世界基金 新しい資金供与モデルを導入

この記事の掲載日 : 2014年06月05日(木) この記事のカテゴリー :


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FGFJレポートNo. 6 (2014年6月)掲載

國井 修國井 修
世界エイズ・結核・マラリア対策基金 戦略投資効果局長

世界基金は2014年3月に「新規資金供与モデル」を全面的に導入し、支援の方法を変更しました。
その背景には、世界基金創設後の10年間で、三大感染症の状況とそれを取り巻く環境が変化したため、過去の知見・教訓を基に、新たな戦略・メカニズムの構築が求められていたことがあげられます。特に、世界経済危機により、限られた資金をより戦略的に活用し、効果と効率を上げる必要性が高まっていました。さらに、国の主体性と自立性を促進し、現地のニーズや状況に応じた柔軟な対応が求められるようにもなりました。

新モデルが目指すものを一言でいうと「インパクト(成果)のための戦略的投資」。「投資」という言い方に違和感を感じる人もいるかもしれませんが、世界から預かった資金を三大感染症対策に投じて、途上国に横たわる様々な問題をリスク管理として徹底し、その資金の使途には透明性と説明責任を持ちながら、少しでも多くのリターン(人命と健康)を得るために努力することは「投資」にも通じることではないかと思います。

世界基金における最終的なインパクトとは、三大感染症により奪われている命を救うこと、そして感染により苦しむ人を減らすことです。現在の5ヵ年新戦略(2012‒16年)では、2016年までに1000万人の命を救い、1.4億人以上の感染を防ぐことを目標としています。

これは掲げただけの目標ではなく、守るべき誓約でもあります。この目標を達成するにはどのような具体的戦略、アプローチ、仕組みが必要か、これまで世界を巻き込んで議論し、準備をしてきました。新しい制度はその根幹となるメカニズムなのです。

 

では新規資金供与モデルは従来の「ラウンド制」(定期的に支援案件を募集する制度)と何が違うのか。主な違いは以下のようなものです。

グローバルファンドの仕組み

 1. 戦略的投資

ラウンド制では各国が世界基金に申請した額を基に供与額が検討されてきたが、新制度では、死亡者数や感染者数などが多く経済的に貧しい国に、より多くの資金を配分する。さらに、各国内でも疾病負担またリスクの高い地域・集団を優先し、効率・効果の高い介入・サービスに焦点を当てる。

2. 案件申請

ラウンド制では、各国が多大な時間と労力をかけて案件を作成・申請しても不採用となり、ニーズがあるのに申請書の質の悪さから支援できないこともあった。新制度ではニーズの高さ(疾病負担)、経済状況(一人当たりGNI)などいくつかの尺度を用いて、必要となる資金規模を計算・提示し、各国で対話を通じた案件形成を行う。案件形成の能力が不足する国にはその支援も行う。

3. 簡潔化・迅速化・差別化

ラウンド制に比べ、申請書をより簡潔でかつ戦略的投資が判断しやすい書式(Concept NoteとModular Tool)にし、その審査プロセスも単純化・迅速化する。また、過去において十分な成果を示し、事業・財務管理がしっかりできる国では、成果型資金供与(Result-based funding)として成果に対する説明責任以外は簡素化する一方で、破綻国家や緊急事態の国には、リスク管理をより強化し、実施機関、特に市民社会などの能力強化を支援するなど特別の配慮を行う、といった差別化を行う。

4. 国の戦略計画の重視

ラウンド制の時以上に各国の国別戦略計画の強化、それに基づいた案件形成が求められる。三大感染症の現状分析、ニーズ把握を基に、国全体の予算を含む戦略計画を立てることで、世界基金の案件のみならず、他のドナー・案件との連携協力を促進する。またラウンド制では原則的に年1回の申請だったが、新制度では各国の戦略計画、事業サイクルに合わせて
いつでも申請できるようになった。

5. 国の自助努力の促進

各国に三大感染症対策への自助努力を促し、特に中所得国については援助からの自立、持続発展に向けた能力開発を支援する。

その他、新制度では様々な試みがありますが、これらを推進する上で重要なのが「国別対話」です。各国で積極的に案件形成を支援するため、事務局では国別支援体制を強化し、そのための戦略的パートナーシップを促進しています。縦割りの事業・対策だけでは長期的な問題解決にはつながらないため、保健システム強化、母子保健など優先課題との協調・連携も進行中です。
三大感染症との闘いは今、重要な時期にあります。支援の勢いを加速することで、成果が大幅にアップすると予測される一方で、減速すれば流行が再燃して、これまでの苦労が水の泡になる可能性もあります。日本のご協力に感謝すると共に、今後の継続的な支援をお願いしたいと思います。