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北海道 仙台 京都 岡山 長崎でアウトリーチ・セミナー

2008年6月20日
北海道 仙台 京都 岡山 長崎でアウトリーチ・セミナー

世界基金支援日本委員会では、第4回アフリカ開発会議に先立ち5月末に開催した国際シンポジウム―沖縄から洞爺湖へ:「人間の安全保障」から見た三大感染症への新たなビジョン―に招聘した海外参加者のうち17名に参加いただき、5グループに分かれて日本の5都市を訪問するアウトリーチ・セミナーを実施しました。

各地の大学やNGOの協力を得て、同様の保健問題に取り組む日本の研究者やNGO関係者との対話や市民向けの公開講座を実施。日本各地における国際保健問題への関心の喚起をはかるとともに、海外の国際保健専門家がより深く日本社会を理解する機会となりました。

札幌市のクラーク博士の胸像前にて
札幌市のクラーク博士の胸像前にて
長崎県の若い世代を対象としたセミナー(写真提供長崎大学)
長崎県の若い世代を対象としたセミナー(写真提供長崎大学)

各都市でのセミナー報告(カッコ内は機関機関)

北海道(財団法人北海道国際交流センター)
仙台(東北大学国際保健研究科/ヒューマンセキュリティ連携国際教育プログラム事務局)
京都(京都大学、UNAIDS共同センター)
岡山(特定非営利活動法人AMDA)
長崎(長崎大学、同大学熱帯医学研究所、同大学国際連携研究戦略本部)

各都市での対話の概要は以下の通りです。


 

北海道(2008年5月25-27日)

G8サミットが開催される北海道では、国際協力や開発問題について次第に市民の関心が高まりつつあることから、財団法人北海道国際交流センターの協力を得て、以下3名が北海道を訪問し、函館と札幌でセミナーを開催した。

キングスレー・モガルー氏
キングスレー・モガルー氏
ボビー・ジョン氏
ボビー・ジョン氏
エイシア・ラッセル氏
エイシア・ラッセル氏

 

 

 

 

 

 

5月25日には函館で『国際保健セミナー・シリーズ「沖縄から洞爺湖へ」in函館』と題するセミナーを、翌26日にはJICA札幌にて『国際保健セミナー・シリーズ「沖縄から洞爺湖へ」in札幌』を開催し、それぞれ約30名、約50名の参加を得た。北海道を訪問した3氏は、世界基金の設立の経緯とその成果、アフリカやアジアで深刻な問題となっているエイズやマラリアの現状について報告をし、日本の市民の理解と政府の一層の協力を求めた。また市民が主体となって政府に積極的に働きかけることが重要であり、北海道の市民が働きかけてほしいと呼びかけた。参加者からは、世界基金のアカウンタビリティと有効性、他の国連機関との関係、日本の貢献の状況について質問がなされたほか、北海道に住むアフリカ人留学生からは、世界基金と現地政府との関係についての質問など活発な意見交換が行われた。

札幌でのセミナー
札幌でのセミナー

今回の北海道の訪問では、先住民族である白老のアイヌ集落を訪れたほか、26日にG8サミット市民フォーラム北海道の越田清和事務局長との面談、JICA札幌の筧克彦所長との面談を行った。また北海道で唯一、国際保健に関わる大学研究機関である北海道大学医学研究科を訪問し、玉城英彦教授との面談を行った。訪問した3氏にとって、一般市民との対話ができたことは意義深く、北海道の地域性や日本の地域社会の課題を知る貴重な経験となった。

海外参加者

ボビー・ジョン
グローバル・ヘルス・アドボケーツ、持続可能な保健・開発センター事務局長(インド)

キングスレー・モガルー
世界基金グローバル・パートナーシップ部長(スイス)

エイシア・ラッセル
ヘルス・ギャップ国際政策ディレクター(米国)

公開セミナー

「途上国のHIVなどのグローバルヘルスの現状と課題」(函館)
日時: 5月25日(日) 15:00-17:00
会場: 函館市地域交流まちづくりセンター
主催:(財)北海道国際交流センター、JICA札幌
協力:(財)日本国際交流センター/世界基金日本支援委員会

途上国のHIVなどのグローバルヘルスの現状と課題」(札幌)
日時: 5月26日(月) 18:30-20:30
会場: JICA札幌
主催:(財)北海道国際交流センター、JICA札幌
協力:(財)日本国際交流センター/世界基金日本支援委員会

関連報道
「三大感染症問題 国が消滅する危険も 海外専門家 函館で講演 対策協力 呼びかけ」(北海道新聞2008年5月26日夕刊)

仙台 (2008年5月25日)

