グローバルファンド日本委員会 第32回議員タスクフォース会合を開催

  • 2021年4月7日

この記事の掲載日 : 2021年04月16日(金) この記事のカテゴリー : , ,



グローバルファンド日本委員会(FGFJ)は、2021年4月7日に、グローバルファンドのピーター・サンズ事務局長や日本の国会議員をはじめ、国内外の関係者あわせて33名の参加を得て、第32回議員タスクフォース会合を開催しました。

開会の挨拶において、FGFJ共同代表幹事の逢沢一郎議員は、低・中所得国ではワクチンだけでなく検査も重要であること、将来のパンデミックへの備えも念頭に置く必要があると認識した上で、明るい未来のためにいま何をなすべきかを議論し、行動が促進されなければならないと述べました。

コロナの影響により三大感染症対策に支障を来さないために、またグローバルファンドの経験を活用してコロナの感染拡大を抑止するためにも相当額の資金が必要であることが改めて確認され、一致団結した政治家のリーダーシップが重要であるとの認識が共有されました。

 

サンズ事務局長のブリーフィング要旨およびコメンテーターとの質疑応答の要旨は以下の通りです。


グローバルファンドの保健システム強化への支援
~新型コロナに対応し将来のパンデミックに備える~

ピーター・サンズ
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)事務局長

“危機に直面してから新たに保健システムを構築するのでは到底間に合わない。
既存の保健システム強化が重要だ。“

 

アフリカにおける新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)はいまだ世界中で感染拡大しており、感染者数は1億3000万人を超え、280万人以上が命を落としている。多くの国でワクチン接種の開始により、このコロナのトンネルから抜け出せると思われているが、世界で最も貧しい国と地域では、このコロナのトンネルはなお長く、暗く、抜け出すには程遠い。コロナの三大感染症への連鎖反応は拡大し続けており、アフリカでは、コロナの直接的影響より、エイズ、結核、マラリアといった他の感染症への連鎖反応による影響の方が甚大である。

2021年に入ってから死者は100万人を超えており、コロナ感染者及び死者の半数以上が直近4か月以内に起こったものだ。

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グローバルファンドの対応状況

グローバルファンドは、コロナ感染拡大の初期から迅速に対応し、これまでに106か国及び14の広域プログラムに約9.8憶ドル(約1080億円)の資金を承認してきた。グローバルファンドの「新型コロナウイルス感染症対応メカニズム」(以下、「コロナ対応メカニズム」)の36%が個人用保護具(PPE。マスク、ゴーグル等)に、24%が診断検査に、その他40%が主要医薬品の供給や脆弱なコミュニティへの支援等に充てている(下図参照)。

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ここでウガンダの事例を紹介したい。ウガンダでは、三大感染症対策として長年強化してきた保健システムやコミュニティの対応力がコロナ対策の支柱となり、コロナ感染者数や死者数を抑えられている。危機に直面して初めて保健システムを一から構築するのでは到底間に合わない。既存の保健システム強化は重要な要素であり、それこそが、グローバルファンドが多大な支援を行っているものの一つである。

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「健康のための強靭で持続可能なシステム」(RSSH)への支援

グローバルファンドの使命である三大感染症の終焉には、強靭で持続可能な保健システムが重要だ。グローバルファンドの保健システム強化支援は国際機関の中で最大規模であり、年間投資額の約25%にあたる。主な内訳は、保健情報管理システムや保健人材育成といった保健システム強化の直接的支援(約11億ドル*¹)、妊婦のマラリア予防に関する地域保健員への研修等保健システム強化に貢献する間接的支援(約13億ドル*²)である。保健システムを強化することで、最も貧しく、周辺に追いやられた人々に支援の手が行き届くことが緊要だ。

*¹及び*²:契約締結済み2020年~2022年資金供与案件における実績。2021年1月現在。

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またグローバルファンドは、医薬品及び医薬製品の調達に毎年20億ドルを使用している。コロナ下でもその調達・供給力は役立っている。アフリカでは、コロナ検査実施が大幅に遅れているため早急な対応が必要である。これまでに調達されたコロナ抗原検査キット2135万個の半数以上は、グローバルファンドが供給している。

