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グローバルファンドの仕組み

グローバルファンドの仕組み

 

 
  • 資金を受ける各国内に作られる「グローバルファンド国別調整委員会」(CCM: Country Coordinating Mechanism)とグローバルファンド事務局が協力して案件を形成し、申請書(コンセプト・ノート)を事務局に提出します。
  • 専門家から成る技術審査委員会がコンセプト・ノートを審査し、よりよい案件にするための留意点や勧告が示されます。それに従い、再度、国レベルで調整・検討がなされ、グローバルファンドの案件認定委員会に送られます。案件認定委員会は技術審査委員会による審査結果を勘案し、資金供与額の上限を決定します。
  • その後、事務局が対象国の資金受入責任機関(プリンシパル・レシピエント:PR)とともに、実際に案件を実施する組織(サブ・レシピエント:SR)のプログラム実施能力、事業内容やガイドラインへのコンプライアンス等の査定をし、申請案件を具体的な事業計画を伴った案件にまで詰めます。その間にも案件認定委員会による再審査も行われ、それに応じて供与額内訳などの再調整がなされます。
  • 最終的に実行可能とみなされた案件が理事会に提出され、そこでの審議を経て資金供与が承認されます。理事会には、ドナー国政府だけではなく、受益国政府の代表や民間財団、企業、NGO、感染者組織の代表も参加し、議決権を持ちます。
  • 事業の実施にあたっては、各国の保健省・財務省や国連機関、NGOなどがプリンシパル・レシピエントとして資金受け入れの責任をもち、個々のプロジェクトを実施するサブ・レシピエントに資金が支払われ事業が行われます。
  • 当該国内に、現地監査機関の役割を担う組織が指定され、事業開始から終了まで、資金管理や事業の実施状況をチェックする監査を行います。

 

理事会

グローバルファンド全体の管理・運営方針の決定、資金供与案件の決定を行う最高意思決定機関。理事会は以下28名で構成されている。

議決権のある理事20名
受益国政府7、ドナー国政府8、民間企業1、民間財団1、途上国NGO代表1、先進国NGO代表1、感染者コミュニティの代表1
議決権のない理事5名

世界銀行、国際保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画、公的ドナー、パートナー機関(RBM Partnership to End Malaria、Stop TB Partnership)

2023年4月現在、理事会議長はパプアニューギニアの元首相夫人ロスリン・モラウタ氏、副議長はアフリカ連合初の社会問題担当委員、国連事務次長兼アフリカ担当特別顧問を務めたビエンス・ガワナス氏が務める。日本政府は単独議席をもつ理事国で、2021年4月から原圭一外務省国際協力局地球規模課題担当参事官が日本政府代表理事を務めている。

 

事務局

  • 在ジュネーブ。資金調達、資金供与管理、実務的・法的支援の提供、理事会運営、広報等を行う。
  • 事務局の肥大化、官僚主義による審査プロセスの遅れを防ぐため、スタッフの数を最小限に抑える努力がなされている。ジュネーブ以外にはオフィスを置かず、職員数は約700名(2017年5月現在)である。
  • 2018年3月より、ピーター・サンズ氏が事務局長を務めている。

 

国別調整委員会(CCM)

  • 受益国内にある国内委員会で、グローバルファンドに対する各国からの申請は原則としてこのCCMを通して提出される。CCMでは、申請案件の形成や調整、基金の資金を得た後は事業の実施状況を監督する。
  • CCMのメンバー構成は、国によって異なるが、受益国政府関係者、受益国のNGO、国際NGO、感染症当事者組織、二国間援助機関、国連機関、企業など、多様なセクターの参加が強く求められている。
  • 申請案件の形成にあたっては、様々なパートナー、特に、重要でありながら軽視されがちな市民社会や当事者組織の意見が反映されるよう強く奨励されている。

 

資金受入責任機関(PR)

