トランプ政権に対し声を上げる米議会:超党派下院議員137名の署名はグローバルファンドへの拠出増額に繋がるのか?

  • 2019年2月4日

この記事の掲載日 : 2019年02月05日(火) この記事のカテゴリー : ,



国際援助に対して消極的な姿勢を続けるトランプ政権ですが、対照的なのがグローバルヘルス予算増への支持を明確に打ち出す米議会です。1月下旬、昨年10月の上院議員18名による署名に続き、超党派の下院議員137名がグローバルファンドへの拠出増加を支持するレターに署名をしたことが発表されました。これはバーバラ・リー議員(カリフォルニア州・民主党選出議員)とクリス・スミス議員(ニュージャージー州・共和党議員)がリーダーシップを取り、マイク・ポンペオ国務長官とトランプ政権に当てて提出したものです。

グローバルファンドは今年10月に、2020-2022年の資金調達を決める第6次増資会合を予定しています。今回の署名文書では、米国が前回の第5次増資への拠出額である43億ドルを超える金額を拠出することを求めています。では、この署名は実際の予算決定に影響を与えるのでしょうか。

米国では大統領が予算教書という形で政策を打ち出しますが、それを受けて両院にある各歳出委員会が予算案を作成します。昨年はトランプ大統領がグローバルヘルスへの大幅な予算カットを打ち出して話題になりましたが、両院にある国務省・対外活動に関する歳出委員会小委員会(グローバルヘルスを担当する予算委員会)はオバマ政権時の予算規模を堅持し、さらに今後は増額する見込みを表明、これが最終的に予算として承認されました。つまり、今年もトランプ大統領の予算教書では、グローバルヘルス予算の大幅カット要求の可能性が十分にありえる状況ではありますが、この署名を見る限り、議会が超党派の意志として、グローバルヘルス予算を増やす予算案を出すという強い意志が表明されています。また、特筆すべきは、下院にある24の委員会の委員長のうち15人もが署名をしていることです。よって、この署名は予算確保・増大に向けた道筋を作るものだと言えます。

ポンペオ国務長官宛てに出された今回の文書には、グローバルヘルスへの投資は人道的な理由だけでなく、米国の安全保障と経済成長の観点からも重視するべきことが改めて強調されています。

「グローバルファンドへの投資は、命を救い感染症と戦うだけでなく、米国民を守り、外交・貿易上の利益を得ることにもつながる。感染症の急速な拡大は、数百万人の命をリスクにさらす可能性がある。米国がグローバルファンドを含むグローバルヘルスに投資することで、疾病統計や保健サービスを強化し、疾病にまつわる脅威を水際で止めることができる。つまり、これは米国や、米国の輸出先として重要な各国の市場を守るための安全保障への投資だと言える。」

米国の拠出には「上限33%」という国内ルールがあり(以前の記事)、米国だけが突出した拠出をすることはできません。よって、依然として、欧州各国など主要ドナー国の動向が米国の拠出金額を決める上で鍵を握っています。しかし、今回の署名を見る限り、米国としてこれまでの拠出を維持するだけではなく、増加する強い意志が示されており、他のドナー国へのメッセージでもあると言えるでしょう。引き続き、第6次増資に向けた各国の拠出動向を注視していきたいと思います。

(グローバルファンド日本委員会/米国法人日本国際交流センター
シニア・プログラムオフィサー 吉田 智子)

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