2005年度より東北大学で実施されている「ヒューマン・セキュリティ連携国際教育プログラム」の協力を得て、以下の4名が仙台を訪ね、公開シンポジウム「日本の国際戦略としての”人間の安全保障”-洞爺湖サミットに向けた提案」を5月25日に開催した。

武見敬三氏
武見敬三氏

シンポジウムでは、冒頭、井上明久・東北大学総長、伊東潤造・宮城県医師会長、橋本治・東北大学副学長からの挨拶に続き、武見敬三氏による基調講演が行われた。基調講演では、日本の外交戦略における「人間の安全保障」の変遷、人間の安全保障委員会による概念整理を踏まえた、個人とコミュニティを単位とした「プロテクション」と「エンパワーメント」のアプローチについて紹介された。さらに武見氏は、「人間の安全保障」アプローチを通じて、日本が貢献しうる分野として、国際的な医療保健人材の育成について具体的な対策を提案し、今後の外交には、二国間、多国間外交に加えて、NGOのネットワークによる外交が不可欠になると述べた。

ウォルフガング・ムナー氏
ウォルフガング・ムナー氏
チェイク・ティディアン ・タール氏
チェイク・ティディアン
・タール氏

第1セッション「世界に見る人々の健康と”人間の安全保障”の現状」においては、ウォルフガング・ムナー氏が、ラテン・アメリカが未曾有の経済発展を遂げる一方で、貧富の格差が広がっている現実を紹介した上で、最も脆弱な貧困層に、保健および教育を中心とする社会サービスを提供する必要性を説いた。その際、慈善による援助ではなく、自らを守れるようなセーフティネットを整備し、教育、保健など他分野にわたる包括的な政策の必要性を訴えた。チェイク・ティディアン・タール氏は、アフリカにとっての人間の安全保障上の優先課題として、保健、食糧、住居等の人間の基本的ニーズ(BHN)を満たすこと、移動する自由が保障されるなど恐怖なく安心して暮らせるようになること、尊厳を持って生きられるようになることと述べた上で、エイズで両親を亡くした15歳の少女の人間の安全保障上の脅威について具体的に説明した。こうした少女の人間の安全保障を確保するためには、エイズに対する偏見と差別をなくすこと、サービスへの普遍的アクセスを推進すること、世界基金を中心とした組織への資金の動員が不可欠であると訴えた。海外からの参加者の発表に続き、東北大学から服部俊夫教授が「潜伏結核感染症と超多剤耐性結核」について、佐藤洋教授が「世界の環境汚染と健康」について報告を行った。

第2セッション「洞爺湖サミットへの提案(パネルディスカッション)」では、東北大学の上原鳴夫教授も加わり、グローバルな対話の哲学としての「人間の安全保障」の重要性が確認された他、最も脆弱な人々の状況を把握するためのデータや評価のための共通指標の必要性が指摘された。但し、データ整備には時間がかかることを踏まえ、コミュニティの人々自身が、自ら問題の原因を見つけることのできる能力強化の必要性も主張された。国際保健分野での取り組みをより強化するためには、資金の確保が不可欠であり、そのためには世界基金への資金動員をより積極的に働きかけていくべきとの意見も出された。

公開シンポジウム
「日本の国際戦略としての”人間の安全保障”-洞爺湖サミットに向けた提案」

日時:5月25日(日)13:00-17:00
会場:艮陵会館記念ホール
主催:東北大学ヒューマンセキュリティ連携国際教育プログラム
協力:(財)日本国際交流センター/世界基金支援日本委員会
後援:宮城県医師会、国際協力機構(JICA)、東北国際保健研究会、河北新報社
参加者

武見 敬三
前参議院議員、ハーバード大学公衆衛生大学院リサーチ・フェロー、(財)日本国際交流センターシニア・フェロー

ウォルフガング・ムナー
ラテン・アメリカ・グローバル・ヘルス財団(世界基金支援ラテンアメリカ委員会)事務局長、米州開発銀行上級社会開発専門員(コロンビア)

チェイク・ティディアン・タール
アフリカ・エイズ関連NGO協議会(AfriCASO)事務局長(セネガル)

小松 隆一
世界基金上級技術官(スイス)

関連報道
TBC東北放送2008年5月26日ニュース


京都(2008年5月25-27日)

京都(2008年5月25-27日)京都大学には、国連合同エイズ計画(UNAIDS)共同センターがおかれていることから、UNAIDSのピーター・ピオット事務局長をはじめとする海外参加者3名が京都を訪問した。5月26日午後には、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻社会疫学分野および共同センターの主催で、国際シンポジウム「新たな段階に入ったエイズ世界戦略~真の「人間の安全保障」の実現に向けて~」が開催され、関西一円の研究者や大学生、実務家など170名を超す参加があった。