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ACTアクセラレーターにおけるグローバルファンドの役割

グローバルファンドはACTアクセラレーター(*³)の創設メンバーで、4つの部門(診断、治療、ワクチン、保健システム)のうち2部門(診断、保健システム)で主管を担っている。コロナ感染拡大を軽減するのにワクチンは重要だが、現実問題として、低・中所得国の多くでワクチンが行き届くには相応の時間を要すると見込まれている。感染拡大を阻止するためには、平行して検査と隔離を進め、医療従事者を守る防護具(PPE)を大量に配布することが依然として必要な状況にある。

*³:新型コロナウイルス感染症を収束させる決め手となるツールー診断、治療、ワクチンーの開発、生産、と公平なアクセスを加速化させるための国際協働の仕組み。G20の提言に基づき、2020年4月24日に各国政府とWHO(世界保健機関)を初めとする国際機関によって立ち上げられた。

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ACTアクセラレーターの2021年の資金不足額は、現在221億ドルにのぼる。そのうち、グローバルファンドは診断・治療、保健システムで90億ドルを、ACTアクセラレーター外の資金として10億ドル、合計100億ドルの資金支援を国際社会に対して要請している。下図からも明らかなように、ACTアクセラレーターの資金は、診断、治療、保健システムの各部門で大幅に不足している状況であり、世界は今なお前例のない危機に直面していると言える。

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コメンテーターからのコメントおよび応答(抜粋)

武見敬三参議院議員(WHO ユニバーサル・ヘルスカバレッジ親善大使):グローバルファンドが三大感染症対策を引き続き推進するのが重要であることはよく認識しているが、新たな健康危機にも対応し以前より大きな存在になっている以上、グローバルファンドはその対象分野を、三感染症に加えてより広い健康課題にまで拡大すべき時期が来ているのではないか?ヘルス・システムに幅広く資金を投じることは、日本が推進するユニバーサル・ヘルス・カバレッジに直結する。対象分野を広げれば、それだけポリシーメーカーの賛同を得やすくなるのではないか。

サンズ事務局長:三大感染症(の流行がまだ終わっていない以上)終息という目標から逸脱すべきではないと考えている。しかし、同時に、低・中所得国がユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するまでの道のりをどう助けていくか、より広い目標をもつべきか、など再検討されるべきでもある。まさにいま理事会で今後6年間の戦略を議論しているところである。日本も是非議論に貢献していただきたい。

 

原圭一 外務省国際協力局参事官(グローバルファンド理事会日本政府代表理事):グローバルファンドの支援が、途上国における現在のコロナ危機対応の礎になっていることは素晴しく高く評価したい。だが、グローバルファンドによる保健システム強化の成果がよく理解されているとは言い難いと感じている。その妥当性を説明する重責をグローバルファンドはぜひ担っていただきたい。また昨今、ポスト・コロナの世界健康安全保障について議論されているところ、その仕組みにおけるグローバルファンドの役割をどのように考えるか。

サンズ事務局長:このコロナ危機から学んだことは、検査ラボのネットワーク、結核の診断やHIV検査といった保健システム対応はコロナ対策の基礎を成すということだ。そして保健システムが機能するために、個人防護具は非常に重要である。特に医療従事者の絶対数が少ないアフリカでは、医療従事者が病気にかかったり死亡してしまえば、医療実施体制はたちまち崩壊してしまう恐れがあり、高品質の防護具を供給することが極めて肝要だ。

世界健康安全保障についてであるが、(2002年の)グローバルファンドの設立は、大規模な感染症と闘うための世界が出した「解」である。ワクチンや研究開発は専門外だが、こと感染症との闘いでは専門家だ。予防、診断、治療、保健システム強化支援では、稀有な能力を持っている。世界健康安全保障の一翼を担えるだろう。将来のパンデミックへの備えにグローバルファンドの今までの経験を活かさない手はない。

 

