途上国の自立に向けたグローバルファンドの取り組み

この記事の掲載日 : 2017年08月31日(木) この記事のカテゴリー :


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國井 修
グローバルファンド 戦略・投資・効果局長

グローバルファンドでは国の「経済力」と「3 大感染症による疾病負担」によって支援適格(Eligibility)基準を決めています。特殊な政治・経済状況などを鑑みて例外ルールもありますが、原則としてその支援適格基準とは、低所得国(一人当たり国民総所得GNI:1,025 ドル以下)と下位中所得国(1,026-4,035ドル)は疾病負担にかかわらず支援対象、上位中所得国(4,036-12,475ドル)は予め決めた疾病負担基準で「重度~極度」の場合に支援対象とし、上位中所得国で疾病負担が「軽度~中等度」、また高所得国になると支援対象から外れるというものです。

援助からの「自立」は開発協力の最終目標ですが、一筋縄ではいきません。支援を打ち切った途端に感染症が再燃して過去の努力が水の泡になることもあります。そこで、持続可能性の強化(Sustainability)、自立への移行準備(Transition)、国内資金の増加(Co- financing)が重要となり、図1のように早い段階から持続可能性の強化、移行準備を行う必要があります。

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資金

援助から自立する上での最重要課題は資金です。国全体の経済力が上がっても、政府が責任をもって感染症対策予算を確保するとは限らないため、グローバルファンドでは政府が支出すべき保健医療予算の最低額を設定し、それ以上の支出を条件に資金供与を行っています。さらに多くの保健医療予算を引き出すための見返り資金、超富裕層や企業からの資金調達、債務返済免除の保健医療への割当て、ソーシャル・インパクト・ボンドの活用、世界銀行の保健医療投資と協働した革新的資金調達(Buy-down)など、国内資金増加のためグローバルファンドは触媒作用をもたらしています。

 

プログラムやガバナンス

資金以外に重要なのが、プログラムやガバナンスの継続です。上記のような努力により、感染症対策に対する国内予算が増えて、基礎的な医薬品や機材、サービスが自前で賄えるようになった国も増えてきました。しかし、例えば、HIV対策では男性とセックスをする男性、性産業従事者、注射薬物使用者など感染率の高い集団(キー・ポピュレーション)に対する偏見・差別が未だに強く、中には犯罪者として扱うだけで、予防・治療を促進しない政府もあります。

そこでグローバルファンドでは、政府を通さず直接NGOや市民団体、当事者組織に資金提供し、キー・ポピュレーションに対する事業を展開している国も多くあるのですが、グローバルファンドの支援終了と共にこれらの事業が停止し、政府と市民社会との調整メカニズム、対話の場もなくなってしまうこともあるのです。

そのため、グローバルファンドでは他の援助組織と共に、市民社会やNGOの能力強化、政府へのアドボカシー、キー・ポピュレーションの人権の促進・保護などに努め、援助からの自立に向けて特別の配慮を行っています。

現在、適格国基準から外れた事業が12事業、2025年までに適格国基準から外れると予測される上位中所得国の事業が69事業あります。前者に対しては、すぐに支援を止めるのではなく、上記課題をクリアし円滑な移行ができるよう3年間の猶予期間を設け、国が立案する移行計画を支援していきます。また、後者には政治・経済、保健システム(人材、データなど)、ガバナンスなど詳細な項目について、移行準備状況を分析・評価し、それに基づく移行準備計画の立案に協力し、パートナー機関と共に自立に向けた支援を行います。

また、自立にかなりの年数を必要とする疾病負担の高い上位中所得国の90事業、低所得国の95事業については、中長期的な自立可能性の強化、移行に向けた計画を立て、自立を視野にいれた国家保健医療計画、保健システムの強化、能力強化などを支援していきます。

援助からの自立はグローバルファンドのみならず、すべての援助機関の共通の課題です。21世紀型パートナーシップ機関として、多くのパートナーと協働して、何よりも実施国の主体性と主導性を重んじ、また促進しながら、世界における感染症流行の終焉と持続可能な未来を目指したいと考えています。

FGFJレポートNo.13(2017年8月)掲載