マーク・ダイブル事務局長来日の主要メッセージ

この記事の掲載日 : 2014年10月21日(火) この記事のカテゴリー : ,


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マーク・ダイブル事務局長(中央)、國井修戦略・投資・効果局長(左)、JCIE理事長/FGFJディレクター大河原昭夫(右)

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)のマーク・ダイブル事務局長が、國井修戦略・投資・効果局長、高山眞木子渉外局ドナー・リレーションズ担当官とともに、2014年10月14日-16日にかけて日本を訪問しました。2013年1月に事務局長就任以来3回目となった今回の来日では、城内実外務副大臣、永岡桂子厚生労働副大臣への表敬訪問のほか、超党派の国会議員、省庁の幹部、研究者、企業関係者、NGOリーダーなどと会い、エイズ・結核・マラリアの流行状況、グローバルファンドによる最新成果、最近導入した新たなビジネスモデルなどを報告し、日本とグローバルファンドとの関係強化の方策を議論しました。また、メディアのインタビューに積極的に応じ、グローバルファンドの活動について多くの日本人に伝えることができました。

西アフリカでエボラ出血熱の感染が拡大する中での訪日であったため、エボラ出血熱の封じ込めにグローバルファンドの支援がどのように貢献できるかという点についても、多くの時間を割いて意見交換が行われました。来日中の諸会合での主要メッセージは以下の通りです。


三大感染症対策の顕著な成果

dybul 2014oct japan visit日本など先進国の資金的・人的支援へのコミットメント、パートナー国(途上国)自身のリーダーシップの結果、過去十数年の間に、三大感染症対策はめざましい成果をあげている。世界の年間の新規HIV感染者数は2001年に比べると三割減となっている。エイズ治療を受けているHIV陽性者は、当初は5万人にすぎなかったのが今では1300万人となった。マラリアについては、50以上の国々でマラリア感染が50~75%減少しており、死亡数も40~50%減少している。結核においては、死亡数を半減させるというミレニアム開発目標を達成する見通しがたっている。

グローバルファンドは三大感染症への最大資金提供機関として、これらの進捗に大きな貢献をしてきた。グローバルファンドの支援を受けたプログラムでこれまでに約700万人の命が救われたと推計される。

転換点を迎えている三大感染症

三大感染症はまさに今歴史的な転換点を迎えている。この数年の科学の進歩と2000年代以降の多大なる投資、ノウハウ、知識の蓄積のおかげで、初めて、三大感染症を公衆衛生上の脅威でなくなる程度まで封じ込められる見通しがついた。しかし、転換点とは、よい方向と悪い方向、二つの方向に行き得る可能性があることを意味する。何千年もの長きにわたり人々を苦しめてきた結核やマラリア、そして現代の最大感染症であるエイズに終止符を打つ最初の世代となるチャンスでもあり、また、この機会を逃し後続の世代にもこの苦しみを残す道も残し得る、その岐路に立っているということだ。三つの感染症はまだ終わっておらず、道のり半ばである。エイズによって年間200万人が死亡しており、アフリカでは若者の死因、子どもを産む年代の女性の死因のトップである。マラリアは5歳未満の子どもの死因のトップであるし、結核においては、各地で多剤耐性結核が広がりを見せ新たな脅威となっている。

我々が感染症を克服する最初の世代となるには、力を緩めず投資を続けること、しかもデータやエビデンスに基づいてより効率・効果の高い資金配分の流れを作り、戦略的な連携協力を促進していくことが求められている。そして三疾病のためだけでなく、その他多くの感染症や公衆衛生上の課題を乗り越えられる保健システムを構築していくことが重要である。

エボラ出血熱の封じ込めには保健システム強化が不可欠

kunii 2014 japan visitグローバルファンドとしても、エボラ出血熱の拡大に憂慮している。エボラはグローバルファンドの直接の支援対象ではないが、エボラが拡大している国は、エイズ・結核・マラリアの蔓延国でもあり、現地の人々が緊急事態下で対処できるよう特別な対応をしている。エボラ出血熱の拡大で混乱する中であっても、三大感染症の予防と治療サービスが確実に届けられるよう配慮、また、その国の実情に応じて資金の使途を柔軟に変更し、エボラ感染から身を守る防護服の購入、保健医療従事者への感染予防トレーニングなどの支援を行っている。