加藤誠也 結核予防会結核研究所所長(グローバルファンド日本委員会アドバイザリーボードメンバー):コロナは世界の結核対策にも大きな影響を与えており、2020年の結核による死亡数はコロナによる死亡数(2020年末時点で180万人 )を上回る可能性がある。患者の発見・治療が減少しているためで、ロックダウン等によって医療のアクセスができなくなったことや検査・治療薬の供給の中断、コロナのために結核の医療従事者や医療施設、機材が転用されたり、医療崩壊が起きたことなどが挙げられる。このパンデミック下で結核対策を行う緊要性は極めて高い。

グローバルファンドが展開しているコロナ緊急対応やRSSHへの支援は、結核対策にも重要と理解している。「世界結核終息戦略」の目標のために必要な結核への投資について、今後、総額や配分におけるグローバルファンドの考え方は変わっていくか。

サンズ事務局長:ご指摘の通り、コロナにより、結核の症例特定、診断や治療患者数が激減しており、結核に対する長年の努力が報われず逆戻りしている状況だ。まずコロナの影響を抑制しなければならない。そして、コロナと結核の対策を同時並行的に実施するとともに、イノベーションを加速化せねばならない。グローバルファンドの現在の支援サイクルでの結核への支援は前回サイクルの23%増であり、結核対策に高いコミットメントを示している。

しかし、全体として結核対策につぎ込まれている資金は、コロナ対策資金の1-2%にすぎない。結核支援を行う最大の国際機関としてその責任と使命を感じているところだ。予防方法も治療方法もわかっており、しかも高い費用がかかるわけではない感染症(結核)のためにこれほど多くの人が亡くなっていくことは容認できない。結核にとって危機的状況だが、コロナをテコに結核対策のありかたを変え流行を終わらせる好機でもあると思う。

 

古川元久 衆議院議員(グローバルファンド日本委員会共同議長):先進国ではワクチン接収が始まり、トンネルの出口が見えてきたが、貧しい国ではまだワクチンはいきわたらない。トンネルの先が見えないアフリカの国ではもっと悪化するのか。

サンズ事務局長:誰も正確な答えは持ち合わせていないので、回答は慎重にならざるを得ない。ただ、ウイルスの変異が続けば、ワクチンの効果を低下させるだろう。低・中所得国でコロナの拡大を防ぐために今できることは、検査と治療と保健医療従事者を守ることだ。つまり、検査を拡大し、接触者を追跡し隔離し、重症の患者の死亡を減らすために薬や医療用酸素を供給する。また、防護服を大量に送り最前線のヘルスワーカーを守る必要もある。もちろんワクチンの配布を急ぐことも重要だが、それは簡単ではなくまた普及には時間もかかる。

最も大事なことは、短期間で徹底的にコロナと闘うことだ。ゆっくりと、生煮えの態度で対応していては、失う人命も経済的ロスも甚大なものになる。G7、G20諸国には感染症との闘いのペースを速めるようリーダーシップをとってほしい。

 


出席いただいた国会議員(敬称略)

逢沢 一郎 衆議院議員(自由民主党)[共同議長]
古川 元久 衆議院議員(国民民主党)[共同議長]
武見 敬三 衆議院議員(自由民主党)
牧島かれん 衆議院議員(自由民主党)
三原 朝彦 衆議院議員(自由民主党)
谷合 正明 衆議院議員(公明党)
濱村 進     衆議院議員(公明党)
古屋 範子 衆議院議員(公明党)
小熊 慎司 衆議院議員(立憲民主党)
福山 哲郎 参議院議員(立憲民主党)

(政党別五十音順)

 


会合では、グローバルファンド日本委員会がグローバルファンドと共同制作した、日本向けのグローバルファンド紹介動画を参加者に紹介しました。4月9日から一般公開しています。ぜひこちら(フルカット版30秒版)からご覧ください。

 

ピーター・サンズ事務局長のブリーフィング資料全文は以下からダウンロードいただけます。

第32回議員タスクフォース会合ブリーフィング資料(和訳版)

第32回議員タスクフォース会合ブリーフィング資料(オリジナル)