健康への投資 G20保健大臣会合に際してマライケ氏によるブログ

この記事の掲載日 : 2017年05月31日(水) この記事のカテゴリー :


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5月19・20日に、G20の保健大臣会合がドイツ・ベルリンで開催されました。G20で保健大臣の会合が開催されるのは初めてのことで、2015年のG7エルマウ・サミットに続き、保健問題に関心が高い議長国ドイツの主導によるものです。グローバルファンドの官房長マライケ・ヴェインロクスが、この歴史的なG20保健大臣会合に際し、ブログを発表しました。ヴェインロクス氏は、任期を終えたダイブル事務局長の退任後、6月1日より事務局長代行を務めます。

“歴史が示すように、人間は感染症に対して脆弱である。(中略)しかし、たとえ脆弱であっても、感染症が人命の損失や社会的混乱を引き起こす度合いを変えることはできる。” (マライケ・ヴェインロクス)


健康への投資

マライケ・ヴェインロクス(Marijke Wijnroks) 2017年5月19日 

世界が激しく変化し、ニュースが台風のように目まぐるしく報じられる中、今週末に開催される、ある歴史的な会合は見過ごされるかもしれない。しかし、そうであってはならない。なぜなら、G20の保健大臣が初めて一堂に集まるからである。これは、国際開発アジェンダにおいて保健が重要な役割を担うことを明確に示している。

G20は開発アジェンダの三本柱として、強靭性の構築、持続可能性の向上、責任を負うこと、の3点を明確に打ち出してきた。これらのテーマは広範に及び、あらゆる分野に当てはまるものの、とりわけ公衆衛生やグローバルな健康安全保障にとっては重要な課題である。国際的に合意された持続可能な開発目標(SDGs)にユニバーサル・ヘルス・カバレッジが盛り込まれた時点で、各国政府は、強靭で持続可能な保健システムの構築を通じて自国民の健康に対して責任を負うことをコミットしたのである。

その原動力となっているのは、防げたはずの死に対する倫理的な怒りだけではない。(ただし、2分に1人の割合で子どもがマラリアで命を落としていることに対し、私たちはもう少し怒ってもいいかもしれない。)

また、薬剤耐性、ジカ熱、エボラのような新たな脅威への恐怖心だけが、その原動力になっているわけでもない。(とはいえ、先週コンゴ民主共和国でエボラの発症例が確認されたことを考えると、適切な対応につながる適度なレベルの恐怖心は、悪いことではない。)

では、原動力になっているのは何か。正確に言えば、保健システムへの投資が経済的効果をもたらすという明確な証拠があることが、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジへのコミットメントの原動力となっている。2013年のランセット誌のCommission on Investing in Health(健康への投資に関する委員会)は、低・中所得国における健康の改善は、2000年から2011年にかけて、国の所得に加え、延伸した生存年数の価値を測定した所得である「全所得」(full income)を24%増加させることに寄与したと発表した。

今回、初めて閣僚級保健会合が開催されたことは、強い経済力は財政政策と貿易政策だけで達成できるものではない、という認識が広がっていることを示している。成長への道筋はさまざまであるが、感染症の流行を終わらせるための投資は全ての人々に恩恵をもたらす。まず、保健のための予算は人々の命を救う。そして、将来起こるかもしれない健康危機を未然に防ぐ、より強力な保健システムを構築する。強固な保健システムは地域的・世界的な感染症アウトブレイクを見張る番人の役割を果たすのである。

このことを現実に証明したのは、2014年に西アフリカで起こったエボラ出血熱の流行である。強固な保健システムを持つナイジェリア、セネガル、マリといった国々は流行を食い止めたものの、そうでない国-シエラレオネ、リベリア、ギニア-は大きな被害を受けた。

今週、時宜を得た研究結果が米国で発表された。米国科学工学医学アカデミーは、「対外援助は、ある種の慈善事業としてとらえられがちだが…その援助が保健に向けられる場合、それは被援助国の人々の健康、米国民の健康そして世界の人々の健康への投資である」と明確に述べている。著者らは投資の重要性を強調し、世界的な健康脅威への対策と生産性の向上および経済成長には明確な関連性があると指摘している。

G20である南アフリカ共和国は、アフリカ第二の経済大国であり、保健分野での国内資金調達では他のアフリカ国をしのぐ。保健への投資は、世界最大である南アフリカの抗レトロウィルス治療プログラムを支え、3百万人以上のHIV陽性者が充実した人生を送り生産活動に従事することを可能にしている。南アフリカおよびアフリカ大陸は、感染症への対応においてまだ多くの課題を抱えているが、保健分野に関しては海外からの投資を上回る資金を国内で動員している。これこそ、「強靭性の構築、持続性の向上、責任を負うこと」が実践されている例であるといえる。

強靭で持続可能な保健システムがきちんと機能していれば、毎日たくさんの命が救われていることは当然のことと見なされ、疫病の発生だけがニュースの見出しを飾るだろう。グローバルファンドは、より強い供給網の構築と、迅速な対応を可能にするサーベイランス体制の改善、そして国境を超えたデータの共有を通じて、予防可能な悲劇を減らすために多くのパートナーと協働している。

この歴史的なG20保健大臣会合の開催は、感染症およびその脅威にさらされる人間を、より大きな問題の一部と位置づけることの重要性を示している。保健システムは、幸福や経済的繁栄のための出発点にもなれば、教育や雇用の機会を制限し、貧困や不安定の連鎖を増幅させる原因にもなる。グローバルファンドは、前者となるよう、21世紀の社会的・経済的発展の特徴でもある革新的な官民連携を通じて保健システムの構築に取り組んでいる。

歴史が示すように、人間は感染症に対して脆弱である。生物学的に見ても、その事実を覆すことはできない。しかし、たとえ脆弱であっても、感染症が人命の損失や社会的混乱を引き起こす度合いを変えることはできる。子どもに予防接種受けさせ、マラリアを予防し、結核を治療することは可能である。HIVに感染しないよう人々を啓発することもできる。予防や治療を提供するシステムを作りし、さらにグローバルな健康安全保障を脅かす危機に対し迅速に対応することもできる。薬剤耐性に打ち勝つための研究や技術に投資することも可能だ。これらはユニバーサル・ヘルス・ケアに不可欠な要素であり、持続可能な開発の礎にほかならない。(和文仮訳)

 

本文(英文)

Invest in Health by Marijke Wijnroks
May 19, 2017