グースビー国連特使 「世界の感染症、最大死因は結核。誰もとり残さない保健システム構築を」

この記事の掲載日 : 2018年04月07日(土) この記事のカテゴリー : ,


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12月12日、東京プリンスホテル(東京都港区)で開催された「UHCフォーラム2017」のサイドイベント『UHC達成の道筋としての結核対策―誰もとり残さない保健システムの実現に向けて』*で、国連結核特使のエリック・グースビー博士が基調講演を行いました。

201712_UHC TB side event結核は“炭鉱のカナリア”

博士はその中で、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けて結核対策が果たす役割を指摘するとともに、「UHCが実現できれば結核の終息は可能になるが、その一方で結核の打撃を劇的に緩和しなければUHC達成も望めない」と、両者の相互補完関係を強調しました。

基調講演では、昨年11月モスクワで開かれた結核に関する閣僚級会合で、結核終息への努力がUHC実現にも大きく貢献するとの認識が共有されたことが紹介され、博士は「結核は“炭鉱の中のカナリア”だ。必要な手段と政治的な意思にもとづいて私たちが結核対策を実施すれば、世界はユニバーサルアクセスへの道をきりひらくことができる」と強調しました。炭鉱でカナリアがいち早く異変を察知するように、結核は保健システム全体に対し、いま何が必要で、どう対応すべきかを知らせる警告役を果たすからです。

非感染症も含めた保健システム強化を

また、結核は「保健システムのすべての機能を動員して対応しなければならない複雑な病気だ」としたうえで、「結核対策の課題は結核治療だけでなく、心臓病や糖尿病などの非感染症も含めた保健医療の提供システムにとっての課題でもある」と、次のように語っています。

201712_UHC TB side event「非感染症の影響は富裕国だけでなく、低・中所得国にも及び、死者数は年間3600万人を超えている。その80%は低・中所得層。強靭な保健システムの確立には、感染症と非感染症の両方の治療が必要だ」

グースビー特使は米国のオバマ政権時代に大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)を統括する地球規模エイズ調整官を務めており、その経験からも強固な保健基盤が感染症対策の重要な柱であると指摘しました。検査・相談から治療、ケアに至る一連のサービスを一つの場所で受けられるようにすること、医療人材の育成に力を入れることなどを通し、保健システムを整えなければ、感染症の流行を抑えることはできないからです。結核は感染症による世界の年間死者数の6分の1を占めているため、とくにこの点が重要になります。

劇的な変化に向けて

治療可能な結核でも、複数の薬を6~9か月の間、服用し続けることが困難な人は多く、結核終息という目標は「劇的な変化がなければ実現しない」と博士は述べています。しかも、治療が困難な多剤耐性結核(MDR-TB)や超薬剤耐性結核(XDR-TB)が出現し、他のいかなる薬剤耐性病原体よりも多くの人の命を奪っているのです。

現実は厳しい。ただし、グースビー特使は「いまがまさに結核を打ち負かすための新たな一歩を踏み出そうとしている時期でもある」と語り、結核診断・治療でイノベーションを加速化させること、低所得国の慢性的な医療従事者不足を解消するタスクシフティング(任務移譲)や研修の拡充、各国が増やしてきている自国財源の結核対策資金をさらに増加させることの3つが急務であると強調しました。

グースビー特使は最後に「UHCの実現も、結核終息も一夜にして実現するものではない」と語り、困難は認めつつも「賢明な意思決定を行い、効果的な道筋をたどれば、二つの目標はともに実現できると私は信じている」と講演を締めくくりました。

*共催:公益財団法人日本国際交流センター/グローバルファンド日本委員会、世界保健機関(WHO)、グローバルファンド、厚生労働省、ストップ結核パートナーシップ、公益財団法人結核予防会

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ (UHC)
すべての人がお金に困ることなく、必要な保健医療サービスを受けられるようになること。持続可能な開発目標(SDGs)のゴール3のターゲットの一つでもあり、SDGsが重視する「誰ひとり取り残さない」という原則を具現化する重要な手段となっている。

FGFJレポートNo.15(2018年4月)掲載