  • グローバルファンドの資金の受領者として一義的な法的責任を負う組織(プリンシパル・レシピエント:PR)。供与される資金の適正管理や事業の遂行に責任を負う。グローバルファンドの資金は、PRを通して事業を実施する組織(サブ・レシピエント:SR)に支給される。
  • PRの具体的な責務は、SRを監督し事業全体の進捗状況を国別調整メカニズム(CCM)に報告することである。グローバルファンド事務局との間で契約を締結し、その中で一定期間に達成すべき目標を設定し、それに対する成果も報告するが、より事業の効果・効率を上げるため、事業途中で微調整や変更が必要となった場合、その調整や交渉を行うのもPRの役目である。
  • PRとなる組織は、案件ごとに決定されるが、保健省や国家エイズ委員会など政府機関と、NGOや宗教組織、企業など民間組織の双方がPRとなることも多い。また、政府の管理能力や説明責任などが不十分な場合、 UNDPや UNICEFなどの国連・国際機関が代わってPRになることもある。

 

現地監査機関(LFA)

  • 資金受入責任機関(PR)の財務や事業の監査をする組織で、多くの場合、監査法人がLFAの任にあたる。
  • PRから提出される定期的な支払要請、事業報告、財務報告を監査し、グローバルファンドに対して、資金の移転やその他の取るべき措置について助言を行う。

 

技術審査委員会(TRP)

  • グローバルファンドに提出されたコンセプト・ノート(申請書)を審査し、案件認定委員会に対して支援案件を推薦する独立機関。
  • 保健、開発の専門家58名で構成されている。専門的な観点から各案件を審査し、事務局や国別調整メカニズム(CCM)などに対し、より良い案件にするための留意点や勧告を示す。これを受けて、国レベルで再度、調整、検討が行われる。2021年12月現在、日本からは、野崎威功真氏(国立国際医療研究センター国際医療協力局 医師)、宮野真輔氏(国際医療研究センター国際医療協力局 国際開発専門職・医師)、瀬古素子氏(叡啓大学准教授)の3名が委員を務めている。

 

技術評価専門家委員会(TERG)

  • グローバルファンド全体の効率性・効果性を評価する独立した委員会。事務局運営や資金提供事業の実績、協力機関とのパートナーシップ、感染症対策におけるグローバルファンドのインパクトに関する評価を行い、理事会への提言・アドバイスを行っている。
  • 委員は実務家、研究機関・学術界の専門家、NGO、政府代表など幅広い関係者から選出されており、2019年5月現在、永井真理氏(国立国際医療研究センター国際医療協力局 国際連携専門職・医師)が務めている。

新規資金供与モデル

グローバルファンドでは、2014年3月に新しい資金供与モデルを全面導入しました。新しいモデルにおける主な変更点は以下の通りです。

  1. 案件形成プロセスの簡素化・迅速化
    以前より、申請書(コンセプト・ノートと呼ぶ)を簡素化し、事務局と様々なパートナーが積極的に各国での事業計画作りを支援することにより、案件形成プロセスを迅速化している。過去に十分実績のある国(事業・財務管理が問題なく実施でき、成果を上げている)に関しては「成果型資金供与(Result-Based Funding)」とし、報告義務を簡素化。その一方で、問題を抱える国々(破綻国家や、緊急事態に見舞われている国家)には、リスク管理を強化し、パートナーによる国への支援を促進するなど特別な配慮を行っている。このように、プロセスを世界一律にするのではなく、国の状況・能力に応じて効率・効果の高い案件形成を行う。
  2. 国別対話による案件形成
    事務局の国別支援チームを強化し、国連・国際機関、二国間援助機関など様々なパートナーとの連携協力も促進し、各国での対話を繰り返し行いながら、戦略性が高く、効率・効果の高い案件形成を行う。さらに、市民社会や当事者組織に今まで以上に国別対話に参加してもらい、案件形成にも積極的に加わってもらう。
    国別対話を通して具体的に、三大感染症の現状分析、ニーズ把握、経済状況・国家予算を勘案した国別戦略計画の強化、それに基づく資金規模の計算、案件形成を行い、各国の戦略計画、事業サイクルに合わせてコンセプト・ノートをいつでも提出できる。(以前のラウンド方式では年一回のみの受け付けだった。)
  3. 戦略的な供与額の決定
    以前のラウンド方式では各国の申請書をベースに供与額を検討してきたが、新規モデルでは各国の疾病負担と経済状況を鑑み、疾病負担(死亡数や罹患数など)が高く、一人当たりGNIが低い国により多くの資金が与えられるような仕組みを作っている。その他、過去の成果、執行能力、国の自己負担や他の援助組織からの資金なども資金供与額の検討に加えられる。