生情報を共有し、WHOのガイドラインに従ってパートナー機関を教育し、エボラウイルスの感染を防ぐためのサービスを提供していく。

世界基金の活動は、流行国やWHO、その他のエボラと専門的に取り組んでいる組織と軌を一にするものである。流行国で世界基金が支援するプログラムを通じて、エボラ対策に貢献できる分野がいくつかある。たとえば、世界基金の支援によるプログラムに従事するスタッフにエボラ感染から守るための防護用品を提供する;スタッフにエボラ感染防御の研修を行う;エイズ、結核、マラリアのプログラムの職員や装置を一時的にエボラ対策の応援に派遣する;特別出張手当を支給するなどである。非常事態には特別の対応が必要になる。今回の事態に中心的に取り組む組織や専門家の指導のもとで、それぞれが必要とされる任務を果たすことが全員の利益につながることになるだろう。

システム強化の必要性

世界基金は創設以来、各国およびパートナー機関と協力して保健システム強化を支援してきた。エイズ、結核、マラリアへの投資の効果を最大限に高めることになるからだ。エボラ出血熱の流行はこうした活動の重要性を改めて示すことにもなった。

保健システム強化(Health System Strengthening、略号でHSSと呼ばれる)への投資は本来、分野横断的であり、多様な疾病対策プログラムの成果が上がるよう国のシステムを支えるものだ。保健システムが整っていれば、西アフリカにおけるエボラの現在の流行も容易に制御できていただろうし、地方の流行段階で封じ込めることもできただろう。

エボラ流行国ではいま、質の高い保健医療従事者が著しく不足している。たとえば、リベリアでは、国民1000人あたりの保健医療従事者の数が1人にも満たない。WHO推奨の最低基準を大きく下回っている状態だ。また、定期的な保健情報収集ができず、医療資材の補給や保健設備の整備は不十分で、保健基盤は不安定なままであることが常態化している。エボラの流行により、その状況がさらに悪化する一方で、保健医療従事者は働くこともできない。

疾病の流行を予防し、発生したらいち早く把握して対応できるようにするための長期的な解決策は、保健システムを強化することにつながる。世界基金は今年、すべての資金供与応募者に対し、申請プログラムには必ずHSSを大きな要素として含めるよう推奨し、HSSに力を入れて取り組んでいる。こうした投資は個別の疾病対策への投資効果を最大現に生かす鍵であり、投資資金の価値を高め、保健医療プログラムの持続可能性を支えることにもなる。対象国における協議を通じ、パートナー機関は共通のプラットフォームのもとで戦略的な投資を行う前に、保健システムが数多くの欠陥や弱点を抱えていることを把握するだろう。世界基金のHSS担当上級顧問、ジョージ・シャカリシビリによると、その国の国家保健戦略と疾病別の対策の中で、何が必要とされているのかがきちんと評価されている時は、保健への投資は最も効果が高くなる。新たな資金供与モデルは、HSSを脅かす緊急事態に対し資金投資が必要なら、柔軟にプログラムを見直すことを認めている。

西アフリカにおける今回のエボラの流行で最初の症例が報告されたギニアでは現在、情報と調達のシステムを強化するための投資を求めている。新たな資金供与モデルにおけるHSS投資の成果を高めるため、世界基金のギニアチームは、HSS投資の調整をはかるプラットフォームをギニア保健省、およびパートナー機関と協力して創設する機会を求めている。ギニア向け資金運用管理者のリン・ソーシーによると、エボラを含め、すべての疾病に対応するために保健システムへの戦略的投資を認めることになるだろうという。「保健システムの強化は、ギニアのような国で、エボラおよびすべての疾病との闘いに勝つための解決策の一部です。」とソーシーはいう。「保健システム強化を支えるために、すべてのパートナーと協力することが大切です。そして、それこそがエイズ、結核、マラリア、およびその他の様々な保健課題に対応するための現実的な方法でもあるのです。」


【原文】 “Responding to Ebola” , “A Need to Strengthen Systems”
Global Fund News Flash: Issue 49 (2014年9月8日投稿)

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