ピーター・ピオットUNAIDS事務局長 (写真提供京都大学)ピオット事務局長は冒頭の講演で、1980年 代からこれまでのエイズの流行拡大の諸相、アフリカやアジアの社会に与えた影響について報告し、世界基金の設立など国際社会のコミットメントにより進捗が みられる一方、エイズへの対応には議論の分かれる問題を内包しており、今後も継続した政治的リーダーシップのもと、十分な資金とそれを活かすシステムの 構築、感染拡大の根源となる要因を除くための社会変革や技術革新が必要であり、一層の努力が求められると強調した。メディン・ゼウドゥ氏からは、エチオピア における抗レトロウィルス薬の普及の進展やアフリカ全体にわたるエイズ流行の動向についてプレゼンテーションがなされた。また、UNAIDS共同センターのセンター長を務める木原雅子京大准教授から、イランの薬物使用者のエイズ予防のための研究・研修や日本の若者に対する予防教育の成果など、共同センターの実績について報告がなされた。シンポジウムの後半は、参加者を交えたラウンドテーブル・ディスカッションがもたれ、木原正博京都大学教授より、4月に公表されたUNAIDSのCommission on AIDS in Asiaについて報告がなされた。ディスカッションの中では、抗レトロウィルス薬(ARV)のさらなる普及は重要であるものの、ARV治療を始める感染者の数よりも、新規にHIVに感染する人の数の方が多いことに鑑み、予防対策を強化していくことの重要性が指摘された。また、途上国のエイズ対策に多様なドナーの援助が入り乱れている状態のなか、コーディネーションが不可欠であること、また、TICAD IVと北海道洞爺湖サミットで議題のひとつとなるであろうエイズや国際保健の分野で日本が果たすべき役割についても活発な議論が行われた。

国際シンポジウム
「新たな段階に入ったエイズ世界戦略~真の「人間の安全保障」の実現に向けて~

日時:5月26日(月)13:00-16:00会場:京都大学芝蘭会館山内ホール主催:社会疫学的HIV研究に関する国連合同エイズ計画共同センター(京都大学)、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻社会疫学分野協力:(財)日本国際交流センター/世界基金支援日本委員会
参加者

ピーター・ピオット
国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長

メディン・ゼウドゥ
エチオピア保健大臣特別補佐官

リンデン・モリソン
世界基金東アフリカ・インド洋チーム・リーダー


岡山(2008年5月25-27日)

アジアを中心に医療救援と生活状態改善支援を実施している国際NGOであるAMDAの本部があり、また、世界基金支援日本委員会議員タスクフォース幹事の逢沢一郎衆議院議員の地元である岡山を、下記の3名が訪問。AMDAの協力を得て、5月26日に「国際保健セミナーin岡山」を開催した(プログラム[205KB])。

武見敬三氏
左より、逢沢議員、ベン氏、ソムニ氏、カヨンガ氏、当委員会ディレクター山本 (写真提供:毎日新聞)
岡山セミナー

 

セミナーは、岡山大学医学部関係者、学生、JICAやNGO関係者など、全体で60名を超える参加者を得て開催され、冒頭、逢沢一郎議員からご挨拶をいただいたほか、岡山県選出の橋本岳衆議院議員にもご参加いただいた。セミナーの前半は、海外からの参加者3名が、ルワンダやカンボジアにおける三大感染症の流行に対する取り組みの成果や今後の課題、世界基金の果たす役割などについて報告を行った。後半は、AMDA社会開発機構の鈴木俊介理事長より、世界基金の資金支援によるホンジュラスにおけるエイズ予防の活動やザンビアでの結核対策に関わる取り組みについての報告がなされた。また、岡山で感染症対策に関わる専門家として、岡山市保健所長中瀬克己氏より岡山のエイズ対策について、岡山大学医学部の平本晃子氏より抗マラリア薬開発の取り組み、南岡山医療センター統括診療部長多田敦彦氏より岡山の結核の現状について報告がなされた。
また、一行はセミナーに先立ち、中四国の医療と医学・保健学研究の拠点の役割を果たす医学部を有する岡山大学を訪問、千葉喬三学長らと懇談した。

セミナー
「人間の安全保障」から見た三大感染症への新たな提言

日時:5月26日(月)14:00-17:00会場:ホテルグランヴィア岡山主催:特定非営利活動法人AMDA、特定非営利活動法人AMDA社会開発機構協力:(財)日本国際交流センター/世界基金支援日本委員会
参加者

キャロライン・カヨンガ
ルワンダ保健省事務次官、世界基金ルワンダ国別調整メカニズム委員長

クリストフ・ベン
世界基金渉外担当ディレクター(スイス)

シン・ソムニー
メディカム事務局長(カンボジア)

関連報道

国際保健セミナー:三大感染症制圧へ論議 国境越えた協力訴え-岡山」(毎日新聞岡山版2008年 5月27日朝刊)

「三大感染症対策で議論 岡山」(中国新聞2008年5月27日朝刊)

「3大感染症対策考えるセミナー 新薬開発など報告 AMDA・開発機構」(読売新聞岡山版2008年 5月27日朝刊)

「AMDAなど 3大感染症対策探る 岡山で国際保健セミナー」(山陽新聞2008年5月27日朝刊)

NHK岡山 ニュース


長崎(2008年5月25-27日)

国際保健を専門とする研究者を多く輩出する長崎大学へ、同大学の熱帯医学研究所国際連携研究戦略本部の協力を得て、以下4名が長崎を訪問した。

5月26日に開催された公開シンポジウムは、核廃絶や平和の問題とならび人類共通の課題である国際的な健康問題について、次の世代に語り継いでいくことが重要であるとの考えから、若い世代を主な対象とすることとし、県内の高校生450名、大学生180名を中心に一般市民や大学関係者など計720名の参加を得て開催された。アリ・アサード、ルイ・ダガマ、チオマ・ンワチュクの3氏から、アフリカや中東で、エイズやマラリアがいかに深刻な問題になっているかについてプレゼンテーションがなされ、参加者からは、そのような活動の使命感の源は何か、自分たちにできることは何か、アフリカの貧困問題が長年解決しない根源の問題は何か、など熱心な質問が呈された。4名はシンポジウムに先立ち、原爆資料館を訪問、また、県庁と市役所を訪れ、金子原二郎長崎県知事および田上富久長崎市長と懇談した。

アリ・アサード氏
アリ・アサード氏
チオマ・ンワチュク氏
チオマ・ンワチュク氏
ルイ・ダガマ氏
ルイ・ダガマ氏
齋藤寛長崎大学学長
齋藤寛長崎大学学長
(以上、写真提供長崎大学)
5月27日には、長崎大学熱帯医学研究所、国際健康開発研究科の研究者や大学院生等とのラウンドテーブル・ディスカッションを行った。長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授からは長崎大学の感染症への取り組みについて、砂原俊彦助教からはベトナム南部の少数民族居住地域でのマラリアコントロールプログラムの研究成果について発表がなされた。一方、世界基金のダイアン・ステュワート氏は、世界基金が途上国の感染症対策に果たしてきた役割と、案件審査・評価から現地の事業実施への助言にいたるまで世界基金のプロセスに、研究者がどのように協力しているかを紹介し、大学関係者の積極的な関与を呼びかけた。世界各地からの留学生を含む参加者との議論では、世界基金支援プロジェクトによる情報・データの集約が現地に与える負担、感染症対策と他の対策との間のコーディネーションの重要性など、忌憚のない意見が交換されたほか、Multilateral Initiative on Malaria (MIM)など、アフリカのマラリア研究の国際的なネットワークに日本の研究者のより積極的な参加を期待する意見など、活発な議論が交わされた。
ダイアン・ステュワート氏
ダイアン・ステュワート氏
砂原俊彦氏
砂原俊彦氏
山本太郎氏
山本太郎氏
(以上、写真提供長崎大学)

参加者

アリ・モハメド・アサード
障害者問題高等協議会公衆衛生顧問、元ヨルダン保健省技術総括次官、世界基金理事代理

ルイ・ダガマ
グローバル・ヘルス・アドボケーツ、マラリア・アドボカシー広報ディレクター

チオマ・ンワチュク
世界基金支援アフリカ委員会アソシエート・マネージャー

ダイアン・スチュワート
世界基金理事会ドナー関係担当部長

国際シンポジウム
「人と健康のための国際シンポジウム:長崎から世界へ」

日時:5月26日(月)14:00-16:00

会場:長崎大学文京キャンパス中部講堂

主催:長崎大学

共催:(財)日本国際交流センター/世界基金支援日本委員会

社団法人国立大学協会九州地区支部

後援:国際協力機構

関連報道

「感染者現状に理解を:長崎大で国際シンポ」(長崎新聞2008年5月28日朝刊)

NHK長崎 ニュース(2008年5月26日、27日)

〔異見新言〕途上国支援『国際保健』の人材育成を:学際的な知識が援助の質高める」松山章子長崎大准教授(朝日新聞2008年5月31日朝刊)[825KB]

金子原二郎長崎県知事への表敬 (写真提供長崎県)
金子原二郎長崎県知事への表敬(写真提供長崎県)
講演を聴く参加者
講演を聴く参加者
会場からの質問(写真提供長崎大学)
会場からの質問(写真提供長崎大学)
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