リベリア、ギニア、シエラレオネの3か国でエボラ出血熱が拡大している最大の原因は、これらの国はいずれも長い内戦やテロ、クーデターなどの影響で社会基盤や保健医療システムが脆弱なことである。感染者を発見し報告する制度が未整備で、保健医療従事者の知識も不足し、検査・診断体制も欠如しているため、封じ込めは容易ではない。他方、ナイジェリア、ウガンダ、セネガルなど、グローバルファンドの感染症対策支援もあり、この10年ほどの間に保健システムが強化されてきた国では、エボラ感染ケースが出たものの拡大には至らず流行を適切にコントロールできた。世界でも有数の混沌を絵に描いたような都市ラゴス(ナイジェリア)においても拡大を防げたことは、保健システムがしっかりしていれば、人口の多い都市でも感染症のコントロールが可能であることを示している。

エボラ出血熱に注目が集まっているが、エボラによる死亡者は10か月で約4000人であるのに対し、エイズによる死亡者は現在でも1日で約4100人、マラリアは1日約1700人、結核は1日約3600人である。国際協力により現在減少傾向にあるものの、全世界で長期にわたり流行し続けているためである。ただし、死亡の数で疾病を比較しどの感染症がより重要かを競うのではなく、むしろ、どんな感染症の流行も抑制できる、そしてその国の保健医療の課題に対応できる強い保健システムづくりを長期的な視野で行っていくべきだ。感染症サーベイランスなどの情報、予防・診断・治療を行う人材、医薬品等の物流システムなどは、すべての感染症対策に有用なシステムである。エボラのような公衆衛生上の脅威が、緊急に新たに起きた時にも耐えられる体制づくりをすることが重要である。

官民パートナーシップによるイノベーション

グローバルファンドは官民パートナーシップによる21世紀型の組織である。常にイノベーションを重視し、三大感染症の克服につながる革新的なアイディアや手法を取り入れてきた。最近の取組みとしては「イノベーション・ハブ」を立ち上げた。これは官民の人や組織が参加するプラットフォームで、(1)調達・サプライチェーン管理、(2)財務・リスク管理、(3)プログラムの質の確保(データ管理や人材管理・育成等)の3つの分野において、障壁となっている課題を解決するための斬新な手法を見つけ、試験的に実施し、他への応用可能性や地域的な拡大の可能性を検証し、グローバルファンドが支援する事業の中に実際に組み込むというものである。また、途上国が、感染症対策に必要な医薬品や資機材をオンラインで購入できるE-marketplaceのパイロットプログラムを2015年初めに立ち上げる予定である。単に三大感染症のためだけではなく、公衆衛生全般や途上国の諸課題に応用できるシステムづくりを視野に入れている。

日本の資金的・知的貢献への期待

2000年のG8九州・沖縄サミットがグローバルファンド発祥の地である。日本は創設メンバーとして一貫してグローバルファンドを支え、現在第5位の主要ドナーであり、日本の皆様に心から感謝を申し上げたい。また、資金面のみならず、2008年の洞爺湖サミットでの保健システム強化の強調や、2013年に安倍総理大臣から発表されたユニバーサル・へルス・カバレッジを推進する政策など、グローバルヘルスの政策面でも日本は知的貢献をしている。日本が議長国となる2016年のG8サミットに向けても、強いリーダーシップを発揮されることを期待したい。

グローバルファンドは欧米諸国だけの基金ではなく、真にグローバル(地球規模)な存在である必要がある。日本に主要ドナーとして、また理事会に議席を持つ理事としてグローバルファンドの運営に関わってもらうことは、グローバルな性格を維持する上で非常に大切なことである。グローバルファンドは日本が外交政策の柱とする人間の安全保障を推進するためのカタリスト(触媒)である。2016年に向けて、日本とのパートナーシップをさらに強化していきたい。


主要日程(ダイブル事務局長、國井戦略・投資・効果局長)

  • Ÿ  城内実外務副大臣への表敬訪問
  • Ÿ  永岡桂子厚生労働副大臣への表敬訪問
  • Ÿ  グローバルファンド日本委員会第18回議員タスクフォース会合・第13回アドバイザリー・ボード会合
  • Ÿ  グローバルヘルスと人間の安全保障プログラム第13回運営委員会
  • Ÿ  ジェイソン・P・ハイランド米国大使館首席公使主催レセプション
  • Ÿ  財務省幹部との意見交換
  • Ÿ  外務省幹部との意見交換
  • Ÿ  国際協力機構人間開発部幹部との意見交換
  • Ÿ  市民社会の代表(日本アフリカ協議会、日本HIV陽性者ネットワークJaNP+、SWASH)との意見交換
  • Ÿ  大学生との対話
  • Ÿ  日本記者クラブ主催記者ブリーフィング
  • Ÿ  日本医学ジャーナリスト協会主催講演
  • Ÿ  メディア・インタビュー(NHK, 朝日新聞、日経ビジネス、ダイヤモンド・オンライン)

メディア掲載

